若い人にジロジロ見られる?
上田恒雄さん(仮名・51才)は、健康維持とちょっとした移動のためにループを利用しはじめた。「バスに乗るほどじゃないし、歩くには遠いって距離にちょうどいいんですよ。クルマも持ってないし、使い方も覚えれば簡単でした」
しかし、思わぬ偏見の視線を感じる場面が増えたという。
「乗ってるだけで、若い人にジロジロ見られるんです。なんでおっさんが乗ってんだよって目で。ルールを守って乗ってるだけなのに、怒鳴られたりクラクションを鳴らされたこともあります」
「ルールを守らない人」が気になる
交通ルールを守って使っていた上田さんが気になったのは、ルールを守らない他の利用者の姿だ。「赤信号でも関係なく進むし、二段階右折は当然のようにしないでしょ。利用時間がそのまま料金に直結するから、早く移動したいのはわかるんですよ。でも、そういう人らのせいでルールを守ってる人まで迷惑に思われるのが、なんかね」
ループは一部ではマナー違反や事故が問題視されているが、「正しく使っている人まで白い目で見られる」のは、少し違う話だ。
スマホ片手に飛び出してくるケースも
一方で、交通のプロであるタクシー運転手からは、ループユーザーに対する別の視点がある。都内で10年以上タクシー運転手をしている中田勝彦さん(仮名・45才)は、ループの利用者が増えてから、ヒヤリとする場面が明らかに増えたと語る。
「一番怖いのは、信号無視して横から突然飛び出してくるタイプ。しかも、片手でスマホ見てたりするんです」
ある日のこと、都内住宅街の坂道を下っていたところ、路地からループの若者が飛び出してきた。
「完全にノーブレーキで横断ですよ。急ブレーキかけなきゃ、確実にぶつかってました。
「免許制にしたほうがいい」と思う
中田さんは続ける。「最近は自転車感覚で乗ってる人が多いね。だけど、あれはスピードも出るし、止まるのにも反応速度が要るんです。ほとんどバイクですよ。ぶつかってからじゃ遅いし、ヘルメットもつけてないから死亡リスクもあります。出たときから言われてることだけど、免許制にしたほうがいいんじゃないのかなってすごく思いますよ」
便利な発明は新たな文化を生むが、誰もが「自分勝手になっていないか?」という視点は社会に必要だ。スマホに然り、ループに然り。個々のモラルだけに頼る時代ではなくなったのかもしれない。
たとえルール違反でなくても、『空気を読まない行動』が周囲に不快感を与えていることは少なくない。移動は、誰かと空間を共有すること。そんな当たり前のことを、いま一度思い出したい。
<TEXT/山田ぱんつ>