東大大学院での昆虫研究を経て、現在はラジオパーソナリティなどのタレント活動やフリーランスの研究者として活躍する、Reina+World氏(以下、Reina)。千葉大学を卒業後、東京大学大学院で修士課程を修了し、博士課程満期退学をした才媛だ。
以前、公開した記事では自身の昆虫愛とともにアカデミックハラスメントの現状を語ってもらった。今回、さらに活躍の場を広げた彼女がアパレルブランド『Papilio Ulysses』を立ち上げ、昆虫をモチーフにしたアイテムを販売している。その意図に迫った。
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現在も昆虫を追いかけている

――ブランド立ち上げ、おめでとうございます。現在もなお研究者として昆虫を追いかけているReinaさんが、アパレルを通じて何を成し遂げたいのか聞かせてください。

Reina:私の活動はすべて、多くの人に昆虫について関心を持ってもらいたいという思いが根底にあります。アパレルブランドは蝶々などのオーソドックスな昆虫をテーマにしていますが、そのなかでもヤマトシジミなど、あまり陽の目をみることの少ない種類を主役に据えているので、「おっ」とささやかなこだわりを理解してもらえたら嬉しいです。性別を選ばないユニセックスな洋服もあるので、多くの人に浸透してくれることを祈っています。洋服を通して多くの人たちに昆虫が持つ美しさや生命の神秘性を感じてもらって、魅力を届けられれば本望です。

――前回お話を伺ったときは、かなりの「ゴキブリ愛」を感じましたが、今回のブランドでは封印したのでしょうか。

Reina:いえ、実は温めておりますので、お楽しみを(笑)。

知らない専門用語を調べつつ…

東大院卒の研究者兼レースクイーンが「男性のほうが嫉妬深い」と考えるワケ。「なんで水着になっているんだ」というナゾの指摘も
「昆虫の魅力を届けたい」という思いは通貫している
――一からブランドをはじめるのは、大変だったのではないですか。

Reina:ずぶの素人から始めたので、かなり苦労しました。最初は縫製作家さんから聞かれる専門用語すら何もわからず、調べたりしながらの意思疎通でしたから。
デザインは自分でやったので、そこにも注目してもらえたらと思っています。

――昆虫のデザインもご自身で? カブトムシとクワガタムシのタッチは優しさと味わいがあって好きです。

Reina:はい、あれは自分で描いているんです。ゆるっとしながらも、研究者なのでリアルさも出したくて、そのちょうどよさが伝わるといいなと思っていました。

日本の研究者を巡る問題は「根深い」

――Reinaさんといえば、昆虫愛も強いですが、研究者の置かれた境遇などについてもいろいろな意見をお持ちですよね。前回の記事では、研究者を“推す”活動をする人がいてもいいとおっしゃっていたような。

Reina:その思いは現在も変わりません。事業が軌道に乗ったら、研究機関への寄付なども考えているくらいです。ただ、アカデミアたちは非常に苦労をしながら研究をしてる一方で、一般市民が研究者を応援するという構造はなかなか構築できないでしょうね。

――確かに、研究者がやっていることが具体的にどんなことなのか、日頃から気にしている人は多くないでしょうね。相変わらず閉じられた空間なのでしょうか。

Reina:私はもう大学院を離れてしまったので、詳しいことはわかりません。ただ、漏れ聞く話などから、状況は大きく変わっていないように思います。
密閉された空間のなかで、しかも圧倒的多数が男性というアンバランスな比率があります。日本の研究者を巡る問題はわりと根深いと私は感じているんです。

――近年は女性活躍推進の機運が高まっていますが、そうでもないですか。

Reina:いえ、たとえば「女性研究者限定公募」などのように、積極的に女性研究者を採用しようとする動きは見られます。ただ、アカデミアは性別にかかわらず非常に狭き研究の門を争っているわけです。血の滲むような努力の末に研究成果を得られたとして、男性研究者であるという理由だけで公募の要件から外されたら、アンフェアだと思うのではないでしょうか。やがて女性研究者へのやっかみや僻みが増大することになれば、男性にも女性にもよくない結果になるように思うんです。

ナンパされたり、身体を触られたり…

東大院卒の研究者兼レースクイーンが「男性のほうが嫉妬深い」と考えるワケ。「なんで水着になっているんだ」というナゾの指摘も
大学院時代、セクハラまがいの言動を受けた
――男性研究者もまた、鬱々としているんですね。

Reina:そうだと思います。前回、私が受けたハラスメントのお話をしたと思います。まったく普通の丈のスカートを履いているだけで、「そんなスカートで研究ができるのか」と怒声を浴びせられたり、何度かセクハラまがいのことをされたりもしました。

 友人の女性研究者のなかには、学会でナンパされたり、懇親会の席で身体を触られたりした子もいます。ひどい例になると、なかばストーカーとなったりもするようです。
それが指導教授や共同研究者からの誘いだと無碍にできないので、病んでしまう女性もいるでしょうね。

――Reinaさんが感じる、男性研究者の問題はどのようなところですか。

Reina:私が大学院時代に感じていたのは、実は男性のほうが嫉妬深いのではないかということです。それは男性だけが悪いのではなくて、社会的にもまだ「男性が稼ぐのが当然」という風潮が根強いなかで、研究者は必ずしも安定した生活が保証されていません。そうした焦りが、ときとして嫉妬を呼ぶのだと思います。

 そんな男性たちに囲まれるのだから、女性が研究者として大成するのは並大抵のことではありません。敬愛する女性研究者の先輩も、「偉い先生にペコペコして、でも自らの強さを失わない人じゃないと女性で研究を続けるのは難しかった」と振り返っています。

いろいろ言ってくるのは男性が多い

東大院卒の研究者兼レースクイーンが「男性のほうが嫉妬深い」と考えるワケ。「なんで水着になっているんだ」というナゾの指摘も
アンチは「ほとんど男性」だという
――そういえば、Reinaさんのアンチもほとんど男性でしたね(笑)。

Reina:いろいろ言ってくるのは男性が多いですよね。「なんで水着になってるんだ」とか「論文も出していないのに、ラジオ番組で論文紹介をするな」とか(笑)。

 レースクイーンなどもやっていたので水着になっているのは何がいけないのかピンときませんが、後者についてはまったくの誤解です。たぶん私の研究について何もしらないのでしょうね。私の活動に興味を持ってくれているなら、どんなものを執筆しているか、これから出るかについても、調べてくれたら嬉しいな……なんて思います(笑)。


――たいていは、ネット上で言うだけで、直接言ってくる人は少ないですよね?

Reina:それがそうでもないんですよ! イベントの際に会いに来て、表に出ていない私の個人情報について調べた限りを披露して帰る人とかもいて(笑)。結構間違いもあったんで、訂正してあげましたけど。

アンチは養分くらいにしか思っていない

――確かに怖いけど、それはアンチなんですか(笑)。Reinaさんの返しもメンタルの強さを伺わせますね。

Reina:私の目標は自分が影響力を持つことによって、昆虫や研究について多くの人に関心を抱いてもらうことなんです。直接的な研究以外の活動に眉をひそめる人もいるけれど、自分が「ここまでやれる」と決めた範囲ならば、”広報活動”としてこれからもやっていこうと思っています。

 正直、アンチは養分くらいにしか思っていないんです(笑)。こんなことを言うと炎上するかもしれないけど、私は作りたいのは、誰かに固執していないといられない粘着アンチこそ救われる世界なんです。アカデミックな世界が正常に機能すれば、一般の人たちにとってもいい必ず影響が出るから、もっと多くの人に研究者の世界に興味を持ってほしいですね。

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 手段を選ばない。生煮えの覚悟でそれを口にする者はいるが、にこやかに狂気をにじませて笑うReinaさんのそれは本物だ。今報われない人々も、いつかは笑えますように。
彼女が描く世界はどこまでもハートフルで、学術への畏敬に満ちている。

<取材・文/黒島暁生>

東大院卒の研究者兼レースクイーンが「男性のほうが嫉妬深い」と考えるワケ。「なんで水着になっているんだ」というナゾの指摘も
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【黒島暁生】
ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki
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