こっそり内税を外税に。細かく値上げする戦法
ささやかな贅沢だった居酒屋でも、“静かな値上げラッシュ”が続いている。「とある大手チェーン店は、内税を“外税”にこっそり変えました。実質10%の値上がりです」
そう語るのは、ライターで日本立ち飲み協会大使のキンマサタカ氏。実際の当該店舗を訪ねると、メニュー表に記された(税込み)部分が、黒マジックで塗りつぶされていた……。
お通し代や席料、チャージの価格も100~200円ほど上昇し、客にじわじわと負担がのしかかる。加えて、商品の原価を下げる工夫も静かに広がっている。
「冷凍唐揚げにポテトを添えて『唐揚げセット』にしたり、業務用スーパーで買える汎用食材でメニュー数を稼ぐスタイルの個人店が増えました。調理の手間は省けますし、原価も抑えられる。結果的に品数が減ってきている印象です」
「安い!」のは看板商品だけ?

「客離れを懸念して大幅値上げはできないけれど、従来の価格帯では正直やっていけない。だから“ビール190円”といった看板商品だけ据え置いて、苦渋の決断として、他のフードやドリンクを10~20円値上げするのが一般化しています」
仕事終わりの一杯くらい財布を気にせず飲みたいものだが——。
大手チェーン店の値上がりの相場
•お通し代:300円→500円
•サワー類:400円→450円
•唐揚げ:500円→550円
•鳥貴族:5月より全品370円から390円に
•モンテローザ:5月よりフードメニューを平均5%値上げ
•今後値上がりするもの……日本酒:5~20%の値上がり
値上がりは個人店だけにとどまらず、大手居酒屋チェーン店でも。低価格チェーンで知られる「鳥貴族」も一律390円となる
値上げの本番はこれから! リアル娯楽離れが加速する

消費者にとって“値上げ”の報道はもはや日常風景となったが、帝国データバンクの飯島大介氏は「今年は例年以上に値上げ機運が長く続く」という。
「’22年から原材料費やエネルギーの高騰が続き、’24年でやや落ち着いたように見えました。しかし、’25年からは人件費の上昇が主因となり、再び値上げのサイクルに入りました。今回は“終わりが見えにくい”のが特徴です」
“リアル”はもはや庶民の手に届かなくなりつつあるか

今年4月には大手酒造メーカー3社がビールやハイボールなどの主力商品を軒並み値上げ。さらに「10月には日本酒も5~20%の値上げが予定」と飯島氏。
そうした製品の値上がりはサウナや居酒屋などのサービスの価格にも波及する。
消費経済アナリストの渡辺広明氏は、男の娯楽は今後「リアルからオンラインに流れる」と分析する。
「オンラインサービスも最近は数百円単位で値上がりしていますが、それでもほかの娯楽に比べればコスパがよいと見られています。入場料も交通費も不要ですし、“気まずさ”もない。特に若年層の男性ほど、そちらにシフトしている印象があります」
リアルで飲み、遊ぶには、それなりの覚悟と予算が必要な時代がやってきたのだ。
【ライター・キンマサタカ氏】
1977年生まれ。出版社勤務後独立。尿酸値13の痛風持ちだが、発作が出ても足を引きずりながら立ち飲み屋の取材をする
【消費経済アナリスト・渡辺広明氏】
やらまいかマーケティング代表取締役。流通アナリスト、コンビニ評論家。消費者目線から見た経済や消費分析に定評がある
取材・文/週刊SPA!編集部
―[[夜遊び値上げ]大調査]―