移動日を1日挟み、13日からは地元ドジャースタジアムでジャイアンツとの3連戦。そして再びパドレスと4連戦が行われる。ナ・リーグ西地区は三つ巴の様相を呈しているだけに、この1週間の結果が地区の勢力図にも大きな影響を与えそうだ。
大谷は「9試合連続で打点なし」
改めてドジャースの13連戦を振り返ると、ヤンキースと戦った5月30~31日の2試合はドジャース打線が爆発。合計26得点を挙げる猛攻を見せた。ところが、6月1日の同カード最終戦を3-7で落とすと、6月は11試合で41得点とやや勢いを失っている。その象徴となっているのが、主砲・大谷翔平の打撃である。
大谷は5月の27試合で15本塁打を放ち、ナ・リーグの月間MVPに輝いた。ところが、6月に入ってから放った本塁打は、2日のメッツ戦で飛び出した2ランだけ。11試合で挙げた打点もその一発による2打点のみに留まっている。
つまり、その後は9試合連続で打点を挙げられていない。大谷のメジャー移籍後の自己ワーストは10試合連続なので、打点なしの最長記録にリーチが懸かった状態でジャイアンツとの3連戦を迎えることになる。
開幕から指摘されていた“勝負弱さ”
23本塁打、39打点——。改めて今季の大谷の成績を見ると、本塁打に比べて明らかに打点の数が少ない。大谷の最後のタイムリーは、5月18日の古巣エンゼルス戦。5回の第3打席に、花巻東の先輩・菊池雄星のチェンジアップをライト前に運び、二塁走者を還した後は3週間以上もタイムリーが出ていない。開幕から再三指摘されてきた勝負弱さが今も続いている状態だ。
6月からドジャース得点圏打率が急降下
実は大谷の勝負弱さは、「タイムリー欠乏症」としてチーム全体にも波及している。ドジャースは今季序盤、テオスカー・ヘルナンデスやウィル・スミスらの主力が高い得点圏打率を誇っていた。実際に、チーム全体の月別得点圏打率を見ると、3~4月がちょうど.300、5月は.345でいずれもメジャートップ。ただでさえ強力な打線が効果的に得点を挙げていたのだ。
ところが6月に入ってから事態は急変する。大谷だけでなく、それまで勝負強さを発揮していた主軸選手からもなかなかタイムリーが出なくなった。
6月のドジャースの得点圏打率はわずか.202。3割を超えていた5月までに比べると、急降下といえるだろう。
ドジャース打線が激変したワケ
ではなぜ、ドジャース打線はこうも激変してしまったのか。理由として考えられるのが、5月まで得点圏であまりに打ち過ぎていたことだろう。統計的に見ても、2か月続けて得点圏打率が3割を超えるというのは、奇跡的な出来事といえる。両リーグの30球団の中で、5月まで月間打率3割以上をマークしたのは、ドジャースの他にナショナルズ(.325、5月)とカブス(.316、5月)だけだった。
また、開幕から2か月が経過し、他球団のドジャース打線に対する分析も進んだと考えられる。特に高い得点圏打率をマークしていたヘルナンデスやスミスには、本気で対策を練ってきたはずだ。それらの要因が絡まり、シーズンを通して“ちょうどいい”得点圏打率に収束したのが真相だろう。
ドジャースは春先から先発投手陣に負傷者が続出し、台所事情は今も厳しいまま。地区の首位争いで優位に立つためにも、打線の爆発が求められる。
ジャイアンツとの初戦は山本由伸が登板
幸い、12日はドジャースにとって2週間ぶりのオフ。大敗を喫した10日のパドレス戦では、キケ・ヘルナンデスが2回1/3を1失点に抑える“好投”を見せ、投手陣の温存にも一役買った。投手、野手ともに万全の状態でジャイアンツとの首位攻防3連戦に臨めるだろう。ただ、ジャイアンツは6月に入って8勝3敗と絶好調。12日のロッキーズ戦で逆転負けを喫したが、ドジャースと1ゲーム差の2位につけている。ドジャースとすれば、是が非でも3連戦の初戦を取って単独首位の座を守りたいところだろう。
注目の初戦は、エースの山本由伸がマウンドに上がる。今季のドジャース打線は山本が登板時にほとんど援護できず、エースの好投を見殺しにすることが多い。
そんな嫌な流れを断ち切るためにも、ドジャース打線の奮起は必要不可欠。週末の3連戦は、大谷の復調だけでなく、打線のつながりにも要注目だ。
文/八木遊(やぎ・ゆう)
【八木遊】
1976年、和歌山県で生まれる。地元の高校を卒業後、野茂英雄と同じ1995年に渡米。ヤンキース全盛期をアメリカで過ごした。米国で大学を卒業後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLの業務などに携わる。