将来への不安から投資を始めたという人は少なくないだろう。初心者は非課税制度のある新NISAやiDeCoを使い、投資信託で少額から始めるとリスクは少ないと言われているが、株式投資スクールで講師を務める松本侑氏は「米国成長株を狙うべき」と語る。

投資家が米国成長株を狙う理由とは?

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――米国成長株をおすすめする理由は?

松本 米国成長株の企業は、米国内だけではなく、全世界で売上を立てている企業がほとんどです。短期的な成長はもちろん、中長期的な成長が見込めるところが、米国成長株のいちばんの強みだと思います。

――ただ、トランプ関税で世界的に株価が急落するなど、今投資を始めることにリスクを感じている人は多いと思います。

松本 米国成長株は中長期的に運用していくことになるので、長い目で見なければいけません。米国株全体でみると右肩上がりですし、トランプ関税で株価が急落したときも、米国株はわずか1か月半で急落前の株価に戻りました。

 米国株は、世界的に期待を持たれているという構図は、今後も変わらないと思います。それに、米国成長株を運用することで得られるメリットもあります。

――どのようなメリットがあるのでしょうか?

松本 ドルで運用できる点です。投資信託で運用している方は、株を円で買って円で運用している形になりますが、昨今は円安が続いていて円は今後、さらに弱くなるリスクがあります。円で運用を続けるのも実はリスクがあるので、そういった点でもドルで運用できる米国株をおすすめしています。

米国成長株を運用するときのポイント

――投資の初心者に米国成長株はハードルが高そうな気もしますが……。

松本 英語が苦手、海外の情報収集が不安といった悩みから、「ハードルが高い」と考えている方は多いと思います。ですが、SBI証券や楽天証券、マネックス証券といった証券会社を利用して、米国株の銘柄の情報収集を行うことは可能です。

 それにメタやネットフリックス、コストコなど、米国成長株の注目銘柄の中には、日本人にも馴染みのある企業も多い。
一次情報から企業の業績を予測することもできるので、興味のあるところから調べていくのがいいのではないでしょうか。

――初心者が米国成長株の運用を始める際に注意すべきポイントは?

松本 ポイントは2つあります。1つ目は、一括で投資をしないこと。米国成長株は変動幅が大きいので、下がるときは急落します。リスクを下げるためにも、小刻みに買うのを意識するといいですよ。

 2つ目のポイントは、決算の発表前に買わないこと。決算が発表されてみないと、好決算か悪決算かはわかりません。好決算ならいいのですが、悪決算だった場合は株価が急落する可能性もあるので、2週間くらい前から買い控えたほうがいいでしょう。

――逆に買ったほうがいいタイミングはありますか?

松本 “押し目買い”というのですが、株価が下がった後、上がり始めたら買うのがおすすめです。逆に株価が下がっている、またはSNSなどで話題になっているタイミングは買うのを避けるべき。下がっているとはさらに下がる可能性がありますし、話題になっているタイミングでは割高になっていると考えたほうがいい。

 また、初心者の方は投資の割合を投資信託は「7」、米国成長株は最大でも「3」にするのがいいと思います。
先ほどもお話したように米国成長株は変動幅が大きいので、下がってもカバーできるように備えておくべきです。

松本氏が注目する米国成長株7銘柄

投資初心者でも「米国成長株」を狙うべき理由…プロも注目する”7つの銘柄”を公開
写真はイメージです
 松本氏が注目している米国成長株を聞いた。(※株価や1年間の上昇率のデータは2025年6月30日時点のもの)

①パランティア・テクノロジーズ(PLTR)
株価:126
上昇率:+495

松本 PLTRは、データ分析やAIのプラットフォームを提供している企業です。有形のものは関税ショックの影響を受けましたが、無形のものを扱って今年に入ってからS&P 500の銘柄の中で最も延びていて、米国株好きの間では、エヌビディアのような成長を遂げるのではないかと期待している人もいます。

②JEPQ(JPMorgan Nasdaq Equity Premium Income ETF)
株価:52
上昇率:▲3

松本 今回ピックアップした7銘柄の中で、JEPQだけ個別株ではありません。JEPQは株価の値上がり分を配当として返すカバードコールで、株価の伸びはイマイチです。この1年間で3%マイナスになっていますが、高配当なのは大きな魅力。S&P 500の利回りが1%前後なのに対して、JEPQの直近の配当の利回りは12%もあります。

 また、米国の個別株配当は3か月に1回配当が出るのに対して、JEPQは毎月配当が出るのも特徴です。高配当の株運用をしていきたい方はとくに注目ですが、JEPQは新NISAの成長投資枠が使えないというデメリットもあります。

③メタ・プラットフォームズ(META)
株価:640
上昇率:+36

松本 皆さんもご存知だと思いますが、METAはFacebookやInstagramなどのSNSを運用している企業です。同じ広告事業を行っているGoogleよりも業績がいいですし、AIへの事業投資も積極的に行っているので、将来性があると思います。

メタのほかにも日本でおなじみの企業が登場

④ネットフリックス(NFLX)
株価:1191
上昇率:+92

松本 ネットフリックスを提供しているNFLXも、日本人に馴染みのある企業ですね。
インフレによって動画のサブスクも料金が上がっていますが、ネットフリックスは独自コンテンツの人気が高く、会員数は右肩上がりに増えています。インフレの価格転嫁がうまくいっているので、今後に注目しています。

⑤テスラ(TSLA)
株価:342
上昇率:+92

松本 電気自動車で知られるTSLAですが、ヨーロッパや中国の市場で苦戦していて、業績は非常によろしくない。ですが、ステラは無人タクシーや人型ロボットのオプティマスに力を入れており、これらの事業に関する将来性はかなり期待できると思います。長期的に投資を行いたい方はアリな銘柄ではないでしょうか。

⑥ロイヤル・カリビアン・クルーズ(RCL)
株価:254
上昇率:+77

松本 RCLは、豪華客船を運営している企業です。クルージング旅行は富裕層の娯楽の1つとして人気ですが、業界の中でもRCLは業績が非常にいい。僕自身、クルージング旅行が好きなので、RCLには注目しています。

⑦コストコ(COST)
株価:1000
上昇率:+30

松本 コスパのいいCOSTは、日本だけではなく米国でも人気が高いです。コストコのような小売業の成長率は基本的に一桁%と言われていますが、コストコは成長率が10%台もあり、ライバルと比べて段違いにいい。インフレが進む中、コストコはユーザーを増やしているので、今後も成長が期待できます。

【黒田知道】
 
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