なぜ東京は最後まで人が減らないのか
不動産投資を行っている私には、よく「こんなにワンルームマンションを持っていて大丈夫なの?」という指摘が投げかけられます。その質問には「人口減少社会でワンルームマンションも余っているから、借り手が付かず売れないのでは? そもそも人口が減っているのだから、これからの不動産投資は難しいはず」という疑問もあるようです。ただ、私自身は日本が人口減少社会に陥っていても、「人口が最後まで減らないのは東京」だと考えています。
そもそも、日本の人口減少は「全国津々浦々、満遍なく人が減る」と考えていたらそれは誤りでしょう。当然のごとく不便なところから人は去り、便利な過ごしやすい場所に集まってくるはず。ですから、人口減少にも濃淡が発生するのです。
山間部や半島部など利便性の低いエリアからはどんどん人が減って行くでしょうが、反対に都市部の駅近で徒歩5~7分圏内のエリアは、その利便性が故に人が集まっています。おそらく人の性として考えたら、皆さんにも想定できるのではないでしょうか。実際に東京23区内の人口は増え続けていますし、2025年の公示地価発表を見ても東京23区の地価は4年連続で値上がりしています。
インフラが整い多くの人が暮らす場所は、商売も成り立ちやすいため飲食店や小売店も多くなります。
「土地付きの1棟買いは効率がいい」は本当?
もう一つ、私がほとんど区分所有で37戸も持っていることに対して「なぜ土地も付いている賃貸マンションやビルを1棟買いしないのか?」という疑問を持つ方もいるようです。それは、まず私が土地や場所自体に価値を感じているのではなく、その土地や場所の「利用」にしか価値を見出していないためです。
仮にどれだけの土地を所有していようが、その土地が使われなかったら価値はないと捉えています。土地はあくまで単なる地面に過ぎません。その上に「何を乗せるか」によって、その価値は変わります。大事なのは「土地」ではなく、上に建つ「建物」。ですから「土地所有の権利」が付いてくるかはあまり重要ではないのです。
この考えは、私が「売却」によるキャピタルゲインを目標・目的にしていない点に大きく関わってきます。そもそも、私自身は物件を売却して値上がりの差益を狙う投資家ではありません。物件を購入する前に「このエリアは値上がりするか?」ということはほとんど検討しないのです。
現在のマーケットでは「建物は劣化して価値は無くなる」「土地の価値こそが担保価値」と一般的には言われています。ですから、売却を考えた場合、土地の値段が売却額に大きく影響してきます。よって、土地の持ち分がほとんどない「区分」での不動産所有では、売却を考えたときに弱いと見なされるケースも多々あります。
しかし、月々のキャッシュフローがプラスの状態で投資を進めていけば、いつかは投下資金を回収できます。回収しきってしまえば売却額が最悪0円でも構わなくなるため、「土地が付いているか」は関係なくなるのです。大事なことは「キャッシュフローを増やすこと」と考えている私は、借地権付きの物件でも「期限が決まっているもの」でなければ、気にせず購入を検討します。
また、1棟を購入した際にかかる費用は5千万円以上~数億円かかります。都内のワンルームマンションの場合には1000万円弱~数千万円程度の金額感です。もし私の資金が莫大であれば、土地付き物件を敢えて避けているわけではないので、1棟を購入する選択肢もあるでしょう。しかし、残念ながらそれほどの資金力はまだないので、毎年数億円を投下して購入することはできません。
すると購入時のタイミングに左右されることになります。
築30~40年物件は借り手がつかないはウソ
さらには「築年数が高くなれば借り手がつかないのでは?」という質問をもらうこともあります。この疑問に対しては明確に「築年数が30~40年以上と築古であったとしても、利便性が良くて管理がしっかりしていれば借り手は付く」と明言しておきます。ひと頃前の「築30年の物件」というと確かにボロボロな印象があったかもしれませんが、昨今のマンションは築30年超えでも管理がしっかりしていれば、問題なく住めることは覚えておいていいと思います。そもそも築年数が経過しているマンションで、もっとも注意しなければいけないことは「借り手がつかない」ではなく「管理費や修繕積立金が高額になる」ことです。
当然、経年によってあちこちが痛んでくるため、適切な補修を行うための費用が必要になります。安すぎる管理費や修繕費で設定すると、修繕を行うための資金が不足します。結果、適切な修繕が行われず、やがてボロボロになって借り手がつかない物件になります。
一方で安心安全を求めて過度に修繕を行うと、当然にお金が必要となってくるため管理費や修繕積立金は上がっていきます。結果、家賃とそれほど変わらない管理費や修繕積立金を支払っている物件も存在しています。
ですので、適正な修繕を行いつつ管理費・修繕積立金が上がらないように節約をするという、バランスを取りながら運営していくことが重要なのです。
<構成/上野 智(まてい社)>
【村野博基】
1976年生まれ。慶應義塾大学経済学部を卒業後、大手通信会社に勤務。社会人になると同時期に投資に目覚め、外国債・新規上場株式など金融投資を始める。その投資の担保として不動産に着目し、やがて不動産が投資商品として有効であることに気づき、以後、積極的に不動産投資を始める。東京23区のワンルーム中古市場で不動産投資を展開し、2019年に20年間勤めた会社をアーリーリタイア。現在、自身の所有する会社を経営しつつ、東京23区のうち19区に計38戸の物件を所有。さらにマンション管理組合事業など不動産投資に関連して多方面で活躍する。著書に『43歳で「FIRE」を実現したボクの“無敵"不動産投資法』(アーク出版)