しかし、一部の購入者が、”自転車”としてナンバーナシで乗り、運転も暴走気味と、SNSで歩行者や自転車との接触動画が拡散されるたび、「危ない」「規制しろ」といった声が飛び交うのが現状だ。
「クルマにも歩行者にも挟まれる」
もちろん、しっかり交通法、交通ルールを守って使用している人も多い。都内で通勤にモペットを使う男性(37歳)はこう話す。「報道を見ると、モペット=暴走みたいに描かれますが、実際は安全運転している人も多い。車道ではクルマに煽られ、歩道では歩行者に睨まれる。どこを走っても敵扱いなんです」
また、配送のアルバイトで利用する20代男性は、維持費の安さを理由に挙げる。
「駐輪場代も安く、仕事用に最適。でも事故映像が拡散されると、配達中にまで『危ない』って怒鳴られたりする」
“無法者”イメージの背景
事故映像や危険運転の動画は拡散力が強く、SNSでは「モペット乗り=危険集団」という印象が定着しやすい。一方で、警察庁の発表ではモペット関連の事故件数は原付全体のごく一部に過ぎない。多くの利用者はルールを守って走っている。複数のモペット愛好者は、取材の中で口を揃えてこう語った。
「ヘルメット義務化や歩道禁止など、必要なルールは守るつもり。だけど“敵視”されると、安全教育もインフラ整備も進まない。自転車、バイク、クルマと同じく、共存できる環境が必要」
事故はもちろん防ぐべきだが、乗り手の現実を知ることで、モペットをめぐる議論はもっと建設的になるはずだ。
(取材・文/小林おはぎ)