温泉で騒ぐ金髪タトゥーの外国人旅行者たち
日曜の午後、田中健(仮名)さんは仕事の疲れを癒やすべく、九州の日帰り温泉を訪れていた。「そこは地元の人たちに愛される、静かで落ち着いた雰囲気の温泉です。ゆったりと湯船に浸かって身を委ねていると、30代くらいの外国人男性グループが入ってきたんです」
彼らは身長が高く、金髪でがっしりした体格。一人は腕にタトゥーが刻まれている。突如として、賑やかな英語が響き渡った。
「Oh man, this is insanely hot!」(これはめちゃくちゃ暑いな!)
ゲラゲラと笑いながら、まるでプールにでも来たかのように足をバシャバシャと浸けている。しかも体を流すことなく、いきなり湯船に入ろうとする姿に、地元の人たちは眉をひそめてピリついていたそうだ。
「見かねた地元のおじさんがジェスチャーを交えて『日本では先に体を洗うんだよ』と声をかけました。すると、金髪タトゥーの男性が『Sorry!』と笑いながら仲間に伝え、ようやく洗い場へ向かったんです」
シャンプーやリンスも使いっぱなし
しかし、そこでまた問題が起きる。「彼らはまるで水鉄砲のように水を飛ばしあって遊ぶ始末。しかも使い終わったシャンプーやボディソープを片付けず、放置したまま立ち去ったんです。みんな我慢の限界でした」
誰かが施設側に伝えたのだろう。若い男性スタッフが駆け寄ってくると、英語でやんわりと注意した。
「Excuse me, could you please be a bit quieter? This is a place to relax.」(ここはリラックスする場所だから、もう少し静かにしてもらえないか?)
金髪タトゥーの男性たちがバツの悪そうな顔をして「Oh, sorry. Our bad.」と謝罪し、それ以降はようやく静かになった。
日本の温泉文化が世界に広まるのはうれしいことだ。しかし、入浴マナーまではあまり伝わっていない。田中さんは、地元民と思われる隣の高齢男性が「まあ、郷に入っては郷に従えってなあ……」と呟いたのが印象的だったとか。
水族館で順番を無視して割り込んでくる

水族館には多くの外国人観光客の姿も見られた。しかし、そこで不快な出来事に遭遇することになる。
「うちの娘は身長80cmほどで、水槽の前に立って一生懸命に魚を見ていたところ、アジア系の外国人の夫婦がその視界を遮るように割り込んできたんです。
誰もが順番に見ているなかで、まるで娘の存在を無視しているかのようで、その場を動こうともしない。幼い子どもの目線など全く気に留めていない様子に、私は苛立ちを覚えました」
その後、イルカショーの時間が近づき、石川さん一家は2列目の席に座った。前回の訪問時、イルカショーは比較的おとなしめで水をかぶることもなかったため、妊娠中の妻にも問題ないだろうと判断しての選択だった。
しばらくして、妻がポップコーンを買いに立った隙に、なんと先ほどのアジア系の外国人夫婦が近づいてきて、妻が座っていた席に勝手に腰を下ろしたという。
「私は英語の教師なので、『そこは妻の席だよ』と英語で伝えましたが、彼らは言葉を理解できないフリをして動こうとしません。妻が戻ってきても席は譲られず、結局、私たちは後方の空席へと移動することになりました」
自分さえ良ければいいという考え方なのだろうか……。
イルカの大ジャンプで“天罰”がくだる
ショーが始まると、前回とは打って変わって、イルカたちは大ジャンプを繰り返し、前列の観客は派手に水しぶきを浴びていた。石川さん一家が最初に座っていた2列目も例外ではなく、あの外国人夫婦はずぶ濡れになっていたそうだ。
「派手に叫びながら濡れた服に戸惑っている彼らを、後方から少し冷めた気持ちで見つめていました」
水族館を後にして近くのユニクロに立ち寄ったところ、ずぶ濡れになったその外国人夫婦が新しい服や下着を購入していたという。
「彼らが席を譲らなかったせいで不快な思いをしましたが、結果として私たちは濡れずに済みました。ずぶ濡れになって“バチが当たった”と感じた瞬間、ようやく私の怒りも収まりましたね」
——外国人観光客の数は増加の一途を辿っている。それに伴い、「嫌な思いをした」という日本人が少なくないことも事実なのだ。
<文/藤山ムツキ>
【藤山ムツキ】
編集者・ライター・旅行作家。取材や執筆、原稿整理、コンビニへの買い出しから芸能人のゴーストライターまで、メディアまわりの超“何でも屋”です。著書に『海外アングラ旅行』『実録!いかがわしい経験をしまくってみました』『10ドルの夜景』など。執筆協力に『旅の賢人たちがつくった海外旅行最強ナビ』シリーズほか多数。