人生の節目であるプロポーズ。本来は「二人だけの特別な瞬間」と認識している人が多かったはずだ。

 しかしSNS全盛の今、プロポーズは一部で“イベント化”している。花束や夜景とともに動画で記録し、不特定多数に披露する時代になった。

公開プロポーズが「地獄の思い出」に…辱めを受けた25歳女性が...の画像はこちら >>
 また、8月11日にZOZOマリンスタジアムで行われたプロ野球の試合にて、イニング間にロッテファンのカップルがインタビューを受け、男性が公開プロポーズをしたことも話題を呼んでいる。プロポーズは成功したが、ネットの声は公開プロポーズアンチによる否定的な意見も多く見られた。

クルーズ船で大歓声の中プロポーズ…

 もちろん、双方がハッピーなら問題ない。だが、女性にとっては「地獄」にしか思えない演出もある。話を聞いたのは、美容系企業で働く田中静香さん(25歳・仮名)。

「同い年の彼には、以前から『26歳までには結婚したい』と伝えていました。そして交際1年半頃、記念すべきプロポーズは……今思い出しても赤面します」

 それは静香さんの誕生日、東京湾ディナークルーズでのこと。フルコースの後、彼に誘われて夜景が広がるデッキへ。乗客たちとともに、海風に吹かれながら夜景を見ていたタイミングで、スタッフが大きなバラの花束を抱えて登場し、彼に手渡した。

「豪華な花束を『静香、お誕生日おめでとう』と贈られたんです。粋なサプライズに感激する間もなく、乗客の視線が一斉に集中。
さらに彼がポケットから小箱を取りだし、王子様のようにひざまずいたんです。箱がパカッと開いて、船上は大歓声。中身は、まごうことなき結婚指輪。彼は照れ臭そうに『結婚してください。一生、静香を幸せにします』と宣言——。私たちは完全に喜劇ショーの見世物でした」

恥ずかしくても2時間逃げ場なし

 静香さんは空気を読んで「ありがとう……よろしくお願いします」と口にし、差し出した薬指に指輪をはめてもらった。祝福と冷やかしの声が飛び交う中、心中は複雑だったという。

「クルージングなので、その後の2時間は逃げ場はなし。化粧室に行っても見知らぬ人に『おめでとうございます』と言われ続け、終始さらし者でした。 追い打ちは、船上スタッフが撮影したプロポーズ動画。彼は『撮影してもらったから見ようよ!』と満面の笑みです。でも、私は見る気になれませんでした。嬉しい気持ちはあるんですが……『プロポーズは二人きりの時にしてほしかった』というのが私の本音です」

SNSで無断公開された“プロポーズ動画”

公開プロポーズが「地獄の思い出」に…辱めを受けた25歳女性が語る“逃げ場なし”の悲劇
 プロポーズが嫌な思い出となってしまった人は他にもいる。会社員の吉村香奈さん(29歳・仮名)は、外でのプロポーズについては嬉しかったというが、その動画を勝手に撮影され、しかもSNSにアップされたことに対しては不満に思っているという。


「東京タワーをバックに花束と指輪でプロポーズされた後、その光景がインスタのリールに無断でアップされていたんです。『画角も計算して、スマホを置いていたんだよ』と彼は得意げですが、まずは私に撮影していいかどうかを聞いてほしかった。大切な瞬間なのに、うれし泣きした声は自分でもドン引きするほどでしたから……。ちなみに大きな花束を抱えて電車で帰ることも苦行でした。相手の気持ちも考えてほしいですね」

自己満足のプロポーズは控えるべき

 今の時代、SNSで「#プロポーズ」と検索すれば、夜景、花束、指輪、抱擁など、幸せアピールの写真や動画があふれている。だが、その裏で、華やかな演出が彼女を戸惑わせたり、心に影を落とすこともあるのだ。

 自分自身の過度な承認欲求を満たしたり、自慢に走るのはほどほどに。大切なのは「彼女の笑顔がそこにあるか」、その一点だ。

 人生最大のイベントでの「公開」が「後悔」にならないためにも、今一度、彼女の性格や価値観を慎重に見極めてほしい。

文/蒼井凜花

【蒼井凜花】
元CAの作家。日系CA、オスカープロモーション所属のモデル、六本木のクラブママを経て、2010年に作家デビュー。TVやラジオ、YouTubeでも活動中。

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