その日に初めて出会った人の家に泊めてもらう。そんな毎日を5年近く続けている男がいるのをご存じだろうか?
 それがシュラフ石田さん(34歳)だ。
“令和の泊まりスト”と呼ばれるシュラフさんは、見知らぬ人の家に泊まることを通じて人と人のつながりを体感し、SNSなどで発信を続けている。7月6日に放送された、フジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』でも取り上げられ、話題を呼んだ。

ザ・ノンフィクションで話題「知らない人の家に5年泊まり歩いた...の画像はこちら >>
 以前、このような生活をはじめたきっかけや、日々の生活などについてインタビューさせてもらったのだが、今回はこれまでに巻き込まれたハプニングについて聞いてみた。彼が体験した衝撃の出来事とは——。

気が付くと財布の中身が空っぽに…

 初対面の人の家に泊めてもらうとなると、想定外のことが起ってもおかしくはない。しかし、すでに何日も泊めてもらっている気心の知れた人のところに泊まったときでも、想定外のトラブルに巻き込まれたことがあるそうだ。「まさか、こんな災難に遭うとは思いもしなかったです」と、シュラフさんは語る。

「まだ20代だった頃、知り合いになった同世代の男性Aさんが、仕事の関係で長期間ホテル住まいをしていたんです。ツインの部屋だから好きなだけ泊まってもいいよと言ってくれたので、しばらくの間、お世話になっていました。ところがある日、Aさんがアプリで知り合った女性と飲みに行くことになり、その後に『この部屋を使いたいから、この日だけは外してもらえる?』と言われまして……」

 その人にとって非常に大事な日。もちろんシュラフさんは快諾し、その日の夜はホテルを出て一人でお酒を飲んで過ごしていた。しばらくすると「もう戻って来ても大丈夫ですよ」という連絡が入ったので、ホテルへ戻ることに。

「ホテルに戻ると、Aさんと女性がベッドで眠っていました。
『あ、上手くいったんだな』と思いつつ、僕も酔っぱらっていたので、空いているベッドでそのまま寝たんです。それで、朝になって起きたら女性の姿はすでにありませんでした。用事があって先に帰ったのかな? なんて思ったものの、妙に嫌な予感がして、何気なしに自分の財布を見たら……お金が一銭も無いんです

被害総額はなんと100万円以上

 2万円ほど入っていた財布のお金が消えた。これは、もしかしたら盗まれたかもしれないと思い、すぐにAさんを起こして財布の確認を促したところ、彼のお金は無事であった。

「財布を無造作に置いていた僕にも非があるので……。いい勉強になったと諦めていたのですが、一週間後くらいに知らない番号から電話がかかってきたんです。出てみたらクレジットカード会社からで、『いまから読みあげる買い物をしたか確認したい』と言われました。すると、全く身に覚えのない買い物履歴ばかりだったので『全部心当たりはないです』と答えたら、電話口の人から『これは不正利用の可能性が高い』と。

そのカードはすぐに止めてもらったのですが、次の日に別のカード会社からも電話がかかってきまして……。当時、3枚のカードを持っていたのですが、すべて不正利用されていて被害総額は100万円以上でした

“まさかの不正利用”も判明

 その女性はシュラフさんのクレジットカード番号を控え、ネットで不正に買い物をしていたようだ。カード自体は財布に残されていたので全く気づかず、その結果、被害額も膨れ上がってしまった。さらにその後、カード会社とのやりとりで、衝撃の事実が判明したのである。

「なぜ不正利用だとわかったのか気になったので、カード会社の人に聞いてみたんです。そしたら、不正利用されるときは現金化しやすいものを一気に買う事が多く、そのセキュリティに引っかかったとのこと。
たしかに、履歴を聞いているとブランドモノばかり購入していたのですが、最後の方でまさかの『沖縄旅行』まで申し込んでて……。めっちゃノリノリじゃねーかよ!って、腹が立ちつつも呆れて笑っちゃいました」

台湾で警察に連行されたことも…

ザ・ノンフィクションで話題「知らない人の家に5年泊まり歩いた男」が遭遇した“衝撃のトラブル”。一晩100万円被害の実態とは
インタビューに答えるシュラフ石田さん
 そんなハプニングは日本だけにとどまらない。実は、シュラフ石田さんが一番最初に「今晩泊めてください」のフリップを持って町に立ったのは台湾であった。そんな思い入れもあり、定期的に台湾へ行っているのだが、タイミングの問題で、思わぬトラブルに巻き込まれたこともあったそうだ。

「2020年に台湾に行ったのですが、ちょうど日本では新型コロナウイルスの感染が出始めた頃。そのとき、初対面の人に声をかけて泊めてもらうために掲げていたフリップには『泊めてください 日本人です』と書いていました。それによって『日本人だからコロナを持っているのでは?』みたいに思った人がいたようで、警察に通報されて連行されちゃったんです」

警察署で体温を測ることになったが…

 日本で初めて新型コロナウイルスの感染が確認されたのは2020年1月15日。当時、台湾ではまだ感染者が出ていなかっただけに、大騒ぎになるのも致し方ないだろう。

「警察署でお巡りさんにパスポートを見せて、日本で感染者が出る前に入国したから大丈夫だと思いますって説明したら、なんとなく納得してくれたのですが、念のため熱を測ろうかということになって。でも、その警察署には体温計がなくて、お巡りさんも面倒になったのか、おでこを触って『よし、熱はないな。行け!』みたいな感じで解放されました(笑)」

警察からの解放後はまさかのホテル暮らし

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看護師として働き、女優としても活動している海北麻衣さんの自宅に泊まった際の一コマ。このときのように、一人暮らしの女性の自宅に泊まることもあるようだ
 入国時期を考えると、新型コロナウイルスに感染している可能性は低い。ただ、日本人ということで家主さんを不安にさせるのは本意ではない。そこで、おとなしく宿を取ろうと思った矢先に、まさかの展開が待ち受けていたのだ。

「台湾に入国した初日、自称・浜崎あゆみの非公式ファンクラブ会長を名乗るおじさんと知り合いになり、そのオフ会に参加しました。そして、オフ会が終わった後、そのおじさんの家に泊めてもらったんです。
その方はホテルの支配人をしていて、帰り際に『困ったことがあったらいつでも連絡を下さい』と言ってくれたので、後日試しに連絡してみました。その結果、そこから3ヵ月間タダでホテルに泊まれることになったんです。おかげで、トータル半年ほど台湾で生き延びることができました(笑)」

もっといろんな人に会って話を聞きたい

「たまにハプニングが起ったり、家主さんによってはちょっとしんどいなと感じる時もありますが、この生活をやめようと思ったことは一度もありません」と、きっぱりと言い切るシュラフさん。これからも様々な人と出会い、いろんな話を聞き、ときにトラブルに巻き込まれる日々を過ごしていく。

 そんな彼の生き方に関しては賛否が分かれるかもしれないが、少なくとも誰もがおいそれと真似できるものではない。そして、一般的な生き方をしていたら決して得られない「何か」を得られるのは間違いないだろう。

取材・文/サ行桜井

【サ行桜井】
パチンコ雑誌『パチンコ必勝ガイド』『パチンコオリジナル実戦術』の元編集者。四半世紀ほど勤めた会社を退社しフリーランスに。現在は主にパチンコや競輪の記事を執筆している。
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