元自動車ディーラー勤務の筆者ですが、街中を走っている車両を見て「バランスはどうだろう」「クルマと共存できるのだろうか」といった疑問を抱いていました。
先日、電動キックボードのシェアリングサービス「LUUP」を利用する機会がありました。そこで、どのような答えを導き出したのか、いちユーザー目線の体験談をお送りします。
「衝撃をダイレクトに感じる」乗り心地
LUUPに乗ったことがない人に乗り心地をどのように説明するべきか……と考えたとき、真っ先に浮かんだのが、小学生の頃に乗っていた足こぎ型のキックボードです。これが流行ったのが、1990年代後半と記憶しています。LUUPが採用している電動キックボードの乗り心地は、25年以上も前に流行ったそれと限りなく近いと感じました。私は当時、親にキックボードを買ってもらえませんでしたが、持っていた同級生に乗せてもらったことを覚えています。
タイヤは小さく硬いゴムのような素材でできていて、乗っていると路面からの衝撃をダイレクトに感じる、ガタガタとした乗り心地です。LUUPの電動キックポードは速度域も早いことから自転車のタイヤと同じような作りとなってはいるものの、タイヤのサイズが折り畳み自転車よりも小さいため、お世辞にも乗り心地が良いとは言えません。
衝撃を吸収する機構(ショックアブソーバー)を備え付けていると目視で確認できましたが、それが機能しているとは思えません。“快適な移動を”、なんて思っていると拍子抜けします。
安定感がなく転倒したら危険
前段でお伝えしたとおり、LUUPのキックボードはタイヤのサイズが小さいため、走行中は不安定です。実走行時間は1時間ほどで乗り慣れていないというのもありますが、走行中に何度かバランスを崩す場面がありました。LUUPは最高速度が原付バイクよりも遅い時速20kmに制限されていますが、プロテクターやヘルメットを装着せずに乗る人が大半かと思うので、転倒したり、クルマやバイクと接触した時は大怪我をするかもしれません。
また、ミラーが付いていないので、後方確認の手段が目視確認のみというのも不安でした。自転車も同じと言われればその通りではありますが、「自転車より安定感がない」と個人的に感じたため、せめて右側だけでもミラーがあればと思いました。
ただ、ニュースなどでLUUPの危険性を知っている人が多いためか、クルマが必要以上に車間距離を開けてくれるなどの配慮を感じました。クルマを運転する側としても事故を起こして面倒なことに巻き込まれたくない、という心理が働いているのかもしれません。
もっと厳しくルールを決めるべき

道路交通法で自転車の乗り方に関するルールが決められているとはいえ、公道では実際に車道の逆走や一時不停止、信号無視といった交通違反を犯している自転車が多いのも事実。
LUUPは借りる前に交通ルールに関するテストで合格しなければならないものの、一度テストをクリアしてしまえば忘れ去られてしまいそうな内容というのも問題なのではないかと思いました。せめて“原付免許だけでも持っている人”という条件さえあれば、交通違反をする人は減るのではないでしょうか。
都市部ではシェアリングサービスなど、安価かつ手軽な移動手段が増えてきていますが、私は電動キックボードと自転車が選べる状況ならば、迷いなく自転車を選ぶでしょう。
自分も周囲も慣れていない電動キックボードより、今まで乗ってきた経験が長い自転車の方が安心できると思っています。もしもこれ以上普及するのなら、専用レーンの整備や徹底したルール管理といったハード面の強化が必須であると感じます。
<取材・文/宇野源一>
【宇野源一】
埼玉県在住の兼業ライター。大学卒業後、大手日系自動車ディーラーに就職。その後、金融業界の業務・教育支援を行う会社に転職し、法人営業に従事しながら、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、AFP資格を取得。X(旧Twitter):@gengen801