しばらく“高級品”となっていたお米。その価格がようやく落ち着く見通しが経ってきたようだが、今年も猛暑が予想されており、新米の収穫量への不安はなおも残る。

米よりも一足早く、卵や油、小麦粉などの高騰も続いてきた。もはや「炭水化物と油でかさ増し!」系のレシピに隔世の感を覚えるほどである。

特に子だくさんの大家族だと、食料品の値上げの影響が大きいのも想像に難くない。彼らははたして今、どう対抗しているのだろう。

今回話を伺ったのは、子供5人に夫婦2人の7人家族の食事作りを一手に引き受けている、関東地方在住の平山とうこさんだ。YouTubeチャンネル「ひらり家のごはんTouko’s Kitchen」では、節約・時短系レシピが好評を博し、現在約15万人のフォロワーを抱えている。

そのアカウントには、彩り豊かな数々の料理が並ぶサムネイルがぎっしり。質素感とは無縁であるにもかかわらず、1食の費用はなんと1人あたり約300円なのだとか。節約の秘訣を教えてもらった。

7人家族で「1か月に30kgの米を消費」しても月の食費は12...の画像はこちら >>

お米の消費が最も多く、一ヶ月で30kg消費

「食料品の値上がりによって、月の食費は2~3万円ほど増え、現在は1カ月で約12万円くらいです。子どもたちの年齢は、下は2歳から上は10歳まで。運動部の中高生ほどの食べっぷりではないでしょうが、栄養面を大切にするべく、食費は安易にケチらないように心がけています」

と語る平山さんだが、月12万円の食費は創意工夫が反映された結果だといえるはず。

というのも、総務省統計局が実施した家計調査によれば、2024年における4人家族の食費の月平均額は9万6328円。
単純に一人頭に均すと24,000円で、7人なら168,000円となる。

このわずか1年でさらに上昇していてもなんらの疑問もないばかりか、実は平山さんのお腹には6人目のお子さんがおり、8人家族ともいえる(※取材時。現在は無事出産)。“外食厳禁”などのストイックさで実現している金額なのだろうか?

「いえ、平日は基本的に毎日しっかり作っているものの、土日には外食もたまにしていますよ。外食の頻度は月2回ぐらいで、1回7000~9000円程度ですかね。今回の高騰は堪えましたが、お米もたくさん食べています。我が家では、1週間で5kg以上、毎月約30kgが消えるほど。

もちろん備蓄米にはお世話になっていて、5kg3000円のものを購入しています。普段から鍋炊きしていることもあってか、子どもたちは違和感を覚えていないようですね。

ただ、我が家では卵かけご飯が大人気なんです。1日3回卵かけご飯を食べる子もいて、1週間に7パックの卵が消えていきます……(苦笑)。それでもたんぱく質はしっかり確保したい。
だからお肉もたくさん買っており、このあたりも食費を圧迫しています」

ならば、秘策はどこにあるのか。

冷蔵庫に入れているものは、必ず食べ切る

「なるべく加工品を買わずに、手作りできるものは手作りしていますが、忙しい時や、手間をかけたくない日には、冷凍食品や冷凍野菜なども使います。基本的には特売品や、旬の野菜は、安いので使うようにしていますし、あとは特売などで、ひき肉よりも細切れの方が安くなっている時は、細切れを買って自分でミンチにするなどもしています。また大容量で買って、冷凍するなどの基本的なことも行なっていますが、冷蔵庫に余っている食材を組み合わせて、色々なバリエーションで料理ができるようにすることで、冷蔵庫に余ったものを腐らせず、必ず食べ切るということに繋げることができているかなと思います」

1回の買い物で、2、3日分の食料品を購入するという平山さんだが、安くて5000円、高くて1万円程度になるそうだ。

作る人特権で、好きなもの食べたいものを作る

7人家族で「1か月に30kgの米を消費」しても月の食費は12万円。“食事はケチらず楽しむ”母が明かす、納得の節約術
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同じ環境で育てた兄弟でも、好き嫌いや食べる量も、一人一人違うというが、そんな中で平山さんはどのように、日々の食事づくりを乗り切っているのだろうか?

「夕食を作り始めるのは、一番疲れが出る夕方なんですよね。だからこそ、とにかく私が作りたいもの、食べたいものを好きに作るようにしています。子どもの好き嫌いや、給食で出たものを考慮していたら、本当に作るものがなくなってしまうので、給食表も見ないようにしています。『何食べたい?』って子どもに聞くのは、お誕生日だけと決めて、普段は作る人特権で、私がやりたいようにやっています(笑)。

子どもの好きなものも、嫌いなものも食卓にあげるようにして、日々、色んな味に触れさせることを意識していますが、傾向をみていると成長とともに食べられるものが増えてくるので、無理に食べさせることに執着しないようにしています。また何品必ず作らないとというような、“縛り”を作らないようにしていますが、毎食タンパク質をメインに栄養のバランスを考えつつ、その日のスーパーの特売品を使うという工夫は心がけています」

そんな自然体の平山さんは、YouTubeチャンネル「ひらり家のごはんTouko’s Kitchen」で発信しており、チャンネル登録者は15万人(25年8月2日現在)を突破している。視聴者からもっとも反応があるのが、やはり時短や、真似しやすいメニューだという。

料理の工程をなるべく減らす工夫で、楽に楽しむ

「毎日料理を手間暇をかけて、毎日何品もたくさん作っているように見えると言われるのですが、全然そんなことはなくて、その時の自分の体のコンディションで、作る品数を自由に決めています。作り置きはほとんどしません。作ったその日に食べる方が多いからということと、作り置きをする手間も実は大変だからです。

よほど作りたくない日は、うどんや素麺などの麺類、冷凍餃子を焼く、レトルトカレーなどを使って適度に手を抜くようにしていますが、『今日はしんどいけど作るか』という時も、なるべく必要最低限の工程でできる料理などの手間をかけずに作れるものにしています。


例えば、カレーを作る際は食材を重ねて蓋をして煮る『重ね煮』です。これなら玉ねぎを炒める手間がかかりません。ほかにも、肉や野菜を重ねて蒸すだけとか、鍋にして蓋して、調味料を入れて待つだけなど、なるべく工程を減らす工夫をし、楽に楽しむ食事づくりがモットーです」

YouTubeで発信をだけでなく、子育てをしながら、さらに料理教室のサロンを運営し、働いているというから驚きだ。

「教育費もかかるので、夫婦でしっかり稼がないと、家計は本当に厳しいですが、でもその分子どもがたくさんいることで得られる幸せも多いです。家庭の中で子どもたちの世界ができてて、子ども達が本当に楽しそうに毎日過ごしてくれているのがわかって、幸せだなと思います。また今までは、年子だったりで、子どもたちに助けてもらう場面はなかったのですが、上の子達も大きくなってきて、自然と料理を手伝ってくれたりするようになりました。現在臨月ですが、すでに子どもたちが、『赤ちゃんのお世話をするのが楽しみ』と言ってくれています」

子どもの興味を阻害しないことで生まれた、家事協力

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子どもたちが手伝ってくれることも珍しくない
兄弟間の年齢が近いということもあり、みんなで自然と遊び、普段から、上の子たちは、下の子たちの面倒をよくみてくれるという。それに加え、子どもたちが主体的に、家庭内での手伝いを担うようになったのは、平山さんが「子どもの興味を阻害しない」ということを重視してきたことが、大きいようだ。

「普段から、子どもたちがやりたいという時はやらせるようにしています。キッチンガードをつけるご家庭もありますが、我が家ではいつでもキッチンに入れるようにしていて、間近で私が料理する姿を見ていたことで、より興味を持ってやりたいとなったのでは? と思っています。もちろん、子どもたちが何にでも興味を示して、動き回る年齢の時は見張るのも大変なのですが、そういった日常の積み重ねが、結果的に料理や家事に興味を自然と持ち、参加したいと思える環境になっていたのかもしれません」

家庭内の戦力として育った子どもたちは、すでにミールキットを用いて、食事を作ってくれることもあるのだそう。

「子どもたちがやりたいと言ってくれているので、産後一ヶ月は、ミールキットをさらに導入し、子どもたちに料理を頼ろうかなと思っています。
子育てや家事も、日々の食事作りと同様に、『誰かに頼って手を抜けるところは手を抜く』ということも大事かなと思っています。

私の実家は遠方なので、年に1、2回、実家に帰る程度で、夫の実家は、県内ですが、義父しかいないので、たまに顔を見せにいく程度で、サポートをお願いできる状況ではありません。子どもが多いと、どうしても幼稚園に行って、次は学童という形で、お迎えだけでもすごい労力です。ファミリーサポートを利用して、子どもたちの送迎をしていただけるようになってからは、かなり負担が減りました」

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自分の空腹は多少ごまかせても、家族の、特に子どもの空腹は放っておけるものでは到底ない。予算は大事だが、健康を犠牲にするようなやり方も問題だ。

そんな重い責任を各家庭の食事担当は背負っているからこそ、縛りを減らして、軽やかに。平山家の大きな団欒に笑顔が絶えない秘訣は、“楽にたのしむ”工夫にこそあるのだろう。

<取材・文/SALLiA>

7人家族で「1か月に30kgの米を消費」しても月の食費は12万円。“食事はケチらず楽しむ”母が明かす、納得の節約術
ひらり家のごはんTouko's Kitchen


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【SALLiA】
歌手・音楽家・仏像オタクニスト・ライター。「イデア」でUSEN1位を獲得。初著『生きるのが苦しいなら』(キラジェンヌ株式)は紀伊國屋総合ランキング3位を獲得。日刊ゲンダイ、日刊SPA!などで執筆も行い、自身もタレントとして幅広く活動している
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