都内を中心にさまざまな現場で特殊清掃を手がけるブルークリーン株式会社で働きながら、特殊清掃の実態を伝える登録者5万3000人以上のYouTubeチャンネル「特殊清掃チャンネル」を運営している鈴木亮太さんに、予想以上に清掃が困難を極めた特殊清掃現場について詳しい話を聞いた。
体液が染み込んで100万円以上の費用に
1Kや1ルームしかない部屋でも高額査定になることがある。「水場での事故だったんですけど、キッチンで倒れていて、体液が染み込んでいました。体の大きい方だったこともあり、キッチンスペース全面に広がっていました。季節は真夏で腐敗が原型をとどめないほどに進んでおり……。
フローリングの下にベニヤ板で下地が組まれていて、その下に根太(ねだ)という棒が等間隔で網目状に張り巡らされ、一番下にコンクリートがあるという作りなのですが、体液の染み込みがコンクリートまで到達してしまってました。本来は一畳分くらいの作業量で終わるはずが、大解体しなくてはいけなかったのです」

「また、遺体が壁沿いで倒れていた現場で高額になったケースもあります。壁と床の間に幅木(はばき)という壁の保護と部屋の美観を目的とした木があるのですが、その下には解体してはいけない際根太(きわねだ)と呼ばれる基礎の木の棒があります。そこに体液が落ちて、かなり広範囲に広がってしまっていました。
一見すると、被害は少なそうだったのですが、蓋を開けてみると想像の5倍以上の広がりで。際根太は解体できないので、表面の体液を除去して洗浄して補修措置をして……と、作業工程がかなり増えてしまい、150万ほどかかってしまいました」
総額360万円に膨れ上がった特殊事例「200平米くらい広くて…」

「広い一軒家での孤独死だったんですけど、平均的な一軒家だと70平米から80平米。
消臭剤や除菌剤などの薬剤も通常よりも多く使うことになった。
「部屋が広ければ広いほど金額が大きくなるのは当たり前ですが、遺体の損傷具合もひどく、体液が床下の床暖房の配線や基盤にまで滲み出ているような状態でした。お客様の同意をいただいて床暖房を全て壊すことになり、作業の規模がとんでもなく大きくなりました。
孤独死現場だと、1ルームなどの狭い部屋が多かったので、ここまでの規模の掃除は初めてでした」
なぜ、そのような広い家に一人で住むことになったのだろうか。
「もともと夫婦とかお子さんたちと過ごしていたみたいなんですが、離婚することになり、その家は旦那さんのものだったので、そのまま住み続けたようです。もともと子ども部屋だったところは物置きみたいになっていて、自分が生活しているスペース以外は物で埋め尽くされており、床があまり見えない状態でした」
特殊清掃だけではなく、遺品整理でも他の現場と違った大変な部分があったという。
「社長としてビジネスをやられている方だったようで、仕事に関連する書類がたくさんあったんです。その会社自体も相続するのか潰すのか、まだ決まってない状態で、仕事に関する書類はまとめておいた方がいいということで、これは仕事系、これは娯楽系……と、全て確認した上で分別していったのでその辺も時間がかかった要素の一つです。
二世帯住宅で1階には兄弟が住んでいて、2階部分での孤独死という少し特殊な案件でした。
「念のためお願いします」5万円程度で済むケースも

「目視で体液がない現場は費用が安くなります。死後3日くらい経っているけど冷房が付いていて腐敗が進んでなかったとか。でもご遺族の方としては衛生的にちょっと不安が残るので、『念のためお願いします』といったケースですね。
臭いも限りなくゼロに近いことも多く、消臭効果がある除菌剤を全体に散布して、衛生環境を整えるだけの作業は安くなりやすいです。だいたい5万円から10万円くらいで済みます」
<取材・文/山崎尚哉>
【特殊清掃王すーさん】
(公社)日本ペストコントロール協会認証技能師。1992年、東京都大田区生まれ。地元の進学校を卒業後、様々な業種を経験し、孤独死・災害現場復旧のリーディングカンパニーである「ブルークリーン」の創業に参画。これまで官公庁から五つ星ホテルまで、さまざまな取引先から依頼を受け、現場作業を実施した経験を基に、YouTubeチャンネル「BLUE CLEAN【公式】」にて特殊清掃現場のリアルを配信中!趣味はプロレス観戦