YouTubeチャンネル登録者数180万人を突破した「バキ童チャンネル」。
唯一無二の企画とキャラクターを活かした動画が支持される一方で、中心メンバーのお笑いコンビ、春とヒコーキが出会った青山学院大学・落語研究会についてのエピソード動画も強い人気を集めている。
そんな「青学落研の話」を、チャンネル出演者であり、青学落研出身者であり、春とヒコーキの学生時代からの友人でもある芸人・町田が振り返る。
第15回は、青学落研に数少ないながら存在していた女子部員の話。
青学落研の女子部員
女子部員はいかに我が青学落研での学生生活を送ることになるのか。気になる方もいるであろう。Kさんという女子部員がいた。
Kさんは私や土岡の同学年、ぐんぴぃのひとつ下の学年であった。
Kさんの外見はぐんぴぃにほんのりと似ていた。とても明るく、周囲の人間をいつも楽しませる大変に愉快な性格。
入部当初からお喋りも非常に達者で落語の覚えもよく、落研にいち早く馴染んでいた。
男子校的な空気感の、男だけがきゃいきゃいとはしゃいでいる中で、よくぞ落研に所属し続けてくれたと思う。
Kさんはいつも首に銀のネックレスをつけていた。
ある時、先輩部員の一人がその銀のネックレスはどうしたのと問うたところ、Kさんはこう答えた。
「このネックレスを傷口に当てると治りが早くなるんです」
「それって、Kさんはその何かしらの…その…」
Kさんは恥ずかしそうに早口で
「シュキョデスッ」
と答えた。
Kさんはとある宗教のご家庭の育ちだそうで、そこの青年部の幹部をされていたそうだ。
それ以後、Kさんという存在に厚みを感じるようになった。
喋りの達者さ、面白を表現する能力、そして人を惹きつける魅力。Kさんはどれも兼ね備えていて、素晴らしい落語をやっていくものだと思っていた。
引退時に打ち明けてくれたこと
しかし、彼氏ができて以降、Kさんはあまり青学落研への活動に積極的ではなくなってしまった。それは当然のことだろう。一度きりのキャンパスライフ、掃き溜めのような我々と過ごすより、恋人との時間のほうがどれだけ有意義か。
それでもなんだかんだKさんはちょこちょこ落研に遊びに来てくれて、最後の引退の時には、
「本当は皆さんを宗教に勧誘しようと思っていたのですが、皆さんがとてもいい人たちだったので勧誘しなかったです」
と打ち明けてくれた。
そうだったのかKさん。こうして特にKさんの宗教に勧誘されることもなく、我々とKさんは程よい距離感のまま大学を卒業することとなった。
それ以後、我々とKさんは疎遠になった。
Kさんと銀のネックレス
しかし、昨年久しぶりにKさんと我々が会う機会があった。私にいたってはおおよそ10年ぶり。Kさんは結婚し、幸せな家庭を築いていた。お子さんの映像も見させてもらった。とても可愛らしい子だった。
Kさんは母になり、宗教を実質的には辞めたと話していた。
「自分の子どもを持つようになって、あの銀のネックレスじゃ傷は治らないなってそう思ったんだよね。私の子は私が何とかしなきゃって」
ほほう、と思った。
Kさんはあまり落研のことをそんなに覚えていないと言っていた。
おそらく、Kさんの人生に青学落研は影響を及ぼさなかったのだろう。
これが青学落研の女子部員。
いつまでも大学時代の話を延々としている私たちが異常なのであろう。
―[振り返れば青学落研]―
【町田】
ぐんぴぃの友人。芸人としての活動もしている。