―[振り返れば青学落研]―

YouTubeチャンネル登録者数190万人を突破した「バキ童チャンネル」。
唯一無二の企画とキャラクターを活かした動画が支持される一方で、中心メンバーのお笑いコンビ、春とヒコーキが出会った青山学院大学・落語研究会についてのエピソード動画も強い人気を集めている。


そんな「青学落研の話」を、チャンネル出演者であり、青学落研出身者であり、春とヒコーキの学生時代からの友人でもある芸人・町田が綴っていく連載。

第19回は、青学落研に強烈なインパクトを残した後輩について。

「ツービートが好きです」青学落研の新歓に現れた、寡黙で大柄な...の画像はこちら >>

つるつる亭つる太郎、こと「ホラ軍人」

バキ童チャンネル内においてホラ軍人という呼称でおなじみの男、つるつる亭つる太郎。

屈強な肉体、強靭な精神力、呆れるほどの愚直さ。ともに日々を過ごしたとしたら誰しもが彼を好きになるであろう。

私や土岡の一つ下の学年の後輩。身長は180後半とかなり背が高く、とてもガタイが良い。あと、とんでもなく声がデカい。

ホラ軍人の「ホラ」とは、私たちとつる太郎の出会いの日の出来事に起因する。

私たちは新歓においてつる太郎に好きなお笑い芸人を問うた。

つる太郎は

「ツービートが好きです」

と答えた。

私たちは一様に気圧されてしまった。ツービートといえばビートたけしの往年の伝説のコンビ。
もちろん名前を聞いたことはあるがそこまで詳しくは知らない。18歳でツービートを好きになるだと…?

寡黙で多くを語らない大柄なこの男、こいつはとんでもなくお笑いや芸能に精通した逸材なのではないか?

私たちはつる太郎に大きな脅威を感じた。しかし、蓋を開けてみればそんなことは全くなかった。

会話が通じないことも多々あれば、突然大声でキレ散らしたりも少なくはなかった。

落研の落語会に遅刻しておきながら、「飯くわねぇで来たんだから機嫌わりぃにきまってんだろっ!!!」などと叫ぶなどしていた。

しかし、それを良くないと感じ、変わろうと思える実直さがつる太郎の素晴らしい所。

自身の対人スキルを改善するために「友達の作り方」という本を常に持ち歩き、本に書いてあることを1ページずつ実践、最後のページに書かれていた「この本に書かれてることに囚われずに他人と向き合っていくのが本当のコミュニケーションです」という一文に激昂するなどしていた。

つる太郎は太っていることを気にして減量にも熱心に取り組んだ。

毎日10キロのマラソンと筋力トレーニング、食事は1日に素うどん1杯しか食べない。どうしてもお腹が空いた時は、ファミチキを口に含んで味わい、万が一飲み込んでしまった時は腹を自分で殴って吐き出す。

そんな過酷なダイエットの甲斐もあり、かなりの減量に成功したものの、貧血で大学のエレベーターでうずくまり普通に救急車で運ばれたりもしていた。

「あれホラですな」

出会ってから一年ほど経ったのち、センス系大型新人の登場かと我々を戦々恐々とさせた入部当初の姿はどこにもなく、感情が昂ると胸を銅鑼のように強く叩き、「オアァーーーッ」と大きく奇声を上げることをつる太郎は主にしていた。

こんな不器用な人間が果たして本当に18歳でツービート好きを公言するような演芸に対して造詣の深い男なんだろうか?と私たちは不意に思い出し、つる太郎に「そう言えばツービート好きなんだよね?」と聞いてみれば、

「あれホラですな」

つる太郎のかましであった。
その衝撃の大きさ故に、つる太郎はそこまで嘘つきということではないのだがホラ吹き呼ばわりされることとなった。

そんな愛すべき男、つる太郎を我々は大層贔屓にした。外食、遊び、どこへ行くにもつる太郎を伴った。当時、ぐんぴぃ、土岡、つる太郎は同じ街に住んでいたのでしょっちゅう互いの家を行き来もしていた。

ぐんぴぃは特につる太郎を珍重し、ほぼ全ての会話を擬音のみで行う「音会話」でつる太郎とのやり取りをしていた。

つる太郎は弁護士を目指すことに

そうこうして、卒業が迫ったつる太郎は前もってなのか思い立ってのことだったのかあまり定かではないのだが、卒業後の進路を弁護士にすることにしました、とつる太郎は話した。

つる太郎は司法試験に合格するためにとてつもない勉強をしていた。

寝る以外のほとんどの時間を勉強にあて、スマホの利用も1日に30分まで。それを守れなかった場合はコンビニの募金箱に一万円を入れる徹底ぶり。

そして、1日の睡眠時間を1時間に抑えることにつる太郎は成功した。

1分に1度アラームをかけることで、1時間で60回寝たことにする「インフィニティ・スリープ」という睡眠法を発明したのである。

つる太郎曰く、「1分間寝ると夢の中では30分の時間が経つ。
それを60回繰り返すということは、常人の何倍も睡眠を得られることになる」と。

血の滲むような努力を続けていたつる太郎であったが、なかなか法科大学院においての順位は奮わず、「君はこれからどんなに頑張っても弁護士にはなれない」と教授に宣告されてしまう。

つる太郎は泣く泣く弁護士の夢を諦め、自衛隊入りを決断する。そう、ホラ軍人の誕生である。ホラと軍人は全く別の要素。

つる太郎は自衛隊でも持ち前の声量とど根性を遺憾なく発揮した。

デカすぎるその声は、防衛大出身でもこの声量はありえないと称えられ、月に一度の面談において何も悩みを抱えていなかった人間がつる太郎しかいなかったという理由で、たった二年で38人小隊の副隊長に上り詰める。

今はホラ軍人は事情があって自衛隊から離れてしまっているのだが、今なお強い肉体と精神力と人生を常に切り拓き続けている。

―[振り返れば青学落研]―

【町田】
ぐんぴぃの友人。芸人としての活動もしている。@saisaisai4126
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