最近、自転車の運転マナーも問題視され、車の通行を妨げるような迷惑運転も報告されているが、だとしても煽っていいわけではない。むしろ、大半の人はきちんとルールを守っており、彼らからしてみれば煽り運転の車はただの恐怖でしかない。
自転車を煽り続けるセダン車…
土木会社に勤める西野保朗さん(仮名・47歳)も自転車が煽られている場面を何度か目撃したことがあるが、なかでも昨年秋に遭遇したケースは「斜め上の展開すぎて今でも鮮明に覚えています」と話す。「現場から会社に戻る途中のことです。運転は部下に任せ、私は助手席に座っていました。スマホで仕事関係のメールをチェックしていたのですが、急にスピードが落ちたので視線を上げると、目の前を走る4ドアの白いセダン車がマウンテンバイクを煽っていたんです。私が乗っていたのはワゴン車で車高がやや高く、さらに緩やかな上り坂だったので煽っている様子が丸見えでした」
煽り続けるセダン車の異常行動
なお、その道路はセンターラインが引かれておらず、軽自動車の行き違いができる程度の幅で歩道はない。ただし、自転車は道路の端を走っており、対向車がいないタイミングであれば余裕をもって前に行くことはできた。ところが、前のセダン車はいつまで経っても追い抜こうとせず、自転車との車間距離も目測で数メートル。途中からは立ち漕ぎで走っていたが、それをあざ笑うように、同じ間隔を保ったままプレッシャーをかけ続けていた。
「見ていて気分が悪かったですね。クラクションを鳴らすように指示したい気持ちもありましたが、相手は煽り運転するようなドライバーなので、今度は自分たちがターゲットになるかもしれません。それに私たちが乗っている車には社名が入っていましたし、助けてやりたい気持ちはありつつも静観せざるを得ませんでした」
自転車が急に方向転換してまさかの行動に
すると、ここで自転車の運転手がいきなり止まり、いったん降りたと思ったら逆方向に向きを変えた。その間、セダン車はクラクションを鳴らしていたが、自転車はこちら側に向かってきて、なんとすれ違いざまにセダン車の助手席側のドアを足で思い切り蹴ったのだ。「その瞬間、運転中だった部下は『すげぇ』と声を挙げ、私も『煽り運転の代償は高かったみたいだな、自業自得だよ』と言いました。
西野さんたちが乗っているワゴン車だと道幅の関係で追い抜くことが難しかったため、 部下が「俺、ちょっと話してきます」と車外へ。しかし、彼は“優男風”の見た目。30歳前後と思われる相手のドライバーは、ガラの悪そうな風貌をしているわけではなかったが、舐められているのか逆に絡まれているように見えたとか。
心配になった西野さんは、車を降りて2人のもとへ近づくことに。
「申し訳ないが、早く車を動かしてもらえませんか?」と声をかけると、相手ドライバーは「す、すみません!」と、明らかに部下の時とは態度が変化。その後、セダン車はすぐに出発して事なきを得たが、西野さんは相手の豹変ぶりが気になったという。
それについて触れると、部下が「課長(西野さん)にビビったんですよ。だって初見殺しの“超コワモテ”じゃないですか。俺だって最初見た時、絶対に怖い人だと思いましたもん」と笑いながら言ってきたという。
運転中は冷静さを保てるように
西野さんは、今回目撃した煽り運転のドライバーに対する対応で「反省すべき点があった」と口にする。「ほかの車の通行の妨げにならない場所まで移動するように促し、そこで警察に通報するように伝えるべきした。
もちろん、理由に関係なく車を蹴ってしまうのはアウトだし、それに対する罰則や賠償の必要はあるだろう。ただ、煽り行為も「妨害運転罪」という人の命を脅かす重大な犯罪行為。乗り物の種類を問わず、運転中は冷静さを保ち、煽り運転の被害に遭っても逆ギレするような真似は控えるようにしてほしいものだ。
<TEXT/トシタカマサ>
【トシタカマサ】
ビジネスや旅行、サブカルなど幅広いジャンルを扱うフリーライター。リサーチャーとしても活動しており、大好物は一般男女のスカッと話やトンデモエピソード。4年前から東京と地方の二拠点生活を満喫中。