―[メンズファッションバイヤーMB]―

 メンズファッションバイヤー&ブロガーのMBです。洋服の買いつけの傍ら、「男のおしゃれ」についても執筆しています。
連載第541回をよろしくお願いします。
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「おじさん化」しないためにやるべきこと

 十年一昔(じゅうねんひとむかし)とはよく言ったもの。10年前にはここまでスマホは便利じゃなかったし、AIのAの字も感じられなかった。「仮想通貨?」「なにそれ?」「おいしいの?」てなもんです。

 そして、ファッションの世界も刻一刻と時代が変わってきています。今回は読者の『おじさん化』を止めるために、10年で変わったメンズファッションの常識をお届けします。

 いつまでも『セカンドバッグ』持ってないで、価値観アップデートしてみてください!!

メンズファッションの新常識①「財布の形」

・LOUIS VUITTON 二つ折り財布  16万5000円

「古くて、ダサいおじさん」は知らない“ファッションの新常識”10選
LOUIS VUITTON 二つ折り財布
 財布の形は10年で明確に変わりました。10年前ルイヴィトンやグッチなどメンズの売れ筋財布はすべて「長財布」だったはず。ブランド物の長財布をパンツのバックポケットに入れてチラ見せさせる文化……ありましたよね?

 でも、今、ハイブランドのお店に行くと長財布はかなり少なくなっています。ショーケースで見かけるのは短財布やコンパクトウォレットばかり。そう、キャッシュレス化が進んだ結果「長財布」は徐々に姿を見せなくなっているのです。

 もちろん長財布のすべてがダメというわけではありません。しかしながら、10年前より「おじさんくさく」なってるのは確か。今は皆、ポケットに収納しやすい短財布やコンパクトウォレットを求めます。
通販サイトでも長財布は売れにくく、短財布が売れるようになりました。

 そもそも火付け役はハイブランド。ヨーロッパは軽犯罪が多いことから現金を持ち歩かないキャッシュレス化が都合よく浸透しやすかった。そのため、ヴィトンやグッチ、プラダなど短財布を多く展開し始め、その流れが日本に流入してきているというイメージ。

 ただし、海外と日本だとお札の大きさがやや違うため、海外メイドの短財布は少々お札が入れにくかったり。そうした不都合は多少あるものの、持ち運びやすさと低コスト(レザーの分量も減るので安くなる)が勝利し、短財布が今は主流となってきているのです。

メンズファッションの新常識②「ソックス+サンダル」

・Teva HURRICANE XLT2 AMPSOLE 1万1880円

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Teva HURRICANE XLT2 AMPSOLE
 10年前は「なにそれ」と言われ続けたソックスとサンダルの組み合わせ。この流れはアウトドアなどから流入したテープサンダルやスポーツサンダルに端を発します。

 tevaやkeenなどアウトドア系サンダルが日本市場に流入してきたのがおよそ10~15年ほど前。当初はサンダル=トング型、シャワーサンダル型でしたが、そんな中フィット感の強いこうしたアウトドア向けのサンダルが登場。しかしテープ型は素足で履くとチクチクしたり、靴擦れしたりと不快なことも多く、そこでソックスを合わせる人が増えてきたのです。

 もちろん元々アウトドアなどでこうした組み合わせは見られていましたが、市場に普及していったのはサンダルの履き心地の悪さを解決できるからというのもあるでしょう。

 今では『ソックス+サンダル』の組み合わせに違和感を持つ人はかなり少なくなりました。
まだ抵抗ある方も多いかもしれませんが、例えば黒のソックスに黒のサンダルなどを合わせると着用感だけでなく、サンダルのルーズ感がなくなり大人っぽくなります。ぜひ試してみてください。

メンズファッションの新常識③「ワイドパンツ」

・キャロットスラックス(丈標準69.5~73.5cm) 2990円

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キャロットスラックス
 10年前は渋谷でも原宿でも見かけなかったワイドパンツ。特にメンズはテーパードなど細身が主流でほとんど普及していませんでした。服好きの間では常識でしたが、それでも一般にはなかなか広がらなかった。保守的な日本市場で細身からいきなりワイドに移行するのは難しかったようです。

 しかし、今や逆に、どの町を歩いてもワイドだらけ。GUもユニクロも無印もワイドをメインに打ち出す時代です。細身やスキニーなどはほとんど見かけず「ボトムス=ある程度ボリュームがあるもの」という常識に刷新されました。女性のアンケートでも「男性の嫌いなファッションアイテム」にスキニーが選ばれるほど。以前はスキニーが好印象だったのに……ほんと十年一昔です。

 いまだにワイドに抵抗がある人はいないと思いますが、もし抵抗があるならGUのキャロットパンツなどがおすすめ。ワイドだけど裾がある程度細く調整してあるので、細身が好きな方も抵抗なく使えるはず。


 もうワイドは若い方のトレンドなどではなく、トラッドブランドなども展開するほど高年齢層でも広がっています。抵抗感を覚えるのははっきり言って「時代遅れ」かもしれませんよ……?

メンズファッションの新常識④「タックイン」

・ドライポンチT(5分袖) 990円

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ドライポンチT(5分袖)
・キャロットスラックス(丈標準69.5~73.5cm) 2990円

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キャロットスラックス
「おじさんの着こなし」と言われていたのはもう一昔前の話。今ではおしゃれな若者や感度の高い服好き……だけでなく、幅広く受け入れられているのがタックインです。

 Tシャツなどをパンツにインする着こなし。フォーマルシーンを連想させるため、Tシャツにカッチリ感を加えられる、腰元のアクセサリーやベルトを際立たせることができるなど色々着こなしに変化がついて面白いと支持されています。

 おすすめは上下同色でのタックイン。上下別色でタックインすると「入れてる」のが目立ちすぎて抵抗を覚えるかもしれません。最初は同色で「タックイン」を目立たなくさせることがセオリーです。

 同色でもわずかにかっちり感が加わるので食傷気味の夏場の着こなしに変化をつけるのにオススメですよ。

メンズファッションの新常識⑤「シアー素材」

・ウォッシャブルメッシュニットシャツ(5分袖) 1990円

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ウォッシャブルメッシュニットシャツ(5分袖)
 10年前はメンズの白シャツは「透けたら売れない」ものでした。販売するときは大概「これインナー透けますか?」と質問されていたのも懐かしい……今ではむしろ「これ透けますか?(透けてほしい)」と聞いてくる人も多いことでしょう。

 GUなどの量販店がこぞって展開しているのがシアー素材と呼ばれる「あえて透ける薄手素材」のシャツ。10年で平均気温が上がり南国化する日本に適応するかの如く、涼しげな透け感のあるシャツが好まれるようになりました。

 また、それと歩調を合わせるようにタンクトップも売れるように。
シャツが透けるのでインナーのタンクにこだわろうとさまざまなブランドからシルエットやデザインにこだわったタンクトップが登場。

「とにかく透けないものがいい!」って思うのはちょっと「遅れてる」かもしれません……。

メンズファッションの新常識⑥「プラットフォームシューズ」

・Uチップレースアップシューズ 2990円

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Uチップレースアップシューズ
 いわゆる「厚底」シューズのこと。以前は109系ギャルのブームだった厚底ですが、現代ではメンズも巻き込んだ大きなトレンドとなっています。

 ただ靴底を盛るだけでなく、バレにくいように自然に厚さをつけている大人向けのものも多く展開されています。またソールのクッション性や形状が研究され「疲れにくいモデル」も多数存在しています。

 以前は厚底は「低身長のコンプレックスを隠すネガティブアイテム」でしたが、現在は「普通身長の人がさらにかっこよくなれるポジティブアイテム」となっている様に感じます。背に特段コンプレックスがなくても皆プラットフォームを選んでいます。その背景は盛ってるフォルムをすっぽり隠せるワイドパンツが一般化したから。

 ワイドパンツでプラットフォームを隠し、身長と足長を盛ってる男子が増えたため、ノーマル装備では見劣りしちゃうかも……。

メンズファッションの新常識⑦「ゲームシャツ」

・QUICK DRY MESH TEE L/S 9900円

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QUICK DRY MESH TEE L/S
 サッカーなどのスポーツシーンでユニフォームとして着る様なゲームシャツが人気に。

 こうしたゲームシャツをみて「あれ? 今日何かの試合があったっけ?」と思ったらもうオジサン確定です。

 今はこうしたゲームシャツを自然に着るのが人気に。ルーズさと快適さがあり、また無地のシンプルデザインを嫌う今の流行にぴったり当てはまり多くのブランドが展開しています。


 バレンシアガなどハイブランドも多く展開しており一般的なおしゃれアイテムとして浸透しました。「試合帰り?」「応援してきたの?」「今日勝った?」など間違っても聞かないように。

メンズファッションの新常識⑧「ルーズソックス」

・tabio【WEB限定】大人男子が履けるルーズソックス 1100円

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大人男子が履けるルーズソックス
 そう、あのルーズソックスです。今は男性に支持されています。

 現代らしいビッグサイズな装いとマッチするルーズソックスが人気に。普通のリブソックスでは実用品に見られてしまい差別化しにくい。そこで多少のルーズ感をつけた表情のあるソックスが人気に。ローファーなど革靴に合わせる際にちょっとした抜け感が作れると人気です。

 特定のブランドが出している、というわけではなく、ご覧の通り全国に広く展開する「靴下屋」のブランドであるtabioが作っていたり、GUが展開していたりと「トレンド」どころか「常識」として浸透しつつあります。

メンズファッションの新常識⑨「普段使いのセットアップ」

・スマート ビズ セットアップ ジャケット 無地 8789円

「古くて、ダサいおじさん」は知らない“ファッションの新常識”10選
スマート ビズ セットアップ ジャケット 無地
・スマート ビズ セットアップ スラックス 無地 裾上げ済み 6589円

「古くて、ダサいおじさん」は知らない“ファッションの新常識”10選
スマート ビズ セットアップ スラックス 無地 裾上げ済み
 10年前は「セットアップって……仕事着に見られませんか?」とよく質問されましたが、今ではほとんど聞かなくなりました。

 スーツのインナーをTシャツなどにして日常着として着るトレンド。もちろん紳士服量販店やリクルートスーツを着るのでなく、「日常着用に作られたセットアップ」を着るのが一般的です。以前は誤解して「リクルートスーツにTシャツを合わせて着ている人」がたまにいましたが……作りやシルエットがまるで違うのでおすすめできません。

 ユニクロの感動スーツをはじめ多くのブランドが展開したことで一般化してきました。
ちなみに紳士服AOKIのカジュアル業態であるORIHIKAのスマートビズセットアップ
クオリティ高くておすすめですよ。

メンズファッションの新常識⑩「リカバリーサンダル」

・TELIC W-CLOUD – BLACK - 1万1000円

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TELIC W-CLOUD - BLACK -
「サンダル=歩き心地が悪い」のは10年前の価値観! 今はリカバリーサンダルなる存在が一般的になりました。

 多くはアメリカで開発されたもの。シューフィッターや足専門の医師がいるなどアメリカは日本と比較して「歩き心地」にうるさいことで知られています。サンダルでも長時間使えるように、疲れにくいように、姿勢が治るエビデンスがある……など機能と実用性を重視したのが「リカバリーサンダル」。

 スニーカー以上に歩きやすくかつ快適なので、この時期は特におすすめ。TELICもアメリカのブランドですが、ここは日本企画品があるので日本人の足にフィットしやすくおすすめです。

 以上、「10年でここまで変わった? 理解できないとオジサン確定! 現代メンズファッションの常識10選」でした!

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【MB】
ファッションバイヤー。最新刊『ロードマップ』のほか、『MBの偏愛ブランド図鑑』『最速でおしゃれに見せる方法 』『最速でおしゃれに見せる方法』『幸服論――人生は服で簡単に変えられる』など関連書籍が累計200万部を突破。ブログ「Knower Mag現役メンズバイヤーが伝えるオシャレになる方法」、ユーチューブ「MBチャンネル」も話題に。年間の被服費は1000万円超! (Xアカウント:@MBKnowerMag)
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