現在、フリーの役者として活動しているしじみさん。近年では演じるだけでなく、監督業にも邁進している。
以前に『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)や『家、ついて行ってイイですか?』(テレビ東京系)にも出演したことがあり、番組を通じて存在を知っている人もいるかもしれない。
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彼女には、セクシー女優として活躍していた過去がある。業界を引退した後は役者ではなかなか食べていけず、厳しい現実を目の当たりにした。さらに5年前に妊娠して授かり婚をするも、わずか1年で離婚。シングルマザーとなった。

そんな彼女に現在の生活について尋ねてみると……。

「楽しいですよ。貧乏だけど、すごく幸せです!」

そう断言する彼女に、フリーの役者としてのこれまでの歩み、1人で育てている我が子への想い、そしてこれからの展望について聞かせてもらった。

役者仕事は、脱ぎ要員ばかりだった

「当時は金銭感覚が狂っていました」元セクシー女優が語る引退後の生活。離婚してワンオペ子育て「詰んだと思ったけど…」
しじみ
——しじみさんは2004年にセクシー女優としてデビューしましたが、どのくらいの期間活動していたのですか?

「2008年に引退したので、4年くらいですね。NGナシのセクシー女優だったので、キャリアを重ねるうちに、だんだんとやることがなくなってきちゃって。そんな時期にたまたまVシネマの仕事が入ってきて、そこでの楽しさに目覚めてしまったんですよ」

——どのあたりが琴線に触れたのでしょうか。

「私はもともと、業界でセクシー女優が姫扱いされることに、むしろ疎外感を抱いていたんです。でも、映画の現場って、役者も仲間として平等に扱ってくれるじゃないですか。
完成した作品が映画館で上映されるって、みんなでポレポレ東中野まで観に行ったりするのも好きだった。ああ、私はこっちの世界がいいなって思うようになったんです」

——セクシー女優と並行して役者仕事を受けることは考えなかったのですか?

「当時のセクシー系の事務所はお金にならない仕事はNGって風潮があったので、ちょっと難しかったですね。とはいえ、役者『しじみ』としてフリーで活動を始めても、やっぱりなかなか食べてはいけなかったです」

——その辺の葛藤は『ザ・ノンフィクション』でも描かれていましたよね。

「仕事が来たとしても、脱ぎ要員ばっかりだったんです。本音を言えば、脱ぐ仕事はしたくない。でも、脱ぐのをやめたら仕事が来なくなって、また脱ぐ……。その繰り返しでした」

——金銭的な面での苦労はありましたか?

「正直、セクシー女優引退の直後は感覚が狂っていました。移動も絶対にタクシーを使ってたし、コンビニの水も一番値段が高いものしか買わないみたいな。服なんかも値段を見ずに選んじゃうような適当な暮らしをしていました。

当然のように貯金もなくなって、そこでようやく生活を変える努力を始めたんです。結果、今となっては、お金は無いなら無いでいいかなって感じ。傍から見れば貧乏なんでしょうけど、貧乏だっていう自覚はありません(笑)」

妊娠9ヶ月、ウエスト100㎝でも現場に出続けた

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しじみ
——しじみさんは、4歳の息子さんがいるお母さんでもあります。

「はい。
5年前に授かり婚をしたのですが、1年くらいで離婚。今はシングルマザーです。相手が働かない、育児しない、家事もしないという男性だったので、いらないなって。何もしない人が家にいるっていうのは、それだけで嫌だしストレスになるんですよね」

——妊娠中は役者の仕事はどうしていたのですか?

「お腹ぽっこりでも現場に出ていましたよ。妊娠9ヶ月のウエスト100cmで、戦隊モノの悪役を演じたりしてました」

——そんな臨月まで!? 大変だったんじゃないですか?

「脱ぎのある作品も、上半身だけ映してもらって切り抜けました。その作品は改めて今見ると、ちょっと絵的に無理やり感があるので、見返すたびに笑っちゃいますね。でも、あの時に私の中にあったのは、とにかく『現場に行きたい!』ってことだけ。とにかく、撮影の現場が大好きだったんです」

——執念ともとれる、役者魂と現場愛を感じます。

「実は3年くらい表舞台に出るのをやめて、OLをしていた時期があったんですよ。でも、やっぱり向いてなかった。仕事にするなら好きなことじゃないと私は無理なんだと痛感しました。

OL時代はいいことが何もなかった気がします。
映画を観ることすら『私は出られないのに……』と思うと苦痛になってしまって。好きなものまで消えてしまった感覚でした。その時に『夢は呪いだ!』って悟りましたね。私は役者をやめられない。だったら開き直って好きなことやるぞ!って腹を括れました」

セクシー女優時代の話を映画化したい

「当時は金銭感覚が狂っていました」元セクシー女優が語る引退後の生活。離婚してワンオペ子育て「詰んだと思ったけど…」
しじみ
——役者をしながらシングルマザーでの子育て。誰かほかの人の手を借りることはあるのでしょうか。

「ないです。完全にワンオペですね。両親はずっと島根に住んでいて。離婚してシングルマザーになった直後は『詰んだ』って思いましたよ」

——島根に帰るという選択肢はなかったのですか?

「実家には姉夫婦とその子どもも住んでいて。近所には私の以前の仕事がバレているので、両親も帰って来て欲しくはなさそうなんですよね。役者として地元で舞台をやってみたいと思っても、家族からの反発があってできずにいるんです」

——そうなると、撮影の仕事ができる時間ってかなり限られていますよね。

「そうなんです。
仲良しのスタッフさんがいる現場なら、子どもを連れて行けることもあるんですけどね。この前もホラー映画の撮影が17時入りだったので、子連れで行ったんですよ。隣の部屋で待機させてたんですが、4歳の男の子が静かにしていられるわけがない。

その時は監督が『このシーンは、子どもの声が聞こえるのも怖くていいんじゃない』って言ってくれましたけど、やっぱり基本的には子連れではスタッフさんにしわ寄せがいってしまうとは思っています」

——心苦しさはあるのですね。

「一時期は不眠になるほど行き詰っていました。でも、ちょうどその時にYouTubeドラマの脚本を書き始めたんですよね。これがもう楽しくて!映画の制作や監督とか、実は好きなのかもって気づきました」

——役者だけでなく、裏方としての活動も開始されたのですね。

「私が思いついたセリフを女優さんが喋ってくれるって、めちゃくちゃ面白いじゃないですか。私は演技をするのが好きなんだと思っていましたが、“そっちなのかな?”と思い始めています。映画づくりの勉強なんてしたことないのに、これまでの演技経験のお陰か、カット割りとか自然にできちゃうんですよ」

——過去の経験がそのまま活かせているわけですね。

「まだ結果を出せてはいないのですが、ゆくゆくは映画祭でグランプリをとることが目標なんです。いつか私がセクシー女優をしていた時代の話を映画化したいと考えているんですよ。
あの頃のこと、全部メモに残してあるんです。これを面白おかしく、『全裸監督』みたいな形で出せればな、と」

「貧乏だけど、すごく幸せです」

——プライベートでの目標はありますか? 新しい恋愛とか……。

「ぜんぜんできてないですよ!離婚した直後はすぐに再婚したいと思っていたけど、年々相手を選ぶ目が厳しくなってますね」

——どういう人が理想なのですか?

「できれば自分と同じバツイチで子持ちがいいです。でも、元奥さんに育てさせている男性はちょっとな……。たぶん、シングルファザーがベストなんですけど、そんな人がそもそも少ないから難しいですよね」

——確かにそれはハードルが高いかも。

「恋愛映画も撮ってみたいんですけど、あまりに恋愛してなさすぎて、脚本がまったく浮かばないです。作品づくりのモチベーションのためになら、してもいいかもしれない……」

——要は、そこまで恋愛に重きを置いていないのですね。

「そう。結局のところ、私は独りでも何とかなると思ってるんですよ。今は映像制作という生きがいもあって、子どもも可愛い。私、貧乏だけど、すごく幸せです(笑)!」

——ありがとうございました!

<取材・文・撮影/もちづき千代子>
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