多くの企業が新入社員を迎え入れる春。新卒はもちろん、転職してきた人たちで職場の空気は一変する。だが、業務内容や職場環境など、人により理由はさまざまだが、せっかく就職したにもかかわらず、すぐに退職してしまう人もいる。
今回は、GW明けに退職してしまった2人のエピソードを紹介する。
田舎の支店に配属された大都市出身の新入社員

研修を終えた新入社員を現場に受け入れるわけだが、ある年、新入社員Aが前田さんの支店に割り当てられた。
「Aとの顔合わせでは、最初の挨拶から礼儀正しく、聞かれたことには自分の考えをしっかり述べ、私たちは、“当たりの新人”と喜んでいました」
業務にも慣れ、先輩社員と雑談するなどスタッフとも打ち解けているようだったと話す。そして、前田さんは何気なくGWの予定を聞くと、「地元に帰る」とのことだった。
「Aは大都市出身ですが、ここが田舎の支店だったので、一人暮らしをしていました。まだ新人だったこともあり、業務もそこまで割り当ててはおらず、早めに帰省してもらうことにしたんです」
驚きの退職理由「友だちと遊びたいから地元に帰る」
しかし、GW明けに、予想もしていなかった事態が起こる。「Aが出社してきませんでした。体がだるく風邪気味だと言うので、療養するように伝えました」
5月中旬までAは会社を休んだという。そして、やっと出社したのだが……。
「いきなり『会社を辞めたい』と言われました。
あまりにも早い退職希望だったため、取締役や部長も含めて面談したという。しかし、Aの辞める意思は固く、結局退職した。
「退職意思を示した直後に住居を引き払い、Aは地元に帰りました。支店には挨拶はなく、退職処理は本社で済ませたようです。Aの引っ越しや帰省の際は会社の経費だったので、私は部長から小言を言われてしまいました……」
それ以降、支店での新入社員の受け入れは停止し、転勤してくるか、地元での転職を希望する人のみを採用することになったそうだ。
「プログラミングが得意」で謎の上から目線

現在の会社に入社して5年目。SEとして働く小美野さんは、研修中に分からないことがあるとBに教えてもらっていたという。
「Bは専門学校卒でプログラミングが得意でした。ただ、『ここかよ~、仕方ないな。まぁ、俺なら楽勝なんだけど』という感じで謎の上から目線でした」
スキルを発揮できない部署に配属されて挫折
そんなBだったが、部署に配属されてからは彼自身の能力やスキルを発揮できずにいたようだ。ある日、フロア内に大きな音が響き渡った。「私はBと同じフロアだったのですが、突如“ビーッ!ビーッ!”と耳が張り裂けんばかりの音がしました。どうやらBが取り扱っている機器の点検作業をしているときに、やらかしてしまったようでした」
小美野さんが音の鳴る方に顔を向けると、そこにはオロオロするBの姿があったそうだ。そして、先輩社員が「さっさと止めろ!」と怒鳴り声をあげていた。
「たまに、同期が集まってランチをしていたのですが、Bはいつも孤立していました」
Bは配属された部署では思ったような仕事ができず、同期の中に溶け込めないことがストレスとなっていたのだろうと、小美野さんは推測する。
分からないことを素直に聞けず、職場で孤立

会社の掲示板に通達が出ていた。
「そこには、Bが5月付けで退職することが記されていました。同期たちによると、自分の得意なプログラミングがほとんどできない部署に配属となり、プライドが高いせいで仕事が分からなくても素直に聞けなかったそうです」
Bが今、何をしているのかは、小美野さん含めて誰も知らない。
「自分の実力にうぬぼれず、分からないことは聞くことの大切さを学べました」と小美野さんは振り返った。
<取材・文/chimi86>
【chimi86】
2016年よりライター活動を開始。出版社にて書籍コーディネーターなども経験。趣味は読書、ミュージカル、舞台鑑賞、スポーツ観戦、カフェ。