各SNSには利用規約があり、それに違反していたらアカウント停止になってしまうのも仕方ないが、それが完全な“濡れ衣だった”というケースもあるようだ。
7月13日にフジテレビで放送された『千鳥の鬼レンチャン』に出演して話題となった、田村淳氏のそっくりタレント「ロンフーあつし」氏は、過去にInstagramアカウントが突然削除(BAN)されてしまったことがあるという。その理由は、なんと田村淳氏に似すぎていたことで、Instagramに「なりすまし」と誤認されたことによるものだった。
そこで今回は、ロンフーあつし氏ご本人に、1万5000人のフォロワーを一瞬で失った絶望と、Instagramに異議申し立てをした結果などの話を伺った。
「人生を変えたい」という想いで始めたSNS
——田村淳さんのそっくりタレントとして活動を始められたのはいつ頃ですか。ロンフーあつし(以下、ロンフー):淳さんのそっくりさんとして「ロンフーあつし」を名乗り始めたのは、コロナ禍に入って1年が経った頃なので、約4年前ですね。厳密に言うと、声真似などをする「ものまね」ではなく、顔がそっくりなことを活かした「そっくりタレント」としての活動です。ただ、どうしてもカテゴリーとしては「ものまね」と括られてしまうことが多いですね。
——それまでは何をされていたのでしょうか。
ロンフー:バンドマンとしてボーカルをやっていました。ですが、なかなか芽が出ず、どうにかして人生を変えたいと思っていたんです。そんななか、コロナ禍に突入し、何かできることはないかと考えたとき、昔から「淳さんに似ている」と言われていたことを思い出しました。この“そっくり”を活かして発信すれば、何か活路が見出せるのではないかと思い、SNSでの活動を始めました。

ロンフー:SNSでの発信を始めてから1年ほどは、なかなか大きな反響はありませんでした。でもあるとき、何気なくカラオケで歌っている動画を投稿してみたんです。すると、その動画がこれまでとは比べ物にならないくらい再生されまして。「これだ」と思い、歌の動画を中心に投稿していくと、1本の動画が100万回、そして気づけば300万回再生を超えていました。それがきっかけで様々なメディアからお声がけいただくようになり、『Abema Prime』で淳さんご本人と初共演させていただくことにも繋がりました。
「AIの誤認」による突然のアカウントBAN…
——それでは、過去にInstagramのアカウントがBANされた件について伺います。これまでに何回BANされたのでしょうか。ロンフー:厳密に言うと3回です。最初にBANされた後、理由がわからないままアカウントを作り直したのですが、同じプロフィール写真を使っていたためか、2~3日でまたすぐに消されまして……。その後、似顔絵などのプロフィール画像にして運用していたのですが、再び自分の写真にしたところ、またBANされてしまいました。

ロンフー:Instagram側からの通知には「有名人の写真を使ってはならない」「他人になりすましてはいけない」といった内容が書かれていました。つまり、僕自身の顔写真を、AIが田村淳さんご本人の写真だと誤認してしまったわけですよね。

ロンフー:はい。一時期は後ろ姿にしていましたが、現在はイラストにしています。この対策をしてからは、今のところBANされていません。投稿は普通にしているので、やはりプロフィールだけをチェックしているのだと思います。
警告なし…異議申し立ての対応もAI

ロンフー:いえ、それがまったくなかったんです。ある日突然アカウントにログインできなくなりました。一応、異議申し立てのフォームはあるのですが、それに対応しているのもAIのようで……。一度「なりすまし」と判断されると、もう覆すことはできないようです。
——ただ、実際になりすましではないわけですから、異議申し立てして人間がチェックしてくれればアカウント復旧しそうなものですが……。
ロンフー:そうですね。
「ブロックされた」と勘違いしたファンも…
——活動への影響も大きかったのではないでしょうか?ロンフー:はい、大打撃でした。ライブの告知など、ファンの方に情報を届けるにはInstagramが一番強力なツールでしたし、ファンを獲得するうえでも重要な場所だったので、それを失ったのは本当に痛かったです。
——正直、ファンの方に誤解されてしまう可能性もありますね。
ロンフー:そうなんです。アカウントが突然消えるので、僕がブロックしたと勘違いされている方もいるようです。実際に「ブロックされた」というメッセージを他のSNSでいただいたこともあります。僕のことを嫌いになってしまった方もいるかもしれないと思うと、本当に心苦しいです。
そっくりタレント業界全体の課題

ロンフー:これだけ膨大なユーザーを人間だけで管理できないのは理解できます。でも、「こういう活動をしている人間もいる」ということは認識してほしい。なんの規約にも違反していない、自分の顔を出しているだけなので……。
SNSアカウントが奪われるのは死活問題
——最後に、今後の活動への想いをお聞かせください。ロンフー:僕たちのような仕事は、顔を出してなんぼの世界なので、その顔が原因で活動の場を奪われるのは、まさに死活問題です。この声が届くかどうかはわかりませんが、僕たちのような業種の人間がいることを理解していただけると嬉しいですね。
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AIによる管理が当たり前となった今、便利さの裏には、稀に“誤認”という大きなリスクも潜んでいる。ロンフーあつし氏のように、自身の顔すら活動の障害となってしまう現実は、決して他人事ではない。SNSが仕事の一部である人にとって、プラットフォーム側の“人間らしい配慮”が求められているのかもしれない。
取材・文/セールス森田
【セールス森田】
Web編集者兼ライター。フリーライター・動画編集者を経て、現在は日刊SPA!編集・インタビュー記事の執筆を中心に活動中。全国各地の取材に出向くフットワークの軽さがセールスポイント