SKE48卒業後、’24年からソロアイドルとして活動している江籠裕奈。これまでにリリースした楽曲は、アルバム収録曲も含めて全て彼女が作詞を手掛けてきたが(一部共作)、最新シングル『Only Lonely』(’25年6月18日リリース)では、一転。
ソロデビューして初めて作詞家が手掛けた楽曲を歌っている。果たして、その理由とは? 彼女の今の思いを語ってもらった。

2000年生まれの自分にとっては新鮮なサウンドでした

――3rdシングル『Only Lonely』は、ビジュアルも制作スタイルもガラッと変わりましたね。

江籠裕奈(以下、江籠):はい。’24年は、作詞や曲選び、ビジュアルイメージの提案といった“自分にできること”をやり続けた1年だったんです。表に出るだけじゃなくて、裏の仕事も全部自分でやっていた、というか。それを経て、’25年はどうしていく?となったときに、一旦制作から離れてみても良いんじゃないかと考えました。もともと、その選択肢がなかったわけではないんですよ。

――以前インタビューしたときも、「絶対に自分で作詞したい、というわけではない」とお話ししていましたよね。

江籠:そうなんです。なので、今回私は制作に一切関わっていません。衣装も、これまでと同じ大信頼している衣装さんに楽曲をお渡ししたら、曲のイメージに合わせたかわいい衣装が届いたという感じなので、自分から具体的に「こうしてほしい」と伝えたものはないんですよね。

だから、曲が届いたときの「あ、今回はこういう曲なんだ」という感覚は、SKE48にいたとき以来でした。
なにかと新鮮味のある3rdシングルになりました。

――では、実際に音源を聴いたときはどんな印象を受けましたか? 40代以上からすると、懐かしいシンセサウンドではありますが。

江籠:そうなんですよね。楽曲資料にも「2000年代を彷彿とさせる懐かしいサウンド」と書いてあったんですけど、私自身はあまりピンときていないんです(笑)。

――江籠さんは2000年生まれですからね。

江籠:そうそう(笑)。なのでむしろ新鮮です。それに、聴けば聴くほど良さが伝わる曲だなとも思いました。昔っぽいサウンドのなかに、衣装もヘアメイクも今っぽい自分がいるというミスマッチ感が面白いです。

――歌詞はいかがですか?

江籠:〈可愛く〉というワードが入っている感じは、私に寄せてくれたのかな?と思っています。あと、大人と子どものはざまで、どうしたらいいかわからない感じを歌っているところも。

私、今年の3月で25歳になったんですけど、25ってまだまだ若さがあって一番いい年齢だと思っているんです。
でも、4月に入って同級生の子たちが26歳になっていくのを見ると「えっ、みんなめっちゃ大人じゃん!」と思うんですね。ちょうどそう思って揺れ動いている時期だったので、この曲を歌うにはぴったりの心境でした。

――自分以外の方に書いてもらった歌詞とはいえ、歌いやすい歌詞ではあったんですね。

江籠:そうですね!

――ところで、先ほど「『あ、今回はこういう曲なんだ』という感覚は、SKE48にいたとき以来」と言っていましたが、グループ時代と違いを感じる部分はありますか?

江籠:グループにいたときは、男の子目線の曲がすごく多かったんです。秋元(康)先生が書いているからだと思うんですけど。

江籠裕奈、いずれはSKE48に楽曲提供? 夢への熱意を語る
江籠裕奈
――確かに。一人称が「僕」の曲が多かったですよね。

江籠:そう。だから歌詞に書かれている人の気持ちになって歌うのが、個人的にすごく難しかったんですよ。だけどソロになってからは、自分で作詞したもの含めて女の子目線の曲ばかりなので、歌う側としてはかなり大きな違いを感じています。

――ちなみに、タイトルの『Only Lonely』とは、「寂しい」といった意味があるようですが、江籠さんが最近寂しかったことは?

江籠:今年、SKE48のチーム再編があったじゃないですか。1月に各チームの所属メンバーが発表されて、4月からそのチームで動き出すという流れだったので、各チームの公演は一旦3月で千秋楽になったんですよ。
だから、最後の「時間がない」公演(江籠が所属していたチームKⅡのオリジナル公演)を観に行ったんです。そこで「あぁ、これで終わったんだな」と思って。さみしくなりましたね。

――わざわざ劇場まで行ったんですね。

江籠:はい、どうしても観ておきたくて。それに、チームの再編が発表されたコンサートも会場で観ていて、発表を受けて泣き崩れたみんなを観ていたので、終演後に楽屋で「最後、絶対に行くからね!」と約束していたのもあります。「時間がない」公演の初日から数えると……2年くらいやっていたのかな? すごく不思議な感じですけど、私の人生のなかで大きな出来事だったので、生で観られてよかったです。

――では、寂しい気持ちになったときには、どうやって気分を上げますか?

江籠:それはやっぱり、きなちゃん(愛犬のきなこ)ですね。家に帰って姿を見るだけで、心が癒やされます。いないと元気が出ないので、東京でお仕事をした日とかは実家にいる家族とテレビ電話をして、きなちゃんを見せてもらいます。

自分が生み出すものを「好きだな」と思う瞬間は増えた

江籠裕奈、いずれはSKE48に楽曲提供? 夢への熱意を語る
江籠裕奈
――江籠さんにとって、ソロアイドル1年目となった’24年は、どんな1年でしたか?

江籠:走り抜けた感じでしたね。もう、あっという間に過ぎていきました。特に忙しかったのは、夏。
フルアルバム(『Believer』/’24年10月30日リリース)の制作とフェスの出演を同時にこなしていたので。

――そもそも、セルフプロデュースなら1年でシングル2枚出すだけでも大変なのに、加えてフルアルバムまで作るなんて驚きです。しかも、1年目で。

江籠:アルバムの制作自体は4月くらいから始まっていたので、もうやるしかない!という感じでした。

――そうして、無事走り抜けることができたわけですが、成長した実感はありますか?

江籠:成長……しているのかな……? 成長していないと困るんですけど(笑)、どうなんだろう? あ、でも、去年は必死過ぎてわからなかったんですが、今年に入ってゆっくりできるようになって、改めて自分の作った曲を聴いたら「良い曲だな」と思えたんです。それはうれしかったですね。

――自分の仕事に手応えを感じられたんですね。自信にもつながっていますか?

江籠:自信ではないんですけど、「えー、また歌詞を考えないといけないじゃん!」といいながらも、そういう日々が楽しかったんだなと気づきました。大変と言いつつ、結局やりがいだったのかなって。

それに、アイドルフェスに出たときMCで「自分で作詞をしているんですけど」と言うと、ほかのアイドルのファンの方からすごくびっくりされるんですよ。そこで、「もしかして、ここまでやってきたことって、自分にしかできないことだったのかも」と思って。この経験が、未来の何かにつながっているのかも?と考えることはありました。


――過去のインタビューでは、「基本的に自分に自信がない」と言っていましたが。

江籠:はい、常にそうですね。

――1年目の経験を経て、自分のことを好きになったりはしましたか?

江籠:いやぁ、自分のことは好きにならないですよ(笑)! そこはまた別です。でも……思えばSKE48に在籍していたときから、自分が作り出すものや考えたものは「間違っていないはずだ」と思っていたんです。

わかりやすいところだと、自分でセットリストを組ませてもらったライブで、メンバーとファンの方々が心を通わせているのを見ると「やっぱり、これでいいんだ」と思っていたし、そういう瞬間を見るのも好きでした。ソロでもそういう経験を積み重ねているから、自分が生み出すものに関して「好きだな」と思う瞬間は増えていると思います。

些細なことでも褒めてもらえたら頑張れる!

江籠裕奈、いずれはSKE48に楽曲提供? 夢への熱意を語る
江籠裕奈
――多忙ながらもやりがいを見出した1年目を経て、今後はどんなふうに活動していきたいですか?

江籠:あまり決めていないんです。SKE48にいたときから、アイドルとして自分がどこまでいけるのか全然想像できていなくて。結局いつも流れに身を任せて、その時のベストを出すっていうやり方だったんですよ。それが、私のスタイルになっていたなと思うので、今もそのままやっている感じです。

私にとってアイドルって、人生すぎるんですよ。だから、「こうなる」と言い切れるものはないです。今後も今のまま行くかもしれないし、突然方向転換するかもしれないし。


――何が起きるかわからないと。まさに人生ですね。それが、アイドル活動の理想でもある?

江籠:そうですね。「アイドルをやるうえで、目標はあったほうがいい」と言う方もたくさんいるので人それぞれだと思うんですけど、私は定めた目標にたどり着けなかったときしんどくなるのが嫌なんです。それに、自分がやったことには毎回「頑張ったな」と思いたいので、今のやり方が私にはちょうどいいですね。

――では、今のモチベーションって何ですか?

江籠:えー、なんだろう!? 褒められることかな(笑)。「かわいいね」とか、「今日のライブ、よかったよ」とか、「いい歌詞だね」とか、些細なことでも言ってもらえると頑張れます。褒められて伸びるタイプなので!

いずれSKE48に曲を提供できたらいいな

――ところで、「いずれスタイルブックを出したい」という願望があると聞きました。

江籠:そうなんです。もともと、アイドルや女優さん、モデルさんのスタイルブックを見るのが大好きで、家にめちゃくちゃたくさんあるんです。なので、自分も出せたらいいなとぼんやり思ってますね。

ただ、スタイルブックって「私はこういう人間です」と言えるくらいのスタイルを確立していて、なおかつそれをちゃんと言語化できる人が出せるものだと思うんですよ。私も、譲れないことや大事にしていることはあるけれど、それを言語化して一冊にまとめるほどのボリュームにできるかといったら……まだ難しいので。できるタイミングがくるのであれば、出してみたいですね。

――明確な目標ではなく、スタイルが確立されたら出したいな、という。

江籠:そんな感じです。それに本を出すとなると、表に出してこなかった気持ちも赤裸々に見せないといけないと思うんですけど、私はもともと頑張っているところを見せないアイドルが好きなので、ポリシーに反してしまう気がするんですよね。

実際、表には出していないような辛かったこともいっぱいあるんです。それを世に出すのであれば……今ではないな、とも思います。

――ともあれ、素敵な願望ですね。そういった願望はほかにもありますか?

江籠:とても大きなもので言うと、SKE48に曲を書いてみたいです。劇場公演では、秋元先生が作詞していない楽曲も歌っていたので、可能性があるかもしれないと思って。だから……いずれは。

今はまだ夢すぎる話だけど、みんなの良さが詰まった楽曲を作って、それをみんながライブで歌ってくれて、ファンの方が感動してくれたら、めっちゃいいなと……。そんなふうに考えることがあります。

――なんとなく構想はあるんですか?

江籠:はい。こういう感じの曲がいいな、というイメージはありますよ。

――もはや江籠さんは、クリエイターでもありますね。形になる日が楽しみです。

江籠:勝手に言っているだけですけどね(笑)!

取材・文/松本まゆげ 撮影/後藤 巧
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