YouTubeチャンネル登録者数190万人を突破した「バキ童チャンネル」。
唯一無二の企画とキャラクターを活かした動画が支持される一方で、中心メンバーのお笑いコンビ、春とヒコーキが出会った青山学院大学・落語研究会についてのエピソード動画も強い人気を集めている。
そんな「青学落研の話」を、チャンネル出演者であり、青学落研出身者であり、春とヒコーキの学生時代からの友人でもある芸人・町田が振り返る。
第16回は、青学落研が毎年行っていたという「合宿」の話。
青学落研の夏合宿
青学落研は毎年、当時の青学落研顧問の田中先生が住んでいた熱海で、2泊3日で夏合宿をしていた。合宿のメインは2日目に熱海の起雲閣で落語会を開くことであった。
ちなみに起雲閣は太宰治などの文豪達が宿泊した宿でもあり、そこに隣接するホールで行う落語会は青学落研の一年の行事の中で最も大きいものでもあった。
出演することになっている部員は、初日に稽古会をする。そこで、落語会にも大トリで出演していただく青学落研のOBであり、プロの真打でもある三遊亭遊史郎師匠にネタ見せをするのだ。
遊史郎師匠はあまり上手に落語ができていない新入生などにも「よく覚えてきたねぇ」とおっしゃってくださるほどお優しいのだが、やはりプロの噺家の方に直々に見てもらう機会というのはないもので、とても緊張する機会である。
皆、素人ながら落研部員は気合いを入れて師匠の稽古に臨むのだが、おそらく青学落研史上で初めて練習をあまりしない状態で来てしまった部員がいた。
ぐんぴぃである。
うろ覚えの落語を披露するぐんぴぃ
ぐんぴぃ2年生、土岡や私などは1年生の時の熱海合宿であった。次の日の起雲閣に出演する部員が落語を順々に披露していく。それに師匠が何点かアドバイスをくださる。何も問題は起こらないはずであった。
ぐんぴぃの番になり、落語を話しはじめた。かなりうろ覚えであった。
「これはやばいぞ…」部員一同が焦りを感じた。うろ覚えで落語をするぐんぴぃはなぜか堂々としていた。
なんとか落語をやり終え、師匠による講評。
「まいったねぇ、こりゃ」
師匠がそんなことを言う姿をはじめて見た部員たちに緊張感が張り詰めた。
が顧問の田中先生もとてもお優しかった。
「まっ、2年生だしな!そういう時もある!これから頑張っていけばいいよ!」
ぐんぴぃはどうにかその日はことなきを得た。
合宿最終日に事件が
2日目の起雲閣での落語会も終わり、合宿最終日の3日目はレクリエーション。田中先生のご友人の、ダルメシアンを数十匹飼っていて、全身ダルメシアン柄の服を着たダルメシアンおじさんのお宅で流しそうめんだ。
ダルメシアンおじさんのご自宅はとても立派で、大きなお庭には小川が流れていて庭園のようであった。
そこに田中先生も含めた部員一同でお邪魔させていただき、流しそうめんを楽しむというのが当時の合宿3日目の習わしであり、ダルメシアンおじさんは青学落研とはとくに関係があったわけではないがご厚意で快く私たちを招いてくださっていた。
ひとしきり流しそうめんを食べ、庭の小川で水遊びをしはじめ部員たち。その小川には橋がかかっていた。
橋といってもたいそうなものではなく、これは慎重に渡らないと…というものであった。
「危ないね」「気をつけよう」「なんなら渡らないほうがいいんじゃないか」そう部員一同で話している最中、近寄るぐんぴぃ。
ぐんぴぃがその橋を真っ二つに踏み抜いた。真っ二つに割れる橋とともに川に落ちていくぐんぴぃ。
すると、それを見た顧問の田中先生の怒号が響いた。
「小僧ッ!!!!」
田中先生、昨日はあんなに優しくぐんぴぃを許してくれたのに。昨日は許したからこそなのだろうか…。
大男が小僧と怒鳴られるところをはじめて目撃し、私も怯えてしまった。
田中先生とともにダルメシアンおじさんにめちゃくちゃ謝罪をするぐんぴぃ。
あんな橋なんてことないよ、むしろ怪我はないかい?なんて優しいお言葉。
その場はおさまったものの、東京に帰ってからも小僧ショックに落ち込むぐんぴぃ。
そんなぐんぴぃに浅田魔王さんは
「あれは小僧って言ってたんじゃなくて、俺横で聞いてたんだけど小僧!寿司チェーン!って言ってたんだよ」と大嘘の慰め。
それから何ヶ月か魔王さんの口癖は小僧寿司チェーンに。
その後もちょっぴり引きずったりもしたものの、卒業する間際には、三遊亭遊史郎師匠とも顧問の田中先生とも一番仲良くなっていたのはぐんぴぃであったのは、流石の愛され力。
―[振り返れば青学落研]―
【町田】
ぐんぴぃの友人。芸人としての活動もしている。@saisaisai4126