衆参いずれも与党が過半数を割り込むという異例のなか、臨時国会が幕を開けた。石破政権の求心力低下は明らかで、野党のみならず、党内からの圧力も強まっている。
自民党では中曽根康隆青年局長らが石破おろしの急先鋒に。10以上の党都道府県連からも退陣を求める声が上がるほか、茂木敏充前幹事長は自身のYouTubeで「(衆院選・都議選・参院選で)スリーアウトチェンジ」と発信。
続投か、退陣かーージャーナリストの岩田明子氏は「8月8日の両院議員総会」が鍵を握るとにらんでいる(以下、岩田氏の寄稿)。

石破政権「内輪と外向け発言が乖離しすぎ」。8月8日両院議員総...の画像はこちら >>

“石破おろし”の声が高まるなか首相は 「時期」を区切るのか?

「石破さんは、内輪で話した内容と、外に向けて発信することが乖離しすぎている……」

参院選以降、政権幹部からこんな不満を耳にする。

「出処進退については一切話に出ていない」

7月23日の首相経験者3人との会談後に石破首相はこう明言したが、実際には岸田文雄前首相が「期限を区切っての退陣」に言及し、麻生太郎・最高顧問は「石破・自民では選挙に勝てない」と対応を迫っていた。

7月27日には森山裕幹事長と、翌28日の両院議員懇談会で「政権の期限を示す」ことをすり合わせていたのに、参院選の総括を行った後の辞任を示唆したのは森山氏だけだった。それどころか、懇談会で「適切に判断してまいりたい」と話した石破氏は、直後の会見では「続投する考えに変わりはない」と明言した。

党内では批判の声を受け止める姿勢を見せながらも、対外的には政権維持に向けた強い意思だけを示す──そんなちぐはぐな言動がさらなる批判を呼んでいるのだ。

総裁選前倒しの可能性も

注目は、8月8日の両院議員総会をどう乗り切るかだ。若手や旧安倍派議員らが局面を打開しようと署名運動を展開しており、総会での議決を経て過半数の支持が得られれば、自民党総裁選の前倒し開催が現実味を帯びてくる。

この“リコール規定”は支持率が低迷した森喜朗内閣を受けて’02年に党則に盛り込まれたものだが、過去にリコールが成立した事例はない。前代未聞の騒動を避けるために、「首相は期限を決めた政権運営を示さざるを得ないのでは」とみる党幹部が多い。

だが、期限を区切るのも容易ではない。
石破氏は「関税合意の確実な実施」を続投の理由として挙げてきたが、これを見届けようとすれば長期政権は避けられない。合意文書が交わされていないことを批判する声もあるが、党幹部は「今の弱体化した政権でトランプ大統領の署名を求めたら、とんでもない追加要求をされるのは必至」と話すのだ。

終戦の日に戦後80年談話を出すのかも注目点だが、私が取材する限り、公式に発表する様子は見られない。石破氏は’15年に地方創生担当大臣として安倍晋三首相(当時)の70年談話に署名しているため、それを上書きできる立場にないという姿勢だ。

忘れもしない’20年8月28日、私は本人の了承を得て「安倍首相 辞任の意向固める」と速報を打った。岸田首相が総裁選不出馬を表明したのは昨年8月14日。歴代政権を振り返っても、8月は大きな転換点となってきた。果たして、今年は……? 目も当てられない党内政局に終止符が打たれることを期待したい。

石破政権「内輪と外向け発言が乖離しすぎ」。8月8日両院議員総会が“命運を分ける”岐路に
岩田明子


【岩田明子】
いわたあきこ●ジャーナリスト 1996年にNHKに入局し、’00年に報道局政治部へ。20年にわたって安倍晋三元首相を取材し、「安倍氏を最も知る記者」として知られることに。’23年にフリーに転身後、『安倍晋三実録』(文藝春秋)を上梓。現在は母親の介護にも奮闘中
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