決して短くはないセクシー女優人生の中で、天使さんは何を考え、どのような変化を遂げてきたのだろうか。今だからこそ語れる、仕事観や恋愛観、今後の活動、さらにセクシー女優のセカンドキャリアについてなど、自身の思いを聞かせてもらった。
覚悟の引退。今まで一度も辞めたいと思ったことはない

「考えたことは一切なかったです。それに『引退』の言葉は、軽々しく口にしてはいけないと思っていました。だから今回は、覚悟を決めたうえでの引退です」
――では、引退をされるに至った経緯を聞かせてもらえますか?
「近年、業界にもいろいろな変化があって、以前にもまして居心地が良くなったじゃないですか。歴の長い女優さんも増えてきて、仕事のバリエーションが豊かになってきている。自分が続けようと思ったら、努力次第ではどれだけでも続けられる環境だと思うようになりました」
――確かに、その側面はあるかもしれませんね。
「ただ、私は仕事のうえで『どれだけ情熱を注ぐことができるのか』をとても大事にしているんです。そこを軸にすると、作品に出ることには満足してしまった部分があるのではないか、と。
――「天使もえ」の名前は、どうしていくのですか?
「やりたいことに向けて変化は出てくるとは思いますし、名前をどのように活かしていくかはハッキリと決めているわけではないのですが、今の自分の方針としては『天使もえ』を残していきます」
――引退した途端に「急に消えてしまった!」なんてことはないようで一安心です。
「それはないです(笑)。ファンの皆様に向けての発信も、ファンクラブで続けていきますし。ただ、今後はなるべく自分発信でやっていこうと思っていますよ。もちろん、事務所にお願いすることもあると思いますが、自分でできるところは自分で、という方針です」
――デビューから10年間で自身はどのような変化を遂げたと思いますか?
「これは第三者から見たらわかりづらいかと思いますが、メンタルの部分ですね。私はデビュー前にとても大きなトラウマを抱えていたんですよ。それがこの10年でようやく克服できた というか。たくさんの方が愛してくれたり、優しくしてくれたり、人として大切な気持ちをたくさん教えてくれたので、そこから抜け出すことができたと感じているんです」
――逆に言えば、克服するまでに、それだけ時間がかかるようなトラウマだった、と。
「人によっては生涯克服ができないようなことでもあるし、向き合えば向き合おうと思うほど苦しくなるようなことでしたからね。トラウマの克服も引退を決めた大きな要因だったりします」
“恋愛”との向き合い方

「私はこれまで、恋愛というか人とのふれあいをあまり多く必要としていなかったんです。役柄を演じるうえで、人間の感情を知るために“恋愛”というツールがある、くらいでしたね。『こういう感情があるとこういう振る舞いに繋がるんだろうな』『人を思う時ってこういう表情になるんだな』みたいな」
――あくまで女優をやっていくうえで必要なものだったと。
「そうです、そうです。なので、女優から抜け出して、一人の人間としての恋愛となると……私のベクトルにないんですよ。仕事仲間と新しいことを考えたり、仕事終わりに打ち上げをするとかの方が充実した時間だと考えているので、『恋愛ってすごく大事か?』と問われると、う~んって感じなんですよね(笑)」
――あまり重きを置いてはいなかったわけですね。
「女優的な意味で、そこに情熱や熱量が必要だとは思っていましたよ。私、放っておくと本当に淡々と日々を過ごしてしまうタイプなんですよ。でもそうなると、人としても作品としても単調になってしまうし、表に出る人間としての魅力に欠けてしまう気がして。恋心なんかも、努めて感じようとしていた気がします」
――もしかして、性欲も……?
「“高めよう”と思わないと湧き上がってこない時期もありました。ドラマティックなことって、経験として面白いでしょうけど、必要とまでは思わないかもしれませんね」
――結婚願望もあまりないのでしょうか?
「パートナーは欲しいです。好き好きーって相手ではなく、生活面や仕事面をサポートし合えるような相手がいればとは思っています」
セクシー女優のセカンドキャリアを体現する“天使もえの第2章”

「ファンの方々に向けての姿勢は変わりません。でも、ほかの誰から見ても『天使もえの第2章が始まった』と思っていただけるよう、ガラッと変えていくつもりです。これは、AV新法改正の活動の時にも考えていた、セクシー女優のセカンドキャリアを体現し、後輩の女優さんたちを助けることができる、そんな自分にもなれるのではないかと思っています」
――AV新法改正については、当時かなり積極的に発言をされていましたね。
「あれは難しかったです。私は私の立場でしか語れませんからね。やはり女優さんはそれぞれ個で動いていて、個の考え方があるので、『今を見て話す』ことは容易ではないと知りました。でも、大きな学びにはなりましたよ。自分の理想だけではない、たくさんの現実に直面して、大人の自分が生まれたような気がします」
――その想いも踏まえて、これから新たにデビューする女優さんたちに伝えたいことはありますか?
「今はやる気のある新人さんたちって、たくさんいるんです。『長く続けたいです』『業界に骨を埋める覚悟です』とか、その熱量自体は素晴らしいことだと思います。でも、やっぱり自分の意志とは別として、年齢や肉体的な面だったり、様々な事情で辞めることもあり得るはず。そうなっても、それまでの日々が無駄にならないようにして欲しいですね」
――無駄になる、というと具体的にはどのような?
「この業界は女優さんファーストであることが多い反面、ひじょうに甘やかされてしまうので(笑)。何も考えずに生きようと思えば、それが実現できてしまう場所でもあるんですよ。可愛ければキレイであればそれでいいみたいな。外見が重視される分、内面と向き合う社会的な学びは自ら動かないと得られなくなってしまいがちなんです。
いつまで続けられるのかは本人次第ですが、後悔のないよう日々いろんなことを吸収していって欲しいなと思います」
――天使さんにも後悔はあるのでしょうか?
「あります、あります。
――確かに、今後の「天使もえ」のためにもなったことですもんね。
「だから、これからデビューする女の子たちも、セクシー女優としての名前を上手く活用していって、SNSもお仕事として向き合っていくといいと思うんですよ。これも、私からのアドバイスの一つということで(笑)」
――では、最後に読者に向けてメッセージをお願いします。
「今は素直に“天使もえの第2章”が楽しみになっています。隠居を考えたりもしていたのですが、企画を考えたり資料作りをしていくうちに、隠居するほど自分の熱量が低くないことに気が付いて復活しました(笑)。
新しい目標に向かってがんばりたいと思ってます!これからも応援よろしくお願いいたします」
――ありがとうございました!
<取材・文・撮影/もちづき千代子>