高温多湿の夏はゴキブリの活動が最も活発になる時期。家庭内だけでなく、街中でも遭遇するリスクが高まる。今回は、都内の飲食店で実際に起きた“ゴキブリ恐怖体験”を取材した。
飲食店のテーブルに現れた“黒い影”
「どんなホラー映画よりも怖かったです……」
青ざめた顔で話してくれたのは、熊川ゆずさん(26歳・仮名)。飲食店に勤める彼女は、ある夏休みの1日にとんでもない事件に出くわしたという。
「友人と東京都の外れに遊びに行って、たまたま入った和食屋さんでの出来事なんですが……」
朝から晩まで遊び「クタクタだった」と話すゆずさん。とにかく腹ペコだった彼女はカレーうどんを、ダイエット中の友人はざるそばを頼んだ。
「疲労と空腹の限界だったので、出汁が効いているカレーうどんが沁みました……」
うどんを食べきり、残りのスープを飲み出した頃。ゆずさんの視界に大きな“黒い影”が入ってきた。
「私と友人は対面に座っていたんですが、彼女のトレーの下に普段はあまりお目にかかれないようなサイズの黒々したゴキブリがいたんですよ……」
ゆずさんはあまりの衝撃に無言で立ち上がって、テーブルから離れた。
「人って本当に驚くと大きな声なんて出ないんだって思いました……。その日はクロックスを履いていましたが、リラックスしていて半分脱いだ状態でした。咄嗟に“ゴキブリが飛んだらやばい!” と思い、裸足でスッと離席しました」
そこから、店員さんを呼ぼうとしたが、店は満席で忙しそうにしており、全く気づいてもらえない。
「正直、『でかいゴキブリいるからこっち来な!』って叫んだら楽ですが、他のお客さんもいるからさすがに……。大きい声を出してゴキブリを刺激して飛んだりしたらいけないし、店員さんにも伝わらなくて」
ゆずさんは「店員さんがくる前にゴキブリがどこかへ行ったらそれはそれでやばい」ということで、意を決して証拠写真を撮影した。その時だった。
ゴキブリがまさかの行動に

友人はその光景を見て「ヒィっ!」と大きな声をあげて、ゆずさんのもとに駆け寄ってきたそうだ。
「そのゴキブリは人間にすごく慣れているのか、のそりのそりと皿の上に上がり、むしゃむしゃとそばを食べていました。あまりの恐怖と共に『ゴキってそば食べるんだァ……』と不思議な気持ちで傍観していました。自分の残飯を食べる様子を見て、友人は言葉を失っていましたが(苦笑)」
だが、待てど暮せど店員は来ない。靴を履いていないゆずさんは歩くこともできず、友人が店員を連れてきた。
「店員さんがすぐ殺すかと思いきや、ものすごく驚いて『これは大きすぎる!』と引いてて。さらに他の店員さんを呼んできたけど、こちらも女性で私たちと同じテンションで怖がっていて話にならない。同じ飲食店で働く身として、『早く殺した方が良くない?』と思いましたが、店員さんたちは『無理……』『どうしよう……』と呟きながら、その場でうろたえているだけでした」
怖がりつつも、店員はゆずさんのクロックスと荷物を救出し、「今回はお代はいりませんので。明日、オーナーから電話をかけます」と頭を下げられたようだ。
「デザートも頼んでいたので『お席を移動して食べますか?』と聞かれたんですけど、こんなにでかいゴキが店内にいるのをわかっていながら食べられませんよね?」
「また来てください」という店の対応に困惑
結局2人が店にいる間、ゴキブリを処理した様子は「なかった」んだとか。そして翌日、オーナーからゆずさんに電話がかかってきた。その内容とは——。
「とにかく謝られて『ゴキブリ駆除は業者を入れて徹底的にやっているので、おそらく外部から入ってきたものだと思います』と言われたんですが、あの人間への慣れっぷりを見たら、とてもそうは思えませんね……。業者を入れているならそれこそクレーム入れるべきだし」
最終的に「今後はもっと気をつけるのでまた来てください」と言われたそうだが、
「場所的に遠いっていうのもあるけど、もう行きませんよね(苦笑)。今回の件で、友人も私もそばが怖くて食べられなくなりましたよ」
筆者の左手を這う巨大ゴキブリ
実は筆者(吉沢さりぃ)も先日、ゴキブリトラブルに遭ったばかりだ。
その日は息子を預け、女子会で「少し良いものを食べよう」という日だった。都心から少し外れた和食屋で、あまりに楽しみだったため当日は昼から何も食べていなかった。
後輩、筆者、友人の3人でカウンターに並び、コース料理とお酒の飲み放題。出てくるもの全てが美味しく感動の連続だった。
料理を食べ終わり、ダラダラとお酒を飲んでいる時だった。
左の腕をスリスリされている感覚があり、左に座る友人は酔うとボディタッチが激しいので「何触ってるの~?」と腕を見た瞬間。
人生で見たこともない大きさのゴキブリが、筆者の腕を這っていたのだ…!
「ぎゃーーーーーーーーーーーーーーー!」
咄嗟に右手で払い、席から立ち上がった。
筆者が大声を出したにもかかわらず、常連客は「どっち行ったー?」と動じておらず、もしかしたらよく出る店なのかもしれない。
まだダラダラ飲んでいたかったが、恐怖が勝って会計を済ませた。そして「久々の夜遊びだー!」と歌舞伎町に繰り出したが、アイツが左手を這う感覚が抜けきれず、いくら飲んでも酔えなかった……。
こんな目に遭ったが、その店はとんでもなく食事が美味しかったので、涼しくなったら懲りずに行ってみようと思っている。
ゴキブリ絶滅しないかなぁ……。
<取材・文/吉沢さりぃ>
【吉沢さりぃ】
ライター兼底辺グラドルの二足のわらじ。著書に『最底辺グラドルの胸のうち』(イースト・プレス)、『現役底辺グラドルが暴露する グラビアアイドルのぶっちゃけ話』、『現役グラドルがカラダを張って体験してきました』(ともに彩図社)などがある。趣味は飲酒、箱根駅伝、少女漫画。X(旧Twitter):@sally_y0720