しかも、最近のiPhoneはサイズがデカくなりすぎて、片手でホールドしながら操作できないという大きな欠点がある。したがって、iPhone miniやiPhone SEユーザーを中心に、買い替えを躊躇している人が多いと聞く。かくいう筆者も、iPhone 12 miniを手放せない“ゼッタイ片手派”の一員である。
とはいえ、古いiPhoneを使い続けるのには、困難が伴うのも事実。バッテリーの劣化と並んでよく聞く声が、ストレージの容量不足だ。そこで、iPhoneのストレージの賢い使い方について、少し考えてみたい。
iPhoneのストレージ容量の推移

日本にiPhone 3Gが上陸した2008年、ストレージ容量は8GBと16GBの二択だった。それ以降のiPhoneにおける標準的なストレージ容量(最安値モデル)は、2011年に16GB(iPhone 4s)、2016年に32GB(iPhone 7)、2017年に64GB(iPhone 8)、2021年に128GB(iPhone 13)と増大していった。いずれの場合も、以前の2倍になっている。

しかし現在では、価格高騰と“巨大化”の影響で機種変更を見送らざるを得ないほか、最新のiPhone 16eでも、ストレージ容量はiPhone 13シリーズと同じ128GBに据え置かれている(最安値モデルの場合)。iPhone 16がまったく無能というわけではないが、「今は買い時ではない」と考える根拠の一つにはなるだろう。
それでは、買い替え以外の方法でiPhoneの容量不足を解決するには、どうしたらいいのだろうか。
iCloudを無料で使い倒す
「iPhoneのストレージ容量が足りない」という人に話を聞くと、大きく分けて2種類の原因がある。「写真や動画が多くてキツキツ」というインスタグラマーのパターンと、「アプリがデカくてカツカツ」というゲーマーのパターンだ。まずは、写真・動画が多い場合の対処法から考えてみよう。撮りだめた写真の保存先としては、クラウドストレージ(インターネット経由で使える保存領域)を使う方法が有名で、Appleも自社の「iCloud」を使うよう勧めている。ただしiCloudの場合、無料で使えるのは5GBまでで、そこから先は、50GBプランが月額150円、200GBプランが月額450円……という料金体系になる。こういう課金は、可能な限り避けたいのが人情だ。
ところが、iCloudを無料で使い倒す裏技が実は存在し、SNSでも最近有名になった。iPhoneの写真を「共有アルバム」に移動する……という方法だ。

ただし、大きな写真のサイズは縮小されるほか、動画は720pの低画質で15分までとなるので、あらゆる場面で使えるわけではない。
iCloud以外の選択肢は…
iCloudではなく、15GBまで無料の「Googleストレージ」を使う手もある。専用の「Googleフォト」アプリはiPhoneでも利用でき、画質の設定次第では保存容量を消費せずに使うこともできるので、一部の庶民はこれを神と拝んでいる。しかし、新しく利用を開始する際は注意が必要である。
移したいものが動画であれば、YouTubeに「非公開設定」でアップロードし、端末から削除する……という裏技もある。ただし、非公開設定の動画でも、何か理由(わいせつ、著作権など)があれば削除されてしまうので、自己責任で行うようにしてほしい。
他にも、Amazonプライム会員であれば無料で利用できる「Amazon Photos」(写真のみ無制限)などのサービスが存在するが、使い続けるためにはプライム会費が必要であり、いずれも一長一短といった感じ。

結局のところ、これといった一撃必殺の方法はなくて、どこかで取捨選択をしなければならないわけだ。どうしても長期保存したい写真の場合は、コンビニプリントで印刷するという最終手段もある。
アプリが理由のときは……
写真や動画の場合には、複数の節約方法が存在することがわかった。では、アプリの場合にはどうすべきか。10年くらい前は、iTunesに接続したり、特殊なPC/Mac用ソフトを使ったりしてアプリをバックアップする方法が用いられていたが、最近はそこまでする必要がない。iOSに備わった機能により、自動的に「アプリを取り除く」ことができるようになったからだ。
たとえばゲームの場合、1本あたり数GBのストレージ容量を圧迫するし、それでいて、最後に遊んだのが数ヶ月前……というようなケースも多々ある。自動的に「取り除く」設定にしておけば、そういうアプリがiPhoneのストレージを圧迫することはなくなる。64GBや128GBモデルのユーザーにとっては、特にありがたい機能だ。

とはいえ、注意すべき点はある。アプリに大きなバージョンアップがあった場合や、App Storeでの公開自体が終了してしまった場合は、元通りにできないこともある。また、ビューアーに保存されている電子書籍など、アプリ本体以外のデータサイズが大きい場合も、この方法はあまり有効ではない。

「システムデータ」が邪魔!!
同じiPhoneを長く使っていると、ストレージに「システムデータ」が蓄積されていく。これはネットやアプリの履歴、ストリーミング再生中の動画や音声などが、端末上に保管されていることを示す。中身がわかりにくいので「ゴミじゃん」と思うのもごもっともだが、このデータのおかげでiPhoneをサクサク使えているのも事実であり、適当に付き合っていくしかない。以前のiOSでは、数十GBに及ぶシステムデータを吐き出してユーザーを困らせていたこともあったが、最近は若干マシになった。

なお、システムデータを完全に削除する方法は「初期化」のみとなる。iPhoneに保存されている他のデータも削除されてしまうため、できれば避けたいところだ。
OSアップデートは決戦の時
さて、ケチケチ・カツカツのiPhoneを使っていて一番困るのは、新しいOSが配信された時である。OSアップデートの適用には数GB単位の空き容量が必要になるが、そのスペースを用立てられないと、危険な状態でiPhoneを使うことになってしまう。
とはいえ、肝心のiOS本体のファイルサイズが肥大化傾向だし、並んで、OSのサポート期限というタイムリミットも迫ってくる。
今のiPhoneをいつまで使えるかはケース・バイ・ケースだが、価格の高止まりが今後も続くようならば、お手頃なAndroidスマホへの乗り換えを真剣に検討するべきかもしれない。
<TEXT/ジャンヤー宇都>
【ジャンヤー宇都】
「平成時代の子ども文化」全般を愛するフリーライター。単著に『多摩あるある』と『オタサーの姫 ~オタク過密時代の植生学~』(ともにTOブックス)ほか雑誌・MOOKなどに執筆