その後、事務所移籍とともに「月島花」と改名していますが、月島花時代になんと「海外出稼ぎ売春」の経験があることが判明。
まだ海外売春の話が世の中に広がる前の時代の、貴重な経験をたっぷり語ってもらいました。
「セクシー女優の肩書があったら稼げるよ!」
――川奈さんは現役時代、セクシー女優のお仕事が減ってきたのもあって、マカオのキャバクラに働きに行った経験がある、とお聞きしたんですが。川奈 桃果(以下 川奈):そうなんです。当時は貯金もできないタイプで、浪費癖もあったのですごくお金がほしくて。ブローカーって言うんですかね、「セクシー女優の肩書があったら稼げるよ!」と言われて「じゃあ、行ってみようかな!」って。
――マカオのキャバクラなら、確かに稼げそうではありますよね。やっぱりお店も豪華なんですか?
川奈:そうですね、豪華でした。で、女の子がお店でズラーッと並んで、それでお客さんから選ばれて……。
――ちょ、ちょっと待ってください。それってキャバクラじゃなくて、海外売春なんじゃないですか?
川奈:そうだったんです。募集文には「キャバクラ」って書いてあったんですけどね。
指名してきた男の怪しすぎる挙動

川奈:2020年くらいですから、時期的にはそうだと思います。
――どんなシステムだったんですか?
川奈:働いたのは、カジノが併設されたタイプのキャバクラでした。まずはお店で男性たちから女の子が選ばれて、そのあとはもう朝までその人と一緒に過ごすんです。お店から出てもOK。
私はグループで来た男性のひとりに指名されて、ほかに指名された女の子と一緒に「食事に行こう!」ってほかのお店に連れていかれました。
そのお店も豪華なんですけど、それ以上にすごかったのが、白い粉が入ったでっかいアタッシュケースが置いてあって。私を指名したお兄さんがいろいろ取引している間、私はずっとその横に座っていたんです。
――もう、映画の世界ですね。
川奈:私も「これはヤバすぎる」って思って。翌日、逃げ出したんですけどマカオから日本への直行便は朝の10時の1本しかなくて、それに間に合わなかったんです。
仕方がないから、香港まで台風で大荒れの海を船で渡って、そこから日本に逃げ帰ってきました。
女性が逃げられないようにする悪質な仕組み

川奈:危ないところではありましたね。最初「お金はこっちで稼げるからあんまりいらない、5万円くらい持ってきて」って言われていて。
でも、マカオに入ったら「このお店でドレスや靴を買って。持ってきたドレス、こんなのじゃ働けない」って、持ってきたお金を全部使わされるんです。それでみんな逃げられなくなっちゃう。
私はへそくりで20万円持っていて、パスポートも渡しませんでした。だから逃げられたんです。素直に5万円だけ持っていったり、パスポートを渡したりしていたらアウトでしたね(笑)。
――いや、笑えないですよ。無事でよかったです。もう少しくわしく聞きたいんですが、川奈さん以外に日本人の女性はいました?
川奈:いや、そのお店は私だけでしたね。あとは中国とか、韓国とか、タイの女の子がほとんどでした。
タイプもいろいろで、ルックスが良くて高身長のモデルさんみたいな子もいれば、親しみやすい感じの子もいて、それぞれ金額が分かれてるんです。日本人好きなお客さんも多いので、需要があるとは言われましたね。
――川奈さんはいくらだったんですかね?
川奈:そこは聞いてないですね。逃げちゃったので、お金ももらえませんでしたし。でも、ある意味いい経験をしたとは思いますよ。
店内での待遇は最悪。料理はポリバケツで提供

川奈:うーん、お店での扱いは良くなかったですね。すごかったのが、お店で出される食事です。青いポリバケツに麺料理みたいなのが入っていて、女の子たちがバケツからひしゃくで好きなだけすくって食べるんですよ(笑)。
どんな美人の女の子も一緒で、みんな好き勝手にすくって、すごい勢いで食べだすんです。出遅れてしまった私の分の料理は、残っていませんでした(笑)。
――お店は豪華なのに、食事はそんな感じなんですね(笑)。
川奈:あと、トイレも使うときに、受付で「トイレットペーパーください」って言うと30㎝くらいもらえる。
トイレに置いておくと盗まれるからって理由らしいんですけど、大きい方だったらこれじゃ足りないじゃんって(笑)。
初日の豪華なホテルに騙される

川奈:そうです。「豪華なホテルに泊まれて、仕事もきらびやか。ちょっとしたサービスでお金が稼げます」みたいな宣伝文句で女の子を集めていて。それにまんまとひっかかりました。
実際、初日は豪華なホテルに泊まって「ご飯もおいしいし、ホテルもすごい!」って感じだったんですけど、仕事が始まったらポリバケツに麺(笑)。お仕事内容的にも、大丈夫な子は大丈夫なんでしょうけど、私はちょっと受け入れられませんでした。
男性から「買われた」感じがすごいんですよ。男性も「お前のことを買ったんだから、言うことは全部聞いて当たり前」みたいな態度なので。
無事帰国したのに1円も貰えない場合も

川奈:1週間くらいで200万円は持って帰れるって。しかもチップ文化だから、チップももらえばもっと稼げるかもしれないよ、と言われましたね。私も「そんなに稼げるのか、ワクワク!」みたいに考えてました。
――たしかに、金額的にはちょっと魅力的ではありますね。
川奈:でも海外のお金だから、あとから日本に送金するって形で。だから、もらえる子はもらえるけど、騙されて1円ももらえない可能性もあったらしいです。当時はそんなこと、全然考えていませんでしたけど。
今はもっといろいろなルートがある、と聞きますけど、1回経験した人間としては、もう行くもんかっていうのが正直な気持ちです。
――下手したら、行方不明になっていてもおかしくないですしね。
川奈:はい。だからほかの女の子にも、絶対にオススメはしないです。「セクシー女優だと稼げる」なんて言われてますけど、なにが起こるかわからないですから。もちろんセクシー女優以外の女の子にも、海外出稼ぎ売春に行くのはやめましょうと伝えたいです!
<取材・文/蒼樹リュウスケ、写真/林紘輝>
【蒼樹リュウスケ】
単純に「本が好きだから」との理由で出版社に入社。雑誌制作をメインに仕事を続け、なんとなくフリーライターとして独立。「なんか面白ければ、それで良し」をモットーに、興味を持ったことを取材して記事にしながら人生を楽しむタイプのおじさんライター