ママタレのキングオブトップ
日本テレビ系『しゃべくり007』(25年8月18日放送)で、令和の新ママタレ女王として登場したのが藤本美貴だ。「好きなママタレント」では北川景子に次ぐ2位、2024年のテレビ出演本数は278本と今、テレビバラエティ業界で無くてはならない存在となっている。確かに僕が担当する番組のキャスティング会議でもママタレをアサインする際に、名前が挙がる2大巨頭が「藤本美貴」と「辻希美」だ。しかし人気者がゆえにスケジュールを押さえるのが難しいので、「野々村友紀子」「横澤夏子」「ギャル曽根」「小倉優子」「くわばたりえ」と誰かしらのママタレに落ち着いていくのがお決まりパターンだ。
元々は2002年にソロデビューし2003年からモーニング娘。の6期メンバーとして加入。2007年にはリーダーに就任するもすぐにのちの夫となる庄司智春とのスキャンダルが報じられリーダー就任からわずか26日で脱退することに。
2009年に結婚をして、2012年、2015年、2020年と3人の子どもを産み仕事はセーブしつつ芸能活動を続けていた。そんな藤本美貴がなぜ令和の新ママタレの王者になったのか?
TVerで爆ハネした『夫が寝たあとに』
テレビ朝日にあるバラバラ大作戦というおよそ20分の若手ディレクターを育てるための深夜枠。出演者はゴールデン帯には出られないが面白いと言われている若手芸人やこれからくるんじゃないか?とテレビマンが目をつけた芸能人を起用する。今はほぼ100%の割合でネットの配信が回るタレントがキャスティングされる中、当時白羽の矢が立ったのがYouTubeの人生相談、庄司さんとのデート動画がバズり始めていた藤本美貴だ。2023年10月から始まった『夫が寝たあとに』。この番組は、これまでありそうでなかった「芸能人×育児」をテーマにしたトーク番組として始まり、毎回、子育て中の芸能人がゲストに来て「朝は地獄だよね~」「お風呂は着替えさせるまでがお風呂!」などママたちの共感トークで成り立っている番組だ。
切り抜き動画が9億回再生の理由
この番組のスタッフに仲良しの作家さんがいるので制作の話を聞いたことがある。赤ちゃんが生まれたばかりのこの作家さんは、子育てのリアルな悩みやママが抱える育児の大変さを理解できる位置にいたから番組ができたと言っていた。そんな中で藤本美貴は芸能人でありながらある意味適当で脱力した育児法を正直に番組内でしゃべったことが初回から番組の軸となったそうだ。子育てに悩んでいる20~30代のママ視聴者に刺さり、初回放送からTVerのバラエティランキングでランクイン、切り抜いた動画も回りまくり、今では9億再生を超えているらしい。こんな深夜番組はバラバラ大作戦ができて以来初めてのことらしく、テレビ業界でも近年まれにみる深夜番組のヒットとなった。実はこの番組のヒットによって深夜番組はトークが回る事実ができ、今テレ朝の深夜番組はこぞってトーク番組が乱立するようになった。
おじさんテレビマンからオファー殺到!
テレビバラエティの世界はまだまだ男社会というか、もはやおじさん社会。制作のADさんはほぼ女性なのだが、演出、ディレクターとなると重労働のせいか、若い頃に激務経験したおじさんしか残っていない。家庭を顧みずテレビ制作に身も心も捧げてきたおじさんディレクター陣がテレビバラエティに欠かせない主婦にウケる感覚を持ち合わせていない。だからママタレントとしてわかりやすく結果を出した藤本美貴におじさんディレクターたちはオファーをしまくるのだ。横澤夏子との違いは元アイドルで30~40代おじさんがモー娘。ドンピシャ世代だということと、芸人である横澤夏子は笑いを取ることが当たり前だが、藤本美貴は元アイドルだからトークのハードルも低い。非常に使いやすく、「笑い」ではなく「共感トーク」なのでどんな企画にもハマる最強タレントといえるのだ。
【デーブ八坂】
1983年⽣まれ。⼤分県出⾝。2004年、ハガキ職⼈として「⽥村淳のオールナイトニッポン」のスタジオに呼ばれたことを機に、放送作家を志す。2005年、TBS特番「プライス4」、「クイズ$ミリオネア」のクイズ問題作成でキャリアをスタートさせる。これまでに携わった番組は500本を超え、現在も10本以上のレギュラー番組を担当。バラエティ番組を中⼼に活躍しながら、江⼾⽂化歴史検定や信⻑戦国歴史検定を持つなど、歴史にも造詣が深い。丁寧かつひたむきな⼈柄と仕事ぶりから、レギュラー番組と並⾏し、多くの特番に参加し続けている。Twitter:@yasaka19831192