よく“目が点になる”という表現があります。とても驚いたり、呆れたりした時などによく使われる表現です。

今回のエピソードは、自身の駐車スペースを隣人が勝手に占拠していたという、信じがたい内容です。一体何の目的で誰がそのような行為をしたのでしょうか。

「ウチの駐車場を勝手に使っていた」隣人の年配女性に怒り心頭。...の画像はこちら >>

「もしかしたら…」妻のひとことから始まった違和感

横浜・山手の高台にある築10年ほどの中規模マンション。その一角に住む平林さん(仮名・37歳)は、精密機器製造工場の研究員として働いています。勤務地は神奈川県の山奥で車通勤です。朝は6時過ぎに出発し帰宅は20時前後になるといいます。

「通勤が車なので、マンションの専用駐車場は契約時にしっかり確保していました。機械式ではなく出し入れが楽な平置きタイプで、我が家からも見通せる位置にあるので安心です」

3歳の娘と専業主婦の妻と暮らす平林さん。ある晩、仕事を終え帰宅して晩酌をしていたところ、妻からこんな話をされたそうです。

「あなたの駐車場にね、時々赤い軽が停まってるの。ベランダから見える範囲だから、もしかしたら違うかもしれないけど、どうもあの場所っぽいのよ」

平林さんの帰宅時間には常に空いているはずの自分のスペース。実際、自身が帰ってきた際に別の車が停まっていたことはなかったため、「見間違いじゃないか」と、当初は深く気に留めなかったといいます。

まさかの現行犯──その日、赤い軽はそこにあった

転機が訪れたのは、都内で開催された技術者向けセミナーに出席する日のことでした。午後からの開催だったため、昼過ぎに一度帰宅し、自家用車を置いて電車で会場に向かう予定だった平林さん。
ところが、マンションに戻ると、信じられない光景が目に飛び込んできました。

「自分の駐車スペースに、赤い軽自動車が停まっていたんです。一瞬、場所を間違えたかと思って番号を二度見しましたが、間違いなく自分の区画でした」

時間に余裕もなく、その場で車の持ち主を探すのは断念。やむなくそのまま自分の車で首都高に乗りセミナー会場へ向かいますが、内心は不快感と怒りでいっぱいだったそうです。

「これは一時的なことではないな、と直感しました。妻の言っていた“時々”という言葉も頭をよぎりました」

この一件で、平林さんの中のスイッチが入りました。

「昼間は使わないでしょ?」……開いた口が塞がらない瞬間

後日、有給休暇を取得した平林さんは、昼間の駐車場の様子を自宅から見張ることにしたそうです。そして、例の赤い軽が再び現れるのを確認すると、現場へと急行したのでした。

「ちょうど午前11時すぎでした。車がスッと入ってきて、迷いもせず私の区画に停めたんです。運転席から出てきたのは、隣に住む年配の女性でした」

すぐさま駐車場へと向かった平林さんは、車の横で女性に声をかけました。

「ここ、私の契約スペースなんですが」と告げると、女性は一瞬きょとんとした後、こう言い放ったといいます。

「でもあなた、昼間は使ってないでしょ?」

予想の斜め上をいく返答に、平林さんも一瞬言葉を失ったそうです。


「いや、使ってないからといって他人が勝手に使っていいなんて道理はありませんよ。契約している場所ですし、急に戻ってきたらどうするんですか」

「はいはい」といった態度で、そそくさと車を移動させた女性でしたが、その表情からはまったく反省の色は見えなかったといいます。

証拠を押さえて反撃開始

このまま放っておいてはまた同じことが起きる──。そう考えた平林さんは、マンションの管理組合に相談を持ちかけました。理事長と連絡を取り、防犯カメラの映像を確認してもらうことに。結果は想像以上でした。

「平日のほとんど毎日、10時頃から15時頃まで、あの赤い軽が停まっている映像がしっかり残っていました。明らかに“常習”でした」

管理組合と理事長の協力を得て、その女性に正式に警告がなされ、あわせて不法使用期間中の駐車料金相当額も請求。具体的な金額は明かされませんでしたが、平林さんいわく「それなりの金額になった」そうです。

その後、赤い軽が平林さんのスペースに停まることは一切なくなったといいます。

「妻と娘の安心のためにも、あのまま黙っていたらダメだったと思います。権利を主張するのは悪いことじゃないと、今回あらためて実感しました。
でも、世の中にはこうも図々しい人がいるんですね」

<TEXT/八木正規>

【八木正規】
愛犬と暮らすアラサー派遣社員兼業ライターです。趣味は絵を描くことと、愛犬と行く温泉旅行。将来の夢はペットホテル経営
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