インターネットでも話題のなか卯の親子丼を食べたい……。いつしか、なか卯への憧れのような気持ちを抱くようになっていた。
幸い、編集者とライターは仕事でさまざまな場所に行くことができる。そこで、取材などで普段使わない駅を利用した際に、なか卯を見つけると積極的に入店していた。
なか卯との距離感はいつも不安定
確かに親子丼は美味しい。「外食チェーンの味」という偏見は捨てたほうがいいくらいで、定食屋の味に引けを取らない。それが1000円以下で食べられるのだから、これは「お買い得」と言うしかない。ただ、生活圏に店舗がない以上、なか卯には年に1回行ければいいほうだ。そうなると、メニューに挑戦することができず、これまでは毎回親子丼しか注文することができなかった。
それが、今では編集部に足を運ぶたびになか卯を食べられるのだ……。しかし、いざ近くにあると思ってしまうと、悲しいかな、それはそれで足が遠のく。「今日は絶対になか卯が食べたいんだ!」という気持ちが最高潮になって、ようやく行く気になるのだ。
そうすると、普段行かない分、貧乏根性と止まらない食欲が、狂ったような組み合わせを生み出してしまう。
今宵のディナーも凶悪な組み合わせに

一方、なか卯は牛丼が主役ではない。親子丼、うどん、海鮮丼など、バリエーションが豊富だ。
というわけで、それらを全部頼んでみよう。ご飯大盛りのとろたま親子丼(630円)、大の月見うどん(520円)、まぐろのたたき丼+こだわり卵(890円)で合計2040円。丼2つでも多いのに、3つはさすがに頼みすぎだ。さすがに、知り合いには見られたくないので、人が少ない時間帯にしか行けない。
サイドメニューを充実させるのは愚策
子どもの頃、うどん屋で月見うどんと親子丼を一緒に食べようとしたが、小学生の胃袋では無理で、それぞれ半分ずつ食べたあと、親にバトンタッチした悔しい記憶がある。同席していた叔父がドン引きしていた。今は30代、食欲は抑えきれない。あの頃の自分とは違う。親子丼もうどんも、まぐろのたたき丼も、残さずに全部食べてやる。
つまり、2000円分食べるために、無理しているわけではないということを理解してほしい。
ちなみに、丼もの屋でサイドメニューを充実させるという注文は愚策だ。というのも、それぞれ丼の「頭」になるため、大量の米が必要になる。だったら、最初から丼にしてしまえば米問題は解決だ。国の米はますます減っていく。
相当な贅沢感が味わえる「1個100円の卵」

そして、親子丼に卵黄を乗せるという「エウレカ」はいつから始まったのだろうか? 濃厚さが倍増し、100円追加するだけで相当な贅沢感がある。
そもそも、100円で卵をトッピングするのはコストパフォーマンス的には最悪だ。スーパーなら6個入りで200円程度なのに、外食だと1個で100円もする。「1年で計算すると~」みたいな発想は嫌いなので深くは考えないが、トッピングするたびに「身分相応な金の使い方」をしている気になる。

「まぐろのたたき丼」の正解は…

コールドチェーンのまぐろには限界がある。それでも美味いが、少しでも疑問を抱かないように、卵でごまかすのが良い。
もちろん、まぐろと生卵の組み合わせ自体が最高だ。次点は山芋のとろろかけ。ということで、親子丼と月見うどんで使わなかった卵白を、まぐろのたたき丼にかけよう。
メレンゲの要領で少量ずつ泡立ててご飯に乗せる。ふわふわのまぐろのたたきに、さらに別の食感が加わり、より重厚な味わいになる。
月見うどんにも卵白は合うが、提供時の温度では卵白は固まらない。それなら全部まぐろにかけて、新感覚のTKGのように楽しむのがベストだと思う。
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大量の炭水化物をかき込み、職場へ戻る。しかし、これだけ食べた後では仕事にならない。そのまま糖質スパイクで眠気に襲われ、会社の仮眠室で横になる。そして、目が覚めた時には終電が終わっている……。
こんな生活が健康的でないことは理解しつつも、また眠りにつくのであった。
【今回の摂取カロリー:2219kcal】
<TEXT/千駄木雄大>
【千駄木雄大】
編集者/ライター。1993年、福岡県生まれ。出版社に勤務する傍ら、「ARBAN」や「ギター・マガジン」(リットーミュージック)などで執筆活動中。