新入社員が入社直後に使う例もあることで話題の退職代行。若者が使うイメージが強いが、シニアも退職代行を使うのだろうか。退職代行の活用を検討したシニアの衝撃の結末を語る。
いまや一般化した退職代行という存在
新生活のシーズンになり、案の定というべきか、インターネット上では入社後すぐに退職代行を使った新入社員の話題が飛び交った。ざっと見る限り、過去に比べて入社後すぐに辞めること自体への批判はだいぶ少なくなり、辞める理由となった企業の姿勢や言動などに批判的な意見が集まりやすいようだ。退職代行を使うことに否定的・消極的な意見がある程度見られるものの、これらも退職代行が話題を呼び始めた頃よりは少なくなってきた印象だ。好むと好まざるとにかかわらず、退職代行がそれだけ一般に浸透したということだろう。
さて、退職代行というと、冒頭でも触れたように新卒など若手が主に活用するイメージだが、シニアでも活用するのだろうか。今回は、退職代行も含めたシニアの退職事情を解説する。
シニアは「引き止め対策」に退職代行を使いたい
先に結論を述べると、シニアでも退職代行を活用する人はいる。確かに若手に比べると実際に活用するシニアは限られているが、それでも興味を持つシニアは多い。もちろん、シニアと若手では退職代行を活用する背景も異なる。
私たちシニアジョブがシニア求職者から「退職代行」というキーワードを聞く場面のほとんどは、「現職を辞めさせてもらえないため、退職代行を使おうか迷っている」という内容である。
ちなみに2023年10月にエン・ジャパンが公開した調査結果では、退職代行利用の理由の1位は「退職を言いだしにくかったから」。続く2位が「すぐに退職したかったから」で、「退職を認めてもらえなかったから」は5位だった。
年齢的なリスクから「使いたくても使えない」

つまり、退職代行に関心のあるシニアや退職代行を使いたいシニアは多くいるものの、実際の活用は少なく、しかも活用を悩んでいたシニアの結末も、ほとんどは自力で退職したのではなく、今の会社に残留している。結局、退職を諦めてしまっているのだ。
その背景もわからなくはない。数年前に比べ、シニア向けの求人も転職成功例もだいぶ増えているものの、まだシニアの就職は難しい。「残ったほうがマシかもしれない」という判断も間違いとは言いきれない。
だが、残留が正解とも限らない。退職を諦めたシニアがその後、幸せに仕事を続けていたならいいが、再び私たちの転職サービスに登録するシニアも多い。
辞める意志が固いシニアほど自力で退職する
このように、シニアも退職代行への興味・関心は高く、活用したい切実な背景もある。しかし、次の仕事が見つからない年齢的な課題からなのか、活用の検討だけで実際には採用代行を使わず、消耗しきってしまう人が後を絶たない。もちろん、「辞める!」と決めたらもう揺るがないシニアもいるが、そういったシニアは退職代行を使わない。引き止めを振り払い、トラブルになってでも必ず辞めようとする逞しいエピソードもしばしば耳にする。
なかには「辞める」「認めない」の口論から暴力に発展したというケースもあったと耳にした。企業側の暴力が許されないのは当然ながら、従業員側の暴力ももちろん許されず、次の仕事まで失いかねない。そういったトラブルになるくらいならば、退職代行をシニアが使うのも一つの選択肢としてアリかもしれない。
【中島康恵】
50代以上のシニアに特化した転職支援を提供する「シニアジョブ」代表取締役。大学在学中に仲間を募り、シニアジョブの前身となる会社を設立。2014年8月、シニアジョブ設立。当初はIT会社を設立したが、シニア転職の難しさを目の当たりにし、シニアの支援をライフワークとすることを誓う。