残クレ(残価設定ローン)は、普通に買えない「高嶺の花」のような高いクルマを月々の支払額を安くできるローンです。
なぜ「残クレ=悪」という風潮が生まれたのか
残クレが悪いと思われるようになったのは、ここ最近ではないでしょうか。残価の高い(リセールバリューが高い)クルマ、とりわけアルファードが増えている、また、そのアルファードに乗っている(所有している)人の属性……いわゆるマイルドヤンキーのイメージがあまりよろしくない、といったことが主な原因なのでしょう。
見栄を張りたい若者を嘲笑し、一部の妬みや僻みも含めて湾曲した結果、ネット上で「残クレアルファード」という言葉が生まれ、残クレ利用者の全てがよろしくないという風潮になってしまったのかもしれません。
高嶺の花が手に届く残クレの仕組み
残クレの仕組みをあらためて説明すると、ローン契約期間の最終回、一般的には3年~5年後の車の将来価値を予測し、その価値をローン最終回に据え置くことで毎月の支払いが抑えられる、というものです。たとえば、600万円のクルマを5年(60回)支払うとすると、金利を考慮しなければ毎月10万円です。残価を300万円とした場合、最終回に300万円を据え置くことで残りの300万円を59回払うことになるため約5万円の元金を支払います。実質的には金利が発生するのでこれよりも支払い金額は高くなりますが、手の届きにくかったクルマでも残クレを使えば買うことができます。近年はクルマの価格も高くなってきていますので、それに比例して残クレ利用が増えているのでしょう。
使い方によっては残クレは悪くない

ですが、このような縛りの中でも気にせずクルマに乗ることができるのであれば、残クレ利用でも問題ないと筆者は考えます。
じつは、筆者もディーラーに新卒で入社してから3台の新車を買いましたが、在職中に購入した2台は残クレを使っています。その理由としては、「職業柄、定期的にクルマを買い換える必要がある」、そして「毎月の支払いを抑えつつ、頭金も出したくない」という事情があったからです。
残クレ利用者の中には「頭金を保険として残しておきつつも安心できる新車を買いたい」という一定のニーズがあります。大きな金額を最終回に据え置く残クレの金利負担は、通常のローンと比べるとかなり大きいです。ただ、万一の時の備えのために現金を残しておくというのは、ファイナンシャルプランナーとして見ても良い考えと言えます。
もしまとまったお金が必要になったとき、カードローンなどを利用すると、残クレ以上の金利負担を強いられるかもしれません。
残クレはリスクヘッジをすることが必須
残クレの最大の敵は「修復歴」です。修復歴とは事故などでクルマの骨格部分が損傷し、それを直した跡があるということです。最近のクルマは安全装置が充実して事故発生率が下がり、事故に遭っても大きな損傷をしにくくなりました。とはいえ、事故のリスクに備えることも重要です。たとえば、自動車保険の特約に「車両新価特約」をつけることで、車両価格の50%以上の事故発生時に新車相当額の保険金がもらえるようになります。また、もらい事故の備えとして「弁護士費用特約」に入ることで、損害賠償の交渉で不利にならないようにすることも重要です。これらの特約に入れば100%安心というわけではありませんが、安心感を得られます。ですが、残クレで支払える範囲でクルマが買えるといっても、その後のメンテナンス費用などのランニングコストを捻出できないのはもってのほかです。
残クレ利用は欲しい車が買えるようになる「渡りに船」のような仕組みですが、購入後のコストを考慮することも大切でしょう。
<文/宇野源一>
【宇野源一】
埼玉県在住の兼業ライター。大学卒業後、大手日系自動車ディーラーに就職。その後、金融業界の業務・教育支援を行う会社に転職し、法人営業に従事しながら、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、AFP資格を取得。X(旧Twitter):@gengen801