「BBQ禁止」の看板を無視する外国人観光客の集団
夕暮れ時、黒渕いさおさん(仮名)は、愛犬との散歩コースをいつもと変えて、海岸沿いの浜辺まで足を伸ばした。夕日が美しく、平日の夕方ということもあって、静かにのんびりと散歩を楽しんでいた。しかし、思わぬ騒動に巻き込まれることに……。浜辺を歩いていると、騒がしい声が聞こえてきた。何があったのかと思って少し近づくと、金髪で背の高い男性を中心に、5~6人の外国人観光客のグループが堂々と浜辺の真ん中でBBQを楽しんでいる姿があった。
「そこは地域の人には景色が綺麗なことで有名な散歩スポットで、『BBQ禁止』『火気厳禁』の立て看板がしっかりと設置されている場所なんです。彼らはポータブルグリルを持ち込んで肉を焼きながら、スピーカーから大音量で音楽をガンガン流している状況で、まるでビーチフェスかプライベートパーティのような騒ぎっぷりでした」
注意しても「No problem!」
散歩していた他の人たちも困惑した表情を浮かべるなか、管理事務所の職員が注意しに来た。職員が「ここはBBQ禁止なので」と英語を交えて必死に説明しても、金髪の男性は「OK!No problem!」と笑ってごまかすばかりで、全く聞く耳をもたなかった。職員が「困ります。ルールですから」と食い下がると、今度は別の外国人女性が「Why?」と大声で反論。口論はヒートアップし、金髪男性も立ち上がって身振り手振りを交えながら何かを主張し始めた。
黒渕さんが「うわ~、迷惑な外国人だなぁ~」と思った矢先、予想外の事態が起きた。
金髪男性の腕がグリルに当たり、「ガコン!」という大きな音とともに砂の上に倒れた。
「近くにいた家族連れのお母さんが『危ない!』と子どもを抱き上げて逃げる姿を見て、私も慌てて愛犬を抱えて少し離れました」
消防車とパトカーが到着
幸い大きな火事には発展しなかったが、煙がもくもくと上がり、周囲の人々はざわついていた。誰かが通報したのか、10分ほどでサイレンとともに消防車とパトカーが到着。消防隊員が迅速に火の処理をし、警察官が外国人観光客のグループに事情聴取を始めた。結局、彼らは警察署まで連行されることになった。金髪の男性は最後まで何かを主張していたが、大きな看板があるにもかかわらず、しかも英語の注記もあるなかでの違反行為だった。
「職員の方は『毎年夏になるとたまにこういうことがあるんです』とため息をついてました。インバウンドも大事だと思いますが、外国人観光客には最低限のルールやマナーは守ってほしいものです」
——外国人観光客が、文化や風習の違う土地を訪れてテンションが上がってしまうのはわかる。お互いが気持ちよく過ごせるように早くなってほしいものだ。
<文/藤山ムツキ>
【藤山ムツキ】
編集者・ライター・旅行作家。取材や執筆、原稿整理、コンビニへの買い出しから芸能人のゴーストライターまで、メディアまわりの超“何でも屋”です。著書に『海外アングラ旅行』『実録!いかがわしい経験をしまくってみました』『10ドルの夜景』など。