現在、ファッションインフルエンサー、作家、経営者として活躍するMB氏だが、もともとは年収200万円のしがないアパレル販売員だ。自ら「持たざる者」だったMB氏は、どうやって成功を収めることができたのか。
「私が本を書いたきっかけは、多くの人が一所懸命に生きているのに幸せを感じられていない現状を目の当たりにしたことです。通勤電車に乗れば暗い面持ちで会社に向かう人々、SNSでは殺伐とした書き込みが溢れている。日本社会全体が沈鬱とした閉塞感に満ちているように感じました。でも、皆一所懸命生きているんです。多少サボりはしたかもしれないけれど、親から言われたとおりに勉強して進学し、就職して社会の歯車として必死に頑張ってきた。それなのになぜ幸せをつかめないのか。その原因は『ロードマップ』がないからだと気づいたんです」
ゴールのないマラソンを走ってはいけない
ーー「ロードマップ」とは具体的にどういうものなのでしょうか?
ーー本書では「奴隷の論理」という言葉を使われていますが、これはどういう意味なのでしょうか?
「『奴隷の論理』という言葉の響きはよくないかもしれませんが、持たざる者が取るべき戦略という意味です。多くの働いている人は、資本力も影響力も権威も持たない『奴隷』的な立場にあります。でも、そんな状況でも自分なりの戦い方があるんです。具体的には、①生存領域を見つける、②ロードマップを描く、③具体化して習慣にする、という3つの戦略を提案しています。これらの戦略は、サラリーマンでも起業家でも学生でも、すべての人に共通して適用できるものです」
自分が活躍できる場とは?
ーーまず「生存領域を見つける」というのは、具体的にどういうことでしょうか?「『生存領域』とは、自分が活躍できる場所のことです。私自身の経験を例に説明しましょう。20代の頃、私は新潟県でセレクトショップの販売員として働いていました。最初に配属された店舗には経験豊富な販売員がいて、新卒の私には太刀打ちできませんでした。最初の半年は全く成果が出せず、個人売上は店内最低でした。でも、そこで諦めるのではなく、どうすれば勝てるかを真剣に考えました。そして、単価の高い新規ブランドの担当を買って出たんです。
ーー自分の強みを活かせる領域を見つけるのは難しそうですが、どうすれば良いのでしょうか?
「まずは自分の『個性』を深掘りすることから始めます。何が得意なのか、何が好きなのか、何なら努力できるのか。これらをしっかり探ることが大切です。多くの人は、自分の個性を蔑ろにしていることに気づいていません。我々は日本で能力の平準化を目指す学校教育を受けて育ったので、改めて個性を探すことに慣れていないんです。就職活動でも自分がやりたいことに悩み、結果的に給与や休日日数など、会社が提示する条件で就職先を探してしまう。でも、考えてみてください。子供の頃、ゲームは1日1時間までと言われても、こっそり続けていたはずです。好きなことには没頭できる。これこそが才能であり、原動力なんです。
自分の「ゴール」をちゃんと決める
ーー次に「ロードマップを描く」ということですが、これはどのように行えば良いのでしょうか?「ロードマップを描くには、まず自分の『ゴール』を明確にすることが重要です。多くの人は、お金や出世といった他人が決めた基準を目指してしまいがちです。でも、幸せは人それぞれ違うものです。自分が本当に望む人生のゴールを定め、そこに至る道筋を考えることがロードマップを描くということなんです。例えば、『10年後に自分の店を持ちたい』というゴールがあるとします。そこから逆算して、『5年後には店長になる』『3年後には副店長になる』『1年後には売り上げトップを取る』といった具体的な目標を設定していきます。そして、それぞれの目標を達成するために必要なスキルや経験を洗い出し、それらを獲得するための行動計画を立てます。しかし多くの人は、そういったゴールを設けずに、ただ走っている。目の前のタスクをこなしていれば成長すると思っているのです。それは大きな誤解で、人は、ゴールを見定めてそこに向かって走っていくから、結果を出せるのです」
ーー最後の「具体化して習慣にする」というのは、どういうことでしょうか?
「ロードマップを描いただけでは不十分で、それを日々の行動に落とし込む必要があります。例えば、目標達成のために毎日1時間を使うと決めるなど、具体的な行動計画を立てます。そして、それを習慣化することで、少しずつですが確実に目標に近づいていけるんです。私が提案しているのは『一日1時間戦略』です。
年収200万円時代はまさに奴隷だった
ーーMBさんご自身も、このような方法で成功を収められたのでしょうか?「私自身がまさに『持たざる者』でした。資格も学歴も、誇れる履歴書は何一つありませんでした。雪国新潟県に生まれ、低収入の貧しい家庭で育ち、学歴は地方大学出身、職歴は地方の販売員で年収200万円程度。見た目も中身も初期のステータス値はきっと皆さんより低かったでしょう。でも、販売員時代に自分なりの『生存領域』を見つけ、ロードマップを描き、それを習慣化することで、今の自分があります。ファッションの世界で独自の位置を確立し、著作や媒体出演など、さまざまな活動を展開できるようになりました。これらの結果は一朝一夕に得られたものではありません。
サラリーマンこそ働きがいにこだわれ
ーー本書では、サラリーマンや副業、起業など、さまざまな生き方についても触れられていますね。これらについて、どのようなアドバイスがありますか?「本書では『4つの生き方』として、サラリーマン、本業と副業の両立、仕事を諦めて生きる、起業して生きる、という4つのパターンについて詳しく解説しています。例えば、サラリーマンとして生きる場合、多くの人は給料のために働いていると考えがちです。でも、それでは幸せになれません。サラリーマンこそ、働きがいにこだわるべきなんです。自分の仕事が社会にどう貢献しているのか、どんな価値を生み出しているのかを考え、そこにやりがいを見出すことが大切です。副業については、簡単に稼げると思っている人が多いですが、実際はそう簡単ではありません。副業が続かない理由の一つは、本業との両立が難しいからです。でも、先ほど話した『一日1時間戦略』を使えば、副業も無理なく続けられます。起業については、多くの人が資金や経験の不足を理由に躊躇しています。でも、今の時代、少ない資金でも始められるビジネスはたくさんあります。大切なのは、自分の強みを活かせる分野で起業することです」
ロードマップが人生を決める
ーー現代社会において、このような「ロードマップ」の考え方がなぜ重要だと思われますか?「現代社会は、かつてないほど変化が激しく、不確実性が高い時代です。終身雇用制度が崩壊し、一つの会社に勤め上げるという生き方が必ずしも安定をもたらさなくなりました。
―[メンズファッションバイヤーMB]―
【MB】
ファッションバイヤー。最新刊『ロードマップ』のほか、『MBの偏愛ブランド図鑑』『最速でおしゃれに見せる方法 』『最速でおしゃれに見せる方法』『幸服論――人生は服で簡単に変えられる』など関連書籍が累計200万部を突破。ブログ「Knower Mag現役メンズバイヤーが伝えるオシャレになる方法」、ユーチューブ「MBチャンネル」も話題に。年間の被服費は1000万円超! (Xアカウント:@MBKnowerMag)