インバウンド向けに転売! 中国系業者も活動活発化
全国的に花火大会のシーズンに突入する中、有料席や観覧チケットの転売が横行している。日本三大花火の一つで、国内屈指の規模を誇る長岡まつり大花火大会のチケットが多数、チケット売買サイトで販売されていることが報じられており、なかには定価の4倍のケースもあるという。

しかし、転売されているのは長岡花火だけではなかった。隅田川花火大会に神宮外苑花火大会など、複数のチケットが確認できた。神宮花火ではなんと定価1万円のチケットが20万円で販売されていた。
Xやメルカリでも「急用で行けなくなった」と言い訳つきで転売しているアカウントが多数あるが、実態は営利目的の売買が大半のようだ。
国内アプリのみならず中国系アプリでも投稿多数

「定価で譲ってあげた長岡花火のチケットが、フリマアプリで売られているのを知りました。定価5000円のチケットがなんと2万円。信頼していた友人だったので、とても残念な気持ちになりました」
一方、転売の実態を調べていく中で、中国系業者による活発な動きも明らかになってきた。「小紅書」(中国版インスタグラム)や「閑魚」(中国フリマアプリ)で検索すると出るわ、出るわ。
全国各地のチケットが大量に出品・再流通販売されていた。その規模は、国内売買サイトをはるかに上回る勢いだ。
長岡花火の場合、定価3万2000円のマス席が約16万~18万円と5~6倍の値段で出品されているほか、他の花火大会も2~5倍で売られていた(記事末尾)。
無料席の場所取りは2人分で1万円!

投稿主に素性を聞くと、「学生だ」と返事が。副業的に転売行為を行っているようだ。
「彼らは今夏に日本を訪れる中国人観光客に向けて高値で転売しているんです」と言うのは中国事情に詳しいライターの廣瀬大介氏だ。

チケットに限らず、売買の対象は花火大会の周縁にも及んでいる。小紅書で「葛飾花火大会の場所取りします」と投稿していた業者にDMを送ると、「無料席のスペースを確保する」と言う。
続けて「相席なら1人分で3600円、単独スペースは2人分1万円」と説明があった。
「中国SNSでは、会場周辺の駐車場を確保する業者から、会場周辺のホテル予約枠を転売している者、送迎を請け負う白タクまで出てきています。花火大会は大きな転売ビジネスになっています」(廣瀬氏)
主催者は当日の名義確認はしない

「転売は容認しておらず、警察と連携して対策を強化し、売買サイトを巡回してチェックしています。当日はランダムで名義確認を行い、一致していない場合は退場を促す対策を実施する予定ですが、全員に名義確認をするわけではない」(長岡花火財団)
「事前にフリマサイトなどを巡回し、転売が確実に判明したチケットだけ使用できないようにしています。ただ番号を伏せて出品されている場合、特定できないので対応できません。当日、チケットの名義確認は実施しない予定です」(隅田川花火大会実行委員会)
コロナ、運営費、SNSと複数の要因が絡み合う

「コロナ禍の3年間で、人流を抑制する目的から観覧席の有料化が一気に進みました。一方、SNSの普及で情報が広まりやすくなり、想定を大きく上回る観覧者が集まるようになった。結果、警備員の増員など安全対策費が大幅に膨らんでいます。さらに昨今の急激な物価高騰もあり、従来の予算組みでは運営費を賄いきれず、個人客にも負担をお願いせざるを得ない状況になりました。こうした背景から全国的に人気の高い花火大会は、営利目的で高額転売されるケースが急増しています」
安斎氏はチケット争奪戦が熾烈を極めるなか、従来の対策だけでは限界があると説く。
「フリマサイトでの出品規制も必要ですが、何より『転売チケットを買わない』という意識が大前提。
転売ヤーに乗っ取られた後ではもう遅いのだ。
中国SNSでの転売が確認された花火大会とその値上げ率
•葛飾納涼花火大会(東京都):1.5~2倍•桑名花火大会(三重県):2.5倍
•隅田川花火大会(東京都):2~3倍
•神宮外苑花火大会(東京都):2~3.5倍
•ふくろい遠洲の花火(静岡県):2倍
•豊田おいでんまつり花火大会(愛知県):1.5~2倍
•長岡まつり大花火大会(新潟県):3~5倍
•江戸川区花火大会(東京都):1.5~3倍
•いたばし花火大会(東京都):2~4倍
•幕張ビーチ花火フェスタ(千葉県):2~3倍
•諏訪湖の花火(長野県):1.5~2倍
•赤川花火大会(山形県):1.5~2倍
•大曲の花火(秋田県):2~4倍
※編集部調べ
取材・文/週刊SPA!編集部
―[花火大会[乗っ取り転売ヤー]の実態]―