現在一児の母である鶴間ゆきえさん(仮名・32歳)も、古い友人を失ったことを嘆く一人。一体なにがあったのでしょうか。
「唯一残った地元の友人」との間に何があったのか
「Aとは中学校で知り合ってからというもの、ずっと仲良くしていました。私は大学入学で上京し、就職もそのまま東京。Aはずっと地元に残っていたのですが、私が帰省するときは必ず会っていましたし、それ以外のなんでもないときでも連絡は取り合っていました。もともと地元での友達は多い方でしたが、地元を離れて年月が経ったからか、アラサー以降も変わらない関係でいられたのはAだけだったんです」Aさんは気が強く、ちょっとわがままな性格だとか。けれど、その歯に衣着せないサッパリしたところが心地よく、Aさんが結婚してからも良好な関係を築いていたそうです。
帰省するも、とんぼ返りを強いられる
Aさんの結婚から2年後に、ゆきえさんもめでたくパートナーと結ばれます。「ただ、コロナウイルスの5類移行前の婚姻となったため、結婚式は挙げられなくて。Aにも電話での報告のみになってしまったのですが、『おめでとう! 次に帰省したときはお祝いもしたいし、絶対に絶対に会おうね』と言ってくれました。心から祝福してくれているのが伝わってきて、うれしかったですね」
こうして静かに幕を開けたかと思った鶴間さんの新婚生活でしたが、驚くべきスピードで妊娠! そして同時期、コロナウイルスも5類に移され、世間の警戒意識も瞬く間に緩んでいきました。
「せっかくだし、親に直接伝えたいなと思って、帰省の予定を立てんです。けれど、新幹線に乗ったタイミングからつわりが悪化してしまって……。結局そのときの帰省は、実家からまったく動けないまま終わってしまいました。
Aに連絡しないと、とは思っていたものの、安定期にはまだ入ってなかったんです。友人とはいえ、妊娠報告はもう少し落ち着いてからのほうがいいじゃないですか。なので今回は体調的にも無理だしと、連絡しないまま東京に戻ることにしたんです」
インスタの投稿に反応が。返信してみたら…
帰省を終え、「さらば実家! ほとんど家にいたけど、ゆっくり過ごさせてもらいました」とインスタのストーリーに投稿したゆきえさん。「その投稿に『えー、帰ってたんだ? なんで連絡くれなかったの?』と友人Aから反応がありました。これは私が野暮だったなと。彼女からしたら、なんで連絡してくれないのって思ってしまいますよね」
ゆきえさんは、Aさんへの信頼から、帰省中に会えなかった理由とともに妊娠の報告をすることにしました。
予想に反し思わぬ内容の返信が。その心は?
もちろん、ゆきえさんはAさんに祝ってもらえることを確信していました。ところが……。「返ってきた返信は、『へーそうなんだ、まあそんな気がしたわ。体に気をつけてねーバイバイ』と冷たいものでした。
ホルモンバランスが大きく乱れていることもあってか、ゆきえさんは連日涙が止まらなかったそうです。しばらくは夢にさえAさんがたびたび出てくる始末で、すっかりナイーブになってしまったのだとか。
「数カ月後、Aから『久しぶり~』と急に連絡が来たんです。やっと心身の調子が落ち着いてきたところだったのですが、一気に悲しかった気持ちが蘇ってしまって……。気まずいだけでなく、またよくわからないところで癇に障ることを言ってしまわないかと身構えながら、連絡を返していました。すると突如、あの不自然な返信の真意について語り出したんです。当時は仕事で忙殺されていた上に、夫と妊活のことで揉め、精神的に参ってしまっていたとのことでした」
結局、関係は途絶えてしまった
そんな最中に、鶴間さんからの誘いがなかったばかりか、結婚したてでの妊娠報告を受け、八つ当たりしてしまったもよう。「Aからは『あの時はごめんね。あらためてになるけど、おめでとう! 今度遊びに行くね!』と言われたんですが、どうしても気が進まず……。当たり障りない返事をして連絡を終えました」
以来、産後からしばらく経った今に至ってもなお、Aさんとは会っていないと話します。
「今になって考えると、遊ぶ約束を説明なくふいにしたうえに、その理由がまさに自分が今悩んでいる妊娠絡みだったと判明しては、余裕がなくなってしまっても仕方がないよなあ、と思います。
だからこそ、配慮ないしデリカシーは、長年の付き合いだろうが、過敏なくらい持っているべきだったのでしょう。大きな話題であればあるほど。とはいえ、自分がどんな状況であっても、大切な人たちの幸せはまず素直に喜べる人間でありたいですけどね」
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自省を交えつつも、まだ割り切れない気持ちがあることが窺える鶴間さん。長い人生の中でもトップクラスの喜びを、一緒に喜んでもらえなかったショックは大きかったと当時を振り返ります。
ただ、良くも悪くも人生の転機はこれからも訪れ続けるもの。この先、また2人の縁が交差する日が来る可能性も、また十二分にあるはずです。
<TEXT/萩ゆう>
【萩ゆう】
住むところは中国地方や関西など、全国各地を転々と暮らすWebライター。温泉メディア、女性メディアなどで執筆中。特技はマラソンでフルマラソン3時間ギリの記録をもつ