毎月一定の給料をもらって働く会社員であれば、「配当金をもらいながら悠々自適に暮らしたい」「不動産収入でリタイアしたい」なんて生活に憧れたことがあるだろう。
「月に5万円、そして10万円と定期的に自分の力でお金が入ってくるようになると、それまで感じていた“会社への絶対依存”が薄れていきます。
誰かに評価されなければ生きていけないと思っていた世界が、ほんの少しだけ、自分の意思で動かせるように感じてくるのです」

 そう話すのは、登録者数36万人を超えるYouTube「ガーコちゃんねる」を持ち、最新刊『3ステップで未来が変わる! ふつうの会社員のためのお金の増やし方【最適解】』(扶桑社)を発売するガーコさん。「ガーコちゃんねる」は新NISAなどを活用した資産形成や投資・お得情報を中心に、丁寧な解説で「かゆいところに手が届く」と人気のYouTubeチャンネルだ。

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「本業の給料以外に副収入が安定してきたとき、多くの人がふと思います。『このまま会社を辞めても、意外と生きていけるんじゃないか』と。そのとき選択肢に入ってくるのが、FIRE(Financial Independence, Retire Early)、つまり経済的自立と早期リタイアです。

 よく誤解されがちですが、FIREとは『働かずにダラダラ暮らす』ことが目的ではありません。FIREの本質は、『働かなくてもいい状態をつくって、やりたいことに時間を使えるようにすること』です。お金を理由に選択肢を制限されない状態。たとえば朝起きて、『今日は何をしようか』と自分で選べる日々。それがFIREの本当の価値です」

 FIREの戦略はざっくり2つあるとガーコさんは話す。

「ひとつは『資産をつくって不労所得を得ること』、もうひとつは『生活コストを下げて支出をコントロールすること』です。でも、この2つはどちらも時間がかかるし、節約には限界があります。


 そこで登場するのが、副業という“現役で稼げる力”。たとえば月10万円を副業で稼げるとすると、年間で120万円。FIRE後もこれが続けば、生活費の一部を補えるわけです。つまり『完全に働かなくていい状態(フルFIRE)』でなくても、『少し働くだけで生活が成り立つ状態(サイドFIRE)」が実現できるようになります。

 この“少しの収入”があるだけで、FIREに必要な資産額は大幅に下がります。副業がある人のFIREは、時間もお金も有利に進むというわけです」

「ちょうどいい自由」が得られる「サイドFIRE」を実現するためには、いくら必要?

◆サイドFIREという“ちょうどいい自由”

 完全なリタイアは難しいが、現実的な選択肢として注目されている「サイドFIRE」。これは「資産所得」+「少しの労働収入」で生活するスタイルで、社会との関わりを持ちながら、時間と働き方を自分でコントロールできる状態を指す。

「副業で月十数万円~数十万円程度の収入が継続してある人にとって、このサイドFIREは非常に相性がいい。仮に生活費を20万円としたときに、資産運用からの取り崩しで10万円、副業からの収入で10万円があれば、フルタイムで働く必要はなくなります。資産形成もスピードを落とさずに済みますし、リタイアに伴う“社会的な孤立”も回避できます。

 さらに、サイドFIREの良い点は、『労働の質』を自分で選べるという点です。生活のためにイヤイヤ働くのではなく、自分がやりたい仕事だけを週に数日だけやる。報酬よりも、やりがいや人とのつながりを重視する。
そんな“生活にちょうどよい働き方”が可能になります。

 収入の多さよりも、“役割を持つこと”“社会と接点があること”に価値を感じ始めたとき、サイドFIREはその思いを受け止めてくれる柔軟な枠組みになります」

◆サイドFIREなら、ハードルがグッと下がる!

 では、FIREに必要な金額はどのくらいだろうか?

「具体的にシミュレーションしてみましょう。FIREに必要な金額は、一般的に次の計算式で算出されます。

●年間支出×25倍 = FIREの必要金額

 なぜ25倍かというと、資産を年利4%程度で運用し、その運用益で残りの生活費をまかなう想定だからです。この年利4%という数字は、たとえば全世界株や米国株などに広く分散して投資する『インデックスファンド』の過去の長期リターンがもとになっています。

 もちろん毎年きっちり4%出るわけではありません。年によってはマイナスになることもありますし、逆に大きくプラスになる年もあります。でも、長期的(15~20年以上)に見れば、平均して年3~5%程度のリターンが期待できます。

 一方でサイドFIREは副業などの収入があるため、次の計算式から導き出された数字が必要な資産額の目安になります。

●(年間支出‐副業などの年間収入×25倍 = サイドFIREの必要金額

 たとえば生活費が月25万円、年間300万円の場合、本来なら300万円×25=7,500万円が必要になります。けれども副業で月10万円(年間120万円)稼げていれば、その分は自力でカバーできるので、必要なのは残り180万円分。180万円×25=4,500万円で、必要金額は4,500万円になります。

 もっと副業の金額を増やすことができて、仮に副業で月15万円(年間180万円)まで育てられたら、同じ生活費月25万円(年間300万円)でも残りはたった120万円で、120万×25=3,000万円。
このくらいになると『まず3,000万円を目指してみようか』という現実的な目標に変わってきます。つまり、副業収入が増えれば増えるほど、『FIREに必要な資産額』はどんどん下がっていきます。

 逆に生活費をもう少し抑えられれば、さらに有利になります。仮に生活費が月18万円(年間216万円)、副業月10万円(年間120万円)なら、216万円−120万円=96万円。96万円×25=2400万円。ここまで来れば、3000万円どころか2000万円台でもFIREが見えてきます。

 もちろん、こうした計算はあくまで『ざっくり目安』なので、運用のリスク管理や税金、保険なども加味して余裕を持って考えるのが大切ですが、副業を組み合わせることでFIREが“いきなり非現実的なものではなくなる”という感覚はつかんでもらえるはずです。この『副業+FIRE』の組み合わせは、実はサイドFIREとの相性が抜群なのです」

◆FIREはスタート地点。やりたいことがなければ苦しくなる

 ただし、「FIREには落とし穴もある」と警鐘を鳴らす。

「それは『時間は手に入ったのに、やることがない』という状態です。自由になったはずなのに、何をしたらいいかわからないという人が意外と多くいます。そうなると、せっかくのFIREがむしろストレスになってしまいます。


 また、社会から切り離されたような感覚に襲われ、何のためにここまで頑張ったのか、わからなくなってしまうのです。だから、FIREを目指すなら、『何をしたいのか』をFIRE前から少しずつ探しておくことが大事です。いきなり会社を辞めて、何も考えずに自由だけ手に入れても、案外その自由に押しつぶされてしまうのです。

 FIREは「会社を辞めたら終わり」ではありません。むしろそこからが本番です。本当に自分らしく生きるには、自分を知っておくこと、そしてその力を磨いておくことが必要不可欠です」

【ガーコ】
資産運用や投資、お金関連の情報を発信する、マネー系インフルエンサー。
マーケティング、経営企画、新規事業開発などを担当する会社員として働きつつ、夜間大学院に通い、経営学修士号(MBA)取得。ファイナンシャルプランニング技能士資格保有。ITストラテジスト、プロジェクトマネージャーなど複数の国家資格を保有。自ら「プロフェッショナル窓際族」を実践し、社内で一定の評価を獲得しつつも、ほぼ毎日定時帰りを実現。会社員のかたわら、YouTubeなどのSNSを通じ、副業を始める。副業開始後、約3年でSNSの総フォロワー数は40万人超える(2025年6月現在)。

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