こんなマンションは買うな!小規模・スパン6m未満etc.
人生で最も高額な買い物であるマンションについては“想定外”のことがあったりしたら目も当てられませんよね。そこで、今回は「こんなマンションは買うな!」をテーマにします。世帯年収1000万円でタワマンに住みたい──。そう考える夫婦の多くが、「郊外のお値打ちタワマン」を選択肢に入れているように感じます。実際、郊外なら5000万円未満で手に入るタワマンもちょこちょこあります。しかし、郊外の中古タワマンは都心と異なるリスクがあります。
タワマンって一般的な板マン(横長の板状のマンション)と比べて「将来の大規模修繕工事費が高額になる」ことが確定してます。高層なので足場や工法が特殊だったり、エレベーター(最近めっちゃ価格高騰中)の台数が多かったりで、修繕には何かとお金がかかるわけです。この修繕にかかるコストは実は、都心の一等地に立つタワマンでも、郊外に立つタワマンでもほぼ一緒。使用する資材や職人1人当たりの工賃には差がないからです。なので、のらえもんは「郊外ではタワマンというハードウェアに住人の質が追いつかない」事態が発生するのではと懸念しているわけです。都心のタワマンと同じ修繕費を、郊外タワマン住人は負担し続けられるのか?と。
実際、築30年になる郊外タワマンでいまだに「修繕積立金が月5000円」なんて物件も存在します。どう考えても将来修繕費不足に陥ります。ちなみに管理組合がしっかりしているタワマンでは直近5年で修繕積立金を1.6倍まで値上げするなど対策しています。積立金が月1万円のタワマンに住んでいた人が将来、突然「来月から積立金を10倍にします」という提案をのめるはずもなく、積立金の高騰を理由にタワマンを去る人も出てきそうです。
余談ですが、購入検討中のマンションの修繕費積み立て状況は、仲介マンからマンションの事業報告書を入手することで確認できます。それで「よしよし、しっかり貯まってるじゃないか」と安心できるかというと、世はインフレ真っ盛り。資材や設備に人件費も上がっているので、それで安心とは断言できないのです。
世帯数30戸以下のマンションは手出し無用
さらに、「総戸数30戸以下のマンション」だったらスルーすべきと考えます。マンションの修繕負担を「建物の表面積×修繕単価÷総戸数」とすると、大規模物件は「1戸あたりの面積が少ない=負担が軽い」一方、小規模物件ではどうしても1戸あたりの面積が増えて修繕費が割高になります。その額はタワマンに匹敵するほどなので「小規模物件にタワマン並みの維持費を払う価値を見いだせるか」一度よく考えたほうがいいです。これまた余談ですが、小規模マンションって昨今の建築費の高騰で採算を取るのがどんどん難しくなっていて、郊外ではほとんど企画されなくなりました。都心の超一等地であれば採算が合うわけですが、そこに住まわれる方々って維持費が高かろうと気にせず払えるので小規模のデメリットを感じないのでしょうね。
勤勉なる読者のなかには値段と部屋数の多さを優先して、50㎡台後半から60㎡台前半で間取りが3LDKというコンパクトな物件を選択肢に入れている人もいるでしょう。でも、無理やり部屋数を増やした狭小マンションは検討から外すべきです。マンション価格が高騰するなか、どうにかグロス(総額)を安く見せるためにあれこれ削られた物件であり、ほぼ例外なく収納が犠牲になっています。ミニマリスト夫婦であれば、何とか暮らせるかもしれませんが、子供が生まれたら生活スペースが圧迫されて高確率で後悔するでしょう。
のらえもんの感覚だと、70㎡の3LDKであれば子供1人の家庭なら大丈夫。子供2人の場合、成長して中高生になる頃には80㎡ないと厳しいと思います。DINKSの場合、40㎡台2LDKではかなり手狭で、「どうしても都心に住みたい」みたいな理由がない限りおすすめしません。
間取りを見るうえで、間口の幅(スパン)について、勉強しておくといいでしょう。明確な定義はありませんが、スパンが8.5mを超えると「ワイドスパン」と呼ばれ、反対に6mを切ると「ナロースパン」と呼ばれます。ワイドスパンはベランダ側に部屋を寄せられるので、すべての部屋で採光が確保できる恵まれた間取りといえます。一方、ナロースパン物件はどうしても「鰻の寝床感」が増し、住み心地がいまいちです。真ん中に廊下を挟んで左右に部屋が配置される形で、物件によっては部屋の幅が壁芯で2mを切ることも。
ということで、買ってはいけない物件について書いてみましたが、実際には今回挙げたような物件で幸せに暮らしている家庭も非常にたくさんあるわけで、案外「住めば都」ではあります。ただ、知らずに選択するのと、あえて選択するのとでは幸福度に差が出るはず。その点を踏まえてハッピーな東京マンションライフを目指しましょう!

―[それでも東京にマンションがほしい! 世帯年収1000万円で不動産購入のリアル]―
【のらえもん】
マンションアナリスト。「のらえもんブログ」やSNSでマンション購入に役立つ情報を13年以上にわたり発信。著書に『絶対に満足するマンション購入術』(廣済堂出版)など。「スムログ」発起人。住み替え支援サービス「すみかえもん」もプロデュース