―[FIRE投資家が教える「お金・投資」の本質]―

東京23区の中古ワンルームマンション中心に不動産投資を展開。現在、37戸の物件を所有し、時価資産額約10億円、年間家賃収入約4000万円の個人投資家・村野博基氏。
「不動産は管理で買え!」を実践し、所有物件のうち27棟で管理組合役員(うち11棟は理事長)を務める村野氏が、「うちのマンションの管理は駄目かも?」と思ったときに、やるべきことを伝授します。
「管理がヤバい」マンションの3パターンと対処法。築30年超え...の画像はこちら >>

「マンションがボロボロだ」と気づいたときにできること

不動産投資でも自分で住む場合にも言えることですが、築年数が20年以上とそれなりに年数が経っているマンションでは「管理」の良し悪しが本当に重要です。管理が駄目であると物件はどんどんボロボロになっていきます。

外壁の塗装やタイルの補修を行っていなければ、崩れ落ちてマンションの下を歩く人に怪我をさせる可能性もあります。上下水道の給水管、排水管の工事ができなければ、年中どこかの部屋で水漏れが発生するでしょう。特に排水管からの漏水の場合であると汚水が漏れてきます。階下を汚したり悪臭が発生するなど、快適な生活とは程遠い環境になってしまいます。また、見落とされがちですが、玄関や窓サッシも一般的には共用部です。補修ができなければ、ひび割れなどで雨水が浸食し隙間から漏れ出しかねません。

管理は非常に重要ですから、中古の物件の購入する前には「重要事項調査報告書」を手に入れて確認しましょう。これまでの修繕の記録を確認したり、管理組合に借入がないかを確認するのはマストで心がけたいところ。ポイントは「必要な工事をしっかり行っているか」と「金融機関から借入をして工事をしていないか」です。借入があるとすれば、「積立修繕費が上がる予兆」と私は捉えています。


しかし、物件の“購入後”に「管理がヤバい」と気がついたケースも出てくるでしょう。「管理がヤバイ」には大きく分けてヒト(問題住人の存在)・モノ(建物の状況)・カネ(管理組合の財政)の3パターンがあります。実際に水漏れなど被害に遭い、やり取りをするなかで、「やっぱり築30~40年超えのマンションはトラブルがある!?」と思う方も多いのではないでしょうか。

管理組合に携わることの重要性

そんな方に向けて私は「物件を所有しているならば、管理組合に参加して管理に携わろう」と声を大にして言いたいのです。管理に前向きな方、積極的な方が物件の維持管理に携われば、必要な工事や修繕をしっかり行うことにつながり、物件の資産価値の維持・向上も可能です。

とはいえ、普段の生活や仕事においては、管理組合の活動にはなかなか触れる機会はありません。ですから「いきなり『管理に携わろう』と言われても……。何をやったらいいのかわからない」となるのが当然かと思います。そんな方はまず管理組合の「収入」と「支出」をみてください。収入である管理費・修繕積立金が適切に設定されているか、支出であるマンション維持のための必要な修繕工事が行われているか、を確認するのです。

マンションの「収入」はどれぐらいが適切なのか、については個別の物件の事情ごとによって異なるものですが……。完全に私個人の肌感覚では、管理費は1平米あたり月350円以下、修繕積立金であれば1平米あたり月250円以下であれば将来的に不足する可能性が高いように思います。20㎡の1Rであれば管理費が月7000円、修繕積立金は月5000円ほどが一つの基準額です。


もちろん、物件ごとに事情は異なってきます。「屋上に携帯電話の基地局が設置」「平置きの駐車場がある」などで管理費・修繕積立金以外の収入があったり、「エレベーターが未設置」で保守費用がかからない、といった個別事情によっても、必要な管理費や積立修繕費の額は変わります。

マンションの「支出」にも気を配るべし

管理費や修繕積立金の額がそれなりに高く設定されているにも関わらず、お金が不足し必要な工事ができない……というケースも散見されます。これは何かしらの理由で管理組合からの「支出」が多いのが要因です。

実際によくあるケースは……。リスクを恐れ、安心安全を過度に追求した結果、まだ全然問題の無さそうな外壁の補修工事を実施したり、上下水道を補修ではなく全交換したり、まだ故障の余地もまったく見られないのに「部品が無くなるから」とエレベーターの更新工事を言われるがままに依頼したり……など、列挙すればキリがありません。

「マンションの安心安全のため」を金科玉条にしたら、支出は青天井で増えていきます。しかし絶対に忘れてはいけないのは「工事は当然タダではなく、所有者から集めたお金を使っている」ということ、そして「お金は使えば無くなる」という事実です。安心安全という「見えないもの」を得るために、何かを「犠牲にしている」という観点は忘れてはいけません。そして、今あるお金を使えば、のちのち「何かの工事ができなくなること」も覚えておきたいところ。限りある資金をもとに「どの工事を優先するのか、何を諦めるのか」を、しっかり管理組合内で議論したいところです。

そもそも他人から集めたお金を、何にどう使うかを判断するかはとても難しいもの。
しかし、「お金の使い方次第で将来の物件価値が大きく変わってくる」という自覚を持ち支出を考えるマンションは、築年数が古くてもきちんと管理されているように感じています。

マンションの支出はさまざまな方法で削減ができるもの。「分からない」からといって、他人任せにしていたら「建物はボロボロになる」か「管理組合のお金がなくなるか」のどちらかです。物件がそんな状態になっても泣くのはあなた自身です。「自分の生活や自分の資産を守ることを他人任せにしてもよい」という考えは、なかなかのギャンブラー気質ではないでしょうか。

個々のマンションの収入や支出の状況に応じて、得られる安心と失うお金を天秤にかけながら必要な工事を行っていくこと。ときには、お金が貯まるまで工事を待つのも物件を管理していくためには必要です。不動産投資に限らず、マンションの区分所有者のなかで管理に前向きな方が増えていき、より良い物件が増えていくことを願っています。

構成/上野 智(まてい社)

―[FIRE投資家が教える「お金・投資」の本質]―

【村野博基】
1976年生まれ。慶應義塾大学経済学部を卒業後、大手通信会社に勤務。社会人になると同時期に投資に目覚め、外国債・新規上場株式など金融投資を始める。その投資の担保として不動産に着目し、やがて不動産が投資商品として有効であることに気づき、以後、積極的に不動産投資を始める。
東京23区のワンルーム中古市場で不動産投資を展開し、2019年に20年間勤めた会社をアーリーリタイア。現在、自身の所有する会社を経営しつつ、東京23区のうち19区に計38戸の物件を所有。さらにマンション管理組合事業など不動産投資に関連して多方面で活躍する。著書に『43歳で「FIRE」を実現したボクの“無敵"不動産投資法』(アーク出版)
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