商品を見る目は厳しい“虎”たちも炎天下で着たところ、「冷たっ!」「冷蔵庫の中みたい!」と大絶賛!
“体温超え”の日も珍しくない猛暑続きの今夏、すでに大ブームとなりつつある「冷感アイスポンチョ」。製造・販売するのは、令和の虎で“虎”としても出演している株式会社STEADの安藤功一郎・代表取締役CEOだ。

安藤社長は何がきっかけで開発したのか? なぜ冷たくなるのか? 「熱中症から命を救いたい」という想いを込めた「冷感アイスポンチョ」誕生と記録的大ヒットの裏側、そして今後の展望について聞いた。
「熱中症から子どもたちを守りたい」という熱い想い

安藤社長(以下、安藤):この「冷感アイスポンチョ」を製造・販売している株式会社STEADは代表取締役CEOが私で、代表取締役COOを金城猛男が務めているのですが、金城は9年前に大阪でサッカークラブ「ASGジュニオール」を立ち上げたんですね。
その「サッカークラブが経営する焼肉屋をオープンしたい」という企画で、金城が2年ほど前に「令和の虎」に志願したとき、私が“虎”側にいまして。
ただ、その企画は「ナッシング」で、投資は成立しなかったんですよ。でも、彼のことがなんだか気になって、「頑張っているし応援したいな」と思って連絡先を交換したんです。その後、金城からXのDMで連絡をもらって会ったのが最初ですね。
金城はサッカースクールの事業部として、ユニフォームなどを作るためにアパレルのブランドを持っていたんですね。そのブランド「STEAD」を法人化するタイミングで私が半分出資して一緒に会社を立ち上げた、という流れです。
――「令和の虎」がお二人の出会いのきっかけだったんですね。法人化された当初から、この「冷感アイスポンチョ」の構想はあったのですか?
安藤: いえ、当時は「着るだけで疲れが取れるリカバリーウェアのような機能性シャツを一緒にやろう」という話はありましたが、僕自身はポンチョの存在をまったく知りませんでした。
サッカークラブを運営している金城は、夏の暑さが厳しくなるにつれて保護者の方々から「熱中症対策はしているんですか?」「熱中症が心配なので合宿への参加は考え直しています」と熱中症対策について心配されることもあったようです。
地元の行政機関からも「昼間の時間帯は暑くて熱中症になるので練習しないでください」と言われたこともあったくらいで、陽が落ちてからでないと練習ができない。でも、このアイテムがあれば「対策ができているならいいですよ」と皆さんから理解を得られたんです。
――なるほど。そうした現場の課題があったのですね。
安藤:お付き合いのある商社さんから「こういう冷感素材のポンチョが作れる」という話を金城にいただいて、「これはいける!」と思って。5月のことです。そこから一気にスピード感が増して、5月に商品サンプルを見て製造し、「通販の虎」に出演し、6月18日に発売し今に至るという感じです。
6月18日にYouTube番組「通販の虎」が公開されると、1時間以内に最初に用意していた1000枚が売り切れてしまい、6月19日は1日で1万枚売れました! 6月30日までの13日間で売上総額が2億281万8322円、販売枚数が4万4228枚となり、現在は6万5000枚を突破(7月25日時点)と爆発的なヒットとなっていて、「通販の虎」でも過去最高の記録となっています。
ありがたいことに、少し落ち着いた今でも毎日1000枚くらい売れ続けている状況です。
――「これはいける!」と確信があったのですか?
安藤:そうですね。それは僕がタイ・バンコクに住んでいる経験が大きいですね。
日本でも毎年夏になると熱中症が大きなニュースになりますよね。でも、「水分を取りましょう」くらいしか具体的な対策がないなかで、これは子どもやお年寄りの命を救えるアイテムになる、と。これは世の中に広めなければいけない、という使命感で「通販の虎」に志願しました。
金城とは最初の企画ではナッシングになったわけですがが、今こうして別の形で事業化していて、不思議な縁を感じますね。
体感温度はマイナス10℃! 振れば再び冷たくなる!
――振ると冷たくなる、というのはどういう仕組みなのでしょうか? 商品の素材や機能について詳しく教えてくれませんか。安藤:企業秘密の部分もありますが、基本的にはポリエステル素材です。ただ、その生地が特殊な「3層構造」になっていて、「気化熱」を利用しています。非常に水が蒸発しやすい生地で、この3層構造によって水が蒸発しやすく、その際に熱を奪って冷たくなります。
――体感としてはどれくらい涼しくなるのでしょうか?
安藤:サーモグラフィのテストでは、外気が30℃の場合、ポンチョの中は20℃くらいになります。ですので「マイナス10℃以上」と謳っています。ただ、あまり断定的な表現はできないので「10℃前後」という言い方をしていますが、体感としてはもっと下がる感覚です。

安藤:他社製品の構造を分解して見たわけではありませんが、我々の製品はこの「3層構造」がミソで、外側の層に水分を含ませ、内側の2層は水分が浸透しにくいように作られています。そのため、固く絞っていただければ、下の衣服が濡れることはありません。
また、1枚1枚の層を限りなく薄くしているので、他社さん製品よりも我々の製品のほうが軽くて薄いんです。この3層構造のおかげで、「軽い、薄い、濡れない、そして冷える」という利点を実現しています。これが我々の商品の強みです。
口コミで広がる独自の使い方も!
――これだけの記録的ヒットとなると、発売後の反響も大きいのではないでしょうか?安藤:はい、ありがたいことに、たくさんいただいています。1枚買った方が気に入って、高齢のご両親のためにさらに追加で買ってくださったり、SNSのレビューを見た方が「本当にいいなら買おう」と購入してくださったり、口コミでどんどん広がっています。
また、個人だけでなく、団体からのまとまった注文も増えていますね。例えばプロ野球の球団やJリーグのクラブ、高校野球のチームです。スタンドで応援する部員や応援団のために導入してくれています。
ポンチョは羽織ると目立つので、例えば球場がチームカラーで染まれば応援グッズとしても一体感が出ますし、熱中症対策としての実用性とエンターテインメント性を両立できる点も評価していただいています。
これから増える夏フェスやバーベキューなどでも活躍しそうです。また、ポンチョとして羽織るのではなく、小さくたたんでタオルのようにして首に巻くのもいいと思います。
――当初は想定していなかったような、お客さまからの声も届いているそうですね。
安藤:はい。特に「なるほど」と思ったのが、ベビーカーでの使い方です。濡らしたポンチョをベビーカーの日除けのようにかけると、ベビーカーの中がまるでエアコンが効いているかのように涼しくなって、お子さんがとても喜んでいるそうです。
ほかにも、暑さに弱い大型犬にかけたら、いつもは5分でバテてしまう散歩が30分できた、という声もいただきました。お客様から使い方を提案していただいている状況で、今度、「アイデア大賞」でもやろうかと話しているくらいです。
「アパレル×テクノロジー=アパテック」で機能性衣料を届けたい

安藤:まずはこの夏、日本でしっかりと供給体制を整え、熱中症に苦しむ方々にお届けしたいと考えています。そして日本の夏が過ぎたら、1年中暑い東南アジアや、日本が冬の時期に夏を迎えるオーストラリアなど南半球への展開を考えています。
私が見る限り、東南アジアをはじめ海外ではまだこういった商品は普及していないので、大きなチャンスがあると思っています。
――長期的なビジョンについてはいかがでしょうか?
安藤:我々は「アパレル×テクノロジー」で、これからの時代を切り拓く“アパテック企業”を目指しています。
この数年、「着るだけで疲れが取れるリカバリーウェア」が流行っていますよね。今回は「冷感」機能ですが、例えば「着るだけでパワーが出る」「着るだけでよく眠れる」「着るだけでストレスが軽減される」など、アパレルにテクノロジーを掛け合わせた機能性の高いアパレル商品を開発していきます。
プロスポーツ選手やアスリート向けに開発された高い技術を、一般の方々が日常で使えるように改良して届けていきたいですね。この“アパテック”という領域で世界を席巻したいと考えています。
――壮大なビジョンですね。最後に、「冷感アイスポンチョ」を通じて実現したい世界観を教えてください。
安藤:我々は「冷感アイスポンチョ」を単に涼しいグッズとしてではなく、「熱中症から命を守る」ためのアイテムとして捉えています。また、紫外線対策もばっちりで、UVカット率が90~99%となっています。
来年、再来年には、子どもたちの通学路や会社員の通勤時、そのほかさまざまな方に日傘の代わりにこのポンチョを着ているのが当たり前の風景になる。そんな世界観を作っていきたいですね。究極の目標は、日傘をこの世からなくして、皆さんをポンチョにすることです(笑)。
<取材・文/横山 薫(扶桑社)>