3700人調査概要
今回、取材班は世帯年収400万~700万円未満を「中流」と位置づけ、2人以上世帯で首都圏および大阪・名古屋などの大都市で暮らす30~50代男女3700人に5月28日から6月3日にかけてアンケートを実施した。その調査対象の主な属性分布は下記のとおり。子供あり・なし
子供あり 71%
子供なし 29%
働き方
会社員(正社員) 71%
会社員(契約・派遣) 8%
公務員 4%
自営業 7%
専業主婦 10%
世帯年収
400万~500万円 37%
500万~600万円 49%
600万~700万円 14%
3700人の肖像
給料が何年も上がらない! 1638人中流層3700人のほぼ半数が給料が上がっていないと回答した。
「ファミレスは高いから外食はうどん」
暮らせないわけではないが、生きる大変さが年々増している――。そんな悲痛な叫びが聞こえる調査結果だ。今回、取材班は150問以上の設問を用意。そのなかで回答数の多かったものを順に掲載した。調査ではまず、生活費などの消費動向について尋ねた。すると、「スーパーで高くて買うのをあきらめることが増えた」(1421人)、「コンビニの商品は高いので行かないようにしている」(1051人)、「スタバは高いので行かない」(750人)、「家で牛肉を口にする機会は月に2回もない」(680人)など、多くの人が食費を厳格に切り詰めている様子が垣間見えた。
2人の子供を育てながらパートの看護師として働く根本薫さん(仮名・40歳)が話す。
「我が家の年収は600万円ほど。夫が会計士を目指して勉強をしているので、今は年収増も期待できません。生活はギリギリなので、昨年末には長男に有料のピアノとバイオリンと英語の習い事をやめてもらいました。
服はフリーマーケットの閉店前の投げ売り、ないしは放出品をゲットするようにしており、外食は基本、丸亀製麺。毎月1日の釜揚げうどん半額(並180円)デーを狙って行く。友人にお茶に誘われたら、ウチでのお茶会にするよう説得する。それならタダで済むし、友人からお茶菓子がもらえるから。そうやって徹底的に支出を減らしてます」
娯楽消費の結果を見ても、「ディズニーやUSJはお金がかかりすぎるので行けない」(1202人)、「Nintendo Swich 2は高すぎて買えない」(979人)など、国民的人気を誇るレジャーやゲーム機がもはや“手が届かない存在”になっている様子がうかがえる。インバウンド客が増える一方で、「お金がかかるので何年も旅行にも行けてない」(761人)のが、今の日本の中流なのだ。
生活編
(n=世帯年収400万~700万円未満の男女3700人 複数回答)・スーパーで高くて買うのをあきらめることが増えた 1421人
・キャベツが1玉200円なら買わないようにしている 1201人
・コンビニの商品は高いので行かないようにしている 1051人
・基本的に特売品やクーポン割引のものしか買わない 959人
・外でコーヒーを飲むときスタバは高いので行かない 750人
・スーパーよりも業スーやハナマサでまとめ買いする 698人
・携帯電話は格安スマホで月3000円以下に抑えている 684人
・家で牛肉を口にする機会は月に2回もない 680人
・ニクロも高いのでSHEINで服を買っている 672人
・お米が高すぎるのでパンや代替品で我慢している 638人
・電気代が高いので暑くてもエアコンはつけない 527人
・夫婦どちらかが倒れたら経済的に破綻する 501人
・生活費が足りなくなって借金をしている 199人
・ここ1年以内に家賃を滞納したことがある 72人
娯楽編
(n=世帯年収400万~700万円未満の男女3700人 複数回答)・ディズニーやUSJはお金がかかりすぎるので行けない 1202人
・Nintendo Swich 2は高すぎて買えない 979人
・お金がかかるので旅行には何年も行けてない 761人
・子供との外食は月2回以下でガストかサイゼリヤばかり 713人
・家族でクルマで遠出するとき下道だけを使う 619人
・飲み会は基本的に断るようになった 615人
Q 月に自由に使えるお金はいくら?
1万円未満 29%
1万~3万円 54%
3万円以上 17%
・映画館には行かない。サブスクで見られる機会を待つ 468人
・家族での外出は公園などタダで過ごせる場所を選ぶ 261人
・節約のために趣味をやめて休日にやることがなくなった 239人
・お金がないのにソシャゲとマンガには課金してしまう 94人
教育費に介護負担……追い込まれる氷河期世代
「現役世代のボリュームゾーンである1700万人の就職氷河期世代が“割を食わされている”という要因があります。バブル崩壊後の経済低迷期に就職活動を余儀なくされて低賃金が常態化。
貧困問題を長年取材するジャーナリストの小林美希氏は氷河期世代特有のリスクに言及する。
「世帯年収が1500万円もある40代女性でさえ、子供の教育費負担が重すぎて、『ペットボトルのお茶も高く感じる』と話していたように、教育費の負担が上がり続けているのも氷河期世代の生活苦の一因。氷河期世代は年齢的に親の介護問題も抱えがちですから、子と親のダブルで負担が発生しやすい」
今回の調査では親の健康不安を抱える人が593人にのぼり、「子供が大人になるまで育てきれるか不安だ」という人が子育て中の人の約10%に上った。一方、「大卒初任給ばかり上がって自分の給料は上がってない」という人も約10%おり、若者との格差を感じている様子も垣間見えた。
収入・仕事編
(n=世帯年収400万~700万円未満の男女3700人 複数回答)・昇給しても使えるお金は減っている 1430人
・会社では昇進できず平社員として働いている 891人
・大卒初任給ばかり上がって自分の給料は上がってない 560人
・本業の収入が増えないので副業を最近始めた 308人
・転職してみたが年収が下がった 293人
・残業が禁止されて収入が減った 265人
・昇給したが住宅補助などが削減されて収入が減った 149人
・ここ数年でリストラされた、リストラ対象になった 102人
健康・社会保障編
(n=世帯年収400万~700万円未満の男女3700人 複数回答)・将来、年金だけで暮らしていけないと感じている 1245人
・健康保険料や税金が上がり家計が苦しい 1095人
・社会保険料はリターンが合わないので払いたくない 714人
・急病や入院に備える十分な貯金はない 536人
・社会保険料を上げるならせめて減税してくれ 520人
・健康不安はあるけど高くて人間ドックには行けない 403人
・体を壊しても病院に行くのは我慢している 274人
・生命保険・医療保険が払えなくなって解約した 172人
家族編
(n=世帯年収400万~700万円未満の男女3700人 複数回答)・親が要介護状態、ないしは健康不安を抱えている 593人
・配偶者に対して「もっと稼げよ」と思ってしまう 378人
・家計が苦しすぎて夫婦喧嘩をする 330人
・「親ガチャ」には恵まれなかったと感じる 322人
・「家族がいなければ生活がラクだ」と思ってしまう 218人
・子供が大人になるまで育てきれるか不安だ 191人
・子供が欲しいけど経済的に難しいと諦めた 91人
・子供の習い事をやめさせて出費を減らした 91人
【第一生命経済研究所 永濱利廣氏】
首席エコノミスト。景気循環学科常務理事なども務める人気エコノミスト。近著に『就職氷河期世代の経済学』
『週刊エコノミスト』記者を経てフリーに。就職氷河期世代の雇用や子育ての問題を継続的に取材。『年収443万円』など著書多数
―[[中流貧民]3700人の肖像]―
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