旅行者泣かせの空港での「乗り継ぎ失敗談」
成田健太郎さん(仮名・29歳)はコロナ禍直前の2019年、冬休みを利用してバンコクへ。最寄りの中部国際空港からは直行便も出ていたが、多少時間がかかっても航空券代が安い中国・上海の浦東国際空港を乗り継ぐルートにした。「料金は旅行サイトで購入したのですが、往復で4万円台。直行便よりも2万円以上は安かったと思います。ただ、利用航空会社は中部―上海が吉祥航空、上海―バンコクは上海航空。正直、初めて名前を聞く航空会社でしたし、上海の空港でバンコク行きのフライトの搭乗手続きが必要だと購入後に気づいたんです。その時点で高くても直行便にすればよかったと後悔しましたし、無事に乗り継ぎできるかという不安もありました……」
ちなみに浦東国際空港の到着予定時刻は16時30分で、バンコク行きの出発時間は18時30分。2時間あるので十分間に合うように思えるが、同空港は乗り継ぎに時間のかかる旅行者泣かせの空港として有名。特に成田さんは、いったん入国してから上海―バンコク便の搭乗手続きを行う必要があった。
入国審査が予想外の“激混み”
当日、中部国際空港からのフライトはほぼ定刻通りに到着したかに思えたが、飛行機の駐機場所は“沖止め”と呼ばれるターミナルから離れた場所。ここからバス移動を強いられることになり、乗り継ぎに対する懸念は最悪の形で的中することになる。「空港ターミナルまでのバス移動に加え、入国審査も『外国人用の列は空いている』とネットには書いてあったのに、時間帯が夕方だったからか混んでいました。拙い英語で列を整理していた職員に事情を説明しましたが、『ここに並んでください』と言うだけで配慮はなし。もう内心『ヤバい、このままじゃ間に合わない……』と焦っていました」
航空券が紙くずに
入国審査自体は何も聞かれず、すぐに終わったが、預けていた荷物をピックアップした時点で次のフライトまで残り50分を切っていた。実は、多くの航空会社が搭乗手続きの締切を出発60分前に設定するが、浦東国際空港をハブ空港にしている上海航空は50分前。
おまけに上海―バンコクの往復航空券は自動的にキャンセル扱い。文字通り“紙くず”となってしまったのだ。
「全区間同じ航空会社なら乗り継ぎに失敗しても別の便に振り替えてもらえる可能性があったらしいのですが、私の場合は別のエアライン。旅行先を上海に切り替えることも考えましたが、事前にバンコクのホテルを予約していましたし、そこそこのランクだったのでこれを無駄にはできなかった。結局、新たに上海―バンコクの往復チケットを購入することにしました」
浦東空港での2時間乗り継ぎは高リスク
航空券が比較的安い中国だっため、当日夜出発の別のエアラインのチケットを確保できたが、それでも金額は約5万円。本来なら払わずに済んだだけに痛い出費だ。「帰国後、旅好きの友人に愚痴交じりに話すと『浦東空港で別の航空会社の2時間乗り継ぎはリスクが高すぎる。さすがに無理ゲー』とダメ出しされました(苦笑)」
中国乗り継ぎのルートは避けるように
その後、成田さんはコロナ禍で結婚。現在は夫婦で年1~2回海外旅行を楽しんでいるが、中国乗り継ぎのルートは敬遠している。「最近は到着便の沖止めが少なくなり、以前よりは乗り継ぎに時間がかからないとの情報もネットで見かけました。改善されたのかもしれませんが、一方で未だに乗り継ぎに失敗したという投稿も散見されます。
国内と違って海外の空港での乗り継ぎに不安を感じる旅行者は少なくない。ましてや経由地で搭乗手続きが必要なケースは明らかに上級者向き。
航空券の値段も重要だが、購入の際は手間の少なさや安心感とのバランスを考えたほうがよさそうだ。
<TEXT/トシタカマサ>
【トシタカマサ】
ビジネスや旅行、サブカルなど幅広いジャンルを扱うフリーライター。リサーチャーとしても活動しており、大好物は一般男女のスカッと話やトンデモエピソード。4年前から東京と地方の二拠点生活を満喫中。