’25年に後期高齢者数は過去最多を更新する見込み。要介護者が急増し、費用の高騰と人手不足を機に、介護による貧困化が加速し始めた。
ただでさえ困窮する氷河期世代の生活が一気にどん底に転落するリスクが高まっている――。介護に翻弄された末に行き着く先とは? 超高齢化社会の日本が直面する大問題に迫った。

将来の親の介護を冷静に分析

20年以上介護の現場に立つ芸人・安藤なつが、親の介護では「2...の画像はこちら >>
「将来、親の介護に直面した場合、24時間つきっきりで見るつもりはありません」

そう断言するのは、お笑いコンビ「メイプル超合金」の安藤なつ氏だ。現在44歳で氷河期世代の一人でもあり、芸人活動の傍ら20年以上介護の現場に立つ彼女は、将来の親の介護を冷静に分析する。

「気持ちを切り離すことができないのが家族なんです。仕事ならたとえ利用者さんに罵倒されても『体調が悪いのかな?』と冷静に行動の背景を慮ることができる。しかし家族となると愛情があるがゆえに線引きができず介護する側が疲弊してしまう。これが家族介護の難しさです」

日本に強く根付いた社会規範

しかし、日本ではいまだに「親の面倒は子どもが見るべきだ」という社会規範が根強い。

「自宅で見るのも立派な愛情。けれど、もし共倒れのリスクが少しでもあるなら、そこは無理してほしくないですね。私の場合、父は介護を待たずに急逝しましたが、もし母の介護が必要になったら、プロに任せるつもり。本人も『ほっといてくれ、適当にやるから』と言ってます(笑)」

「すべてを自分だけで背負おうとしなくていい」

20年以上介護の現場に立つ芸人・安藤なつが、親の介護では「24時間つきっきりで見るつもりはありません」と話す理由
「1時間でもいい、プロに頼って息抜きを」(安藤氏)
同世代にも「すべてを自分だけで背負おうとしなくていい」とアドバイスを送る。

「なにかと自己責任感が強い世代といわれていますが、親の介護にすべてを捧げてしまうと、親の死後に“燃え尽き症候群”に陥ることもあります。なにより介護離職だけは絶対に避けてほしい。

もし、『親がおかしいな?』と思ったら、親が住んでいる地域の役所の高齢者福祉課に連絡してみてください。
『歯が痛いから歯医者に行く』くらいの感覚で頼ってほしいですね」

プロに任せるのも親孝行

家族の介護は無理に抱え込まず、プロに任せる。これも立派な親孝行なのだ。

【安藤なつ氏】
小学1年生の時、伯父の運営する障害者施設で介護に触れて以降、介護に携わる。著書『介護現場歴20年。』(主婦と生活社)など

取材・文/週刊SPA!編集部

―[[貧困介護]の現実]―
編集部おすすめ