ワクワクがハラハラに変わる瞬間
「沖に水上バイクを止められて、もう逃げられなくって」太陽が照りつける神奈川県・逗子海岸のビーチで、明るく笑いながら話すのは、小麦色の肌がまぶしいアヤノさん(仮名・21歳)。
だが、取材班が「それは“同意”だったのですか?」と問うと、その表情は一気に曇った。
「あれは3週間前、友人と2人で海に遊びに行ったときのことです。私たちも“ちょっとした出会い”くらいはあるかもしれない、なんて冗談半分で話していたんです。そこに20代半ばくらいの男2人が近づいてきて、『水上バイクに乗らない?』と声をかけられました。筋肉質で見た目も悪くないし、しかも私は水上バイクが初めて。テンションが上がって『乗りたーい!!』と即答してしまいました」
男女ペアに分かれて、エンジン音を響かせながら湘南の海原を疾走。潮風と水しぶきを浴び、互いにスマホで写真を撮り合う――。まるで“海でSNS映えナンパ”の見本のような光景だった。
だが20分ほど楽しんだあと、男が艇を止めたのは、江の島からも葉山からも外れた沖合の、人影がまったくない一角だった。
「ちょっとカメラ回していい?」とスマホを端に設置され…

アヤノさんは一瞬、胸騒ぎを覚えたものの、喉の渇きに負けて乾杯してしまったという。
「海を眺めながら一息ついたら、男が『俺、配信やってるんだ』と言い出して、『ちょっとカメラ回していい?』とスマホを端に設置したんです。慌てて顔を手で隠したら、身体をじわじわ寄せてきて、『いいよね?』の一言でキス。そのまま押し倒されました。カメラは途中で倒れたけど、音は残ってたかもしれない。今思えば、ちゃんと断ればよかった……」
加害者の特定はできず、不安だけが残った。アヤノさんは最後にこう付け加えた。
「今になって思うと、あれって仲間うちに“同意を取った証拠”として見せるための配信だったんじゃないかって。本当に悪質ですよね」
不同意性交等罪が’23年7月に施行され、「同意の有無」が新常識に。
さぞ、真夏の性被害報告は減っているかと思いきや、前述したケースのように「証拠を残せばいい」と手口を巧妙化させる輩が増えている。
チャット履歴で逃げ道を塞がれ、ホテルに
「あれも“ログ残し”だったのかな……」そう打ち明けるのは、サングラス越しに涼しげな目元をのぞかせる、モデル風の細身美女・ユナさん(仮名・22歳)。大阪旅行中に出会った男のことだという。
「彼氏いない歴が1年を超えて、マッチングアプリを始めたんです。
しかし、待ち合わせ場所で再会したその男は、アプリ上での軽快なやり取りとは別人のごとく話がつまらない。
完全に気持ちが冷め、予約していた宿に帰ろうとすると、男が「このまま帰るの?」と引き留め、スマホ画面を突きつけてきた。そこにはチャット履歴――。「いじめてほしい」という一文が。
「『こう言ってたよね?』と強気に迫ってきて……。もう面倒だったから、ラブホテルに行くことにしました」
密室でできる抵抗は少ない
ところがホテルに入ると、男はさらに要求を重ねた。「服を脱いだあたりで『撮っていい?』とスマホで動画を撮り出したんです。抵抗しましたが、目隠しを条件にしぶしぶ従いました。『会話も全部残したい』『感じてる顔が可愛いね』とか、ベッドの上では謎に饒舌で……」
行為が終わると、ユナさんは即座に男をブロックし、マッチングアプリの運営にも違反報告を送った。
「他の女性にこんな思いはしてほしくないし、本当はやりたくなかった。旅の恥は掻き捨てって言うけど、恥もほどほどにしないとね。
ログさえ残せば、と高を括る卑劣漢はいまだに多い――。
取材・文/週刊SPA!編集部