「単騎」で勝負する新時代の競輪
4月19日の伊東競輪場で試験的にスタートする「KEIRIN ADVANCE」。従来の競輪とは異なり、チーム戦の要素がなく、完全な個人戦となることが一番の特徴といえるだろう。ルールとしてはガールズケイリンに似ており、「ライン」と呼ばれる選手同士の連携が存在しないため、各選手が個々の純粋な実力勝負を繰り広げることになる。ガールズケイリンのトップ選手として活躍し、引退後は競輪番組の解説者としても活躍している高木さんに「KEIRIN ADVANCE」についての見解を伺った。
「男子競輪だと“誰が誰の番手につくか”など、地区でまとまって連携しますが、アドバンスではそれが一切ありません。予想をするお客さん目線だと、従来のファンの人がどう捉えるか……というのはありますが、レースがわかりやすい展開になる可能性が高いので、競輪初心者の人にとっては入りやすい形になると思います」
「強い人が勝つ」予想はシンプルに
「KEIRIN ADVANCE」の最大の魅力は、勝敗が実力勝負になること。高木さんは「強い人がトップスピードに乗れば、そのまま逃げ切れるレースになる」と分析。また、わかりやすいルールによって「ほかの公営競技ファン方々が競輪に興味を持ってもらうきっかけになる可能性もあると思います」と話す。
「たとえばボートレースは“1号艇が有利”みたいに、予想にするうえでわかりやすい共通認識がありますよね。そういう意味でいうと、アドバンスは基本的に“実力通りの結果になりやすい”ことが、わかりやすい共通認識になるでしょう。もちろん従来のファンの方の中には『競輪はラインがあってこそ!』という意見もあると思いますが、そこが難しくて競輪をやったことがない人も多いと思うので、新規ファンの人を増やすという意味でも、こういった試みには期待したいですね」
「レース展開が単調になる」のはデメリットに?
一方で、高木さんは「仕掛けが単調になる可能性はあると思います」といったデメリットも指摘。2014年~2019年に実施された類似の試み『KEIRIN EVOLUTION』では、「レース終盤で動き出す展開になることも多かったです」と振り返る。「ガールズのレースにおいても『後ろに誰かいるかも』って考えすぎてしまうと、なかなか動くことができません。
KEIRIN ADVANCEの予想方法

「ガールズのレースでも『この選手スタート速いな』とか『バック回数多いな』っていうのを見て予想するじゃないですか。男子もそうなると、通常の競輪以上に性格とかクセも考慮しなきゃいけなくなると思うんです。何も考えずにスタートで飛び出してしまう若手もいるでしょうし、駆け引きを重視するベテランもいる。そのあたりの個性を読み取るのが、新たな予想の楽しみになりますね」
競輪の魅力を伝える新たなチャンスに
高木さんは最後に「新しい形の競輪として“入口”になるのは大歓迎です。でも、長く続くためにはシンプルなだけじゃなくて“面白さ”をちゃんと作らなきゃいけない。そこが一番のポイントかなと思います」と話したこの“アドバンス”という実験が、競輪界に新たな風を吹き込むか。シンプルな力勝負の魅力を活かしつつ、エンタメ性をどう向上させるかが今後の課題となりそうだ。
取材・文/セールス森田
―[高木真備のガールズケイリントーク]―
【セールス森田】
Web編集者兼ライター。フリーライター・動画編集者を経て、現在は日刊SPA!編集・インタビュー記事の執筆を中心に活動中。