こんにちは、恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラーの堺屋大地です。
筆者はLINE公式サービスにて計1万件以上のチャット恋愛相談を受けてきました。
2020年国勢調査によれば、日本人の「生涯未婚率」(50歳時の未婚割合)は年々上昇しており、女性は17.8%、男性に至っては28.3%にも及びます。そんななかで、恋愛がうまくいかないという方々にも筆者の知見が少しでも役に立てばなによりです。
自分を「やさしい男」と思っていませんか?
今回は自分のことを「やさしい男」と思っている人にこそ読んでいただきたいお話。相談者は結婚前提で1年前から交際していた彼氏に、突然別れを告げられて困惑している菜々子さん(仮名・女性31歳)。やさしかった彼氏・悠馬さん(仮名・男性・32歳)が豹変したことに悩んでいました。
「婚活パーティーで出会った悠馬君は、旅行代理店勤務でお休みが不定期なのに、カレンダー通りの休みしかない私にがんばって時間を合わせてくれるような、やさしい人でした。
私の希望を優先してくれて、私がデートで行きたいと言ったところに連れて行ってくれたり、私が気になっているって話したレストランを次のデートで予約してくれたりもして。
あとは私が同僚との人間関係で困っていたときも親身になって話を聞いてくれたし、転職するか迷っていたときもアドバイスをくれたし、何時間でも私の話に付き合ってくれてたんです」(菜々子さん)
話し合いを無視して「別れる」の一点張り
特にケンカやトラブルはなく、同棲しようという話も出ていたため、菜々子さんは「このまま悠馬君と結婚するんだろうなぁって思っていた」そうですが、ある日を境に彼が急変。「悠馬君からLINEでいきなり『ほかに好きな人ができた。別れよう』って一方的に告げられて。私は混乱しながらも、『とにかく会って話したい』、『会うのが無理なら電話でもいい』ってメッセージ送ったんですけど、そのお願いは既読スルーで無視。
いまは数日に1回、短文でLINEの返信が来るけど、基本的には向こうは『別れる』の一点張りで、話し合いにならないんです。あんなにやさしかった彼氏がどうしてこんな冷たくてひどい態度を取るようになってしまったんでしょうか?」(菜々子さん)
筆者は、菜々子さんにとって酷な話になることは承知のうえで、悠馬さんが豹変した理由についての分析をお伝えしていきました。
悠馬さんが菜々子さんにしてくれていた数々のやさしい言動は“事実”ではありますが、そのやさしい言動は“菜々子さんのため”ではなく、“悠馬さん自身のため”だったという可能性が非常に濃厚です。
彼女へのやさしい言動が男側の利己的なものだったということを、すぐには理解しがたいかもしれませんので、順をおって説明してきます。
“自分のため”に動く人もやさしくなる理由
真の意味でやさしい人の行動原理は、当然ですが“他者のため”です。恋人・友人・同僚など、自分以外の誰かを想った行動を“常に”できる人が、真にやさしい人間です。
しかし、行動原理が“自分のため”という人でも、他者に対してやさしい言動をすることも多々あるもの。それはズバリ、自分がその他者から好かれたいときや良く思われたいときです。
このことを恋愛関係にフィーチャーして、掘り下げていきます。
当たり前ですが、自分が好きな相手から好かれることは嬉しいものでしょう。
なぜ嬉しいかというと、好かれれば相手から求められるようになり、一緒にいる時間が多くなったり、一層仲良くなれたりするからです。好きな人とたくさん一緒にいて親密になることは本人にとって快感であり、すなわち大きなメリットがあると言えます。
要するに、好きな人にやさしくすることで、やさしくした側の欲望が満たされるのです。
好きな人を好きじゃなくなったら……?
やさしくされた側もやさしくした側も双方嬉しい気持ちになれるのならWin-Winじゃないか――と考えるのは早計。思い出してみてください。行動原理が“自分のため”という人がやさしくするのは、好きな人に好かれると自分が気持ちよくなれるというメリットがあるから、です。
では、好きな人を好きじゃなくなったら……?
厳密に言うとさまざまな状況や関係性によって異なってきますが、ざっくり説明すると、行動原理が“自分のため”という人にとって、好きじゃない人にやさしくするメリットはありません。やさしくする意味・価値がなくなってしまうのです。
やさしさの欠片もない冷酷男になる“構造”
ここまでの論法を悠馬さんと菜々子さんに落とし込んでいきましょう。悠馬さんの行動原理は“自分のため”なので、交際スタートして菜々子さんのことを大好きなうちは、彼女にやさしくすることが自分のメリットになったのでやさしくしていました。
しかし、まだ交際中にもかかわらず、悠馬さんには別の好きな女性ができます。すると悠馬さんがやさしくしてメリットを得られる対象はそちらの女性に移行するため、菜々子さんにやさしくしても自分が気持ちよくなることはありません。
これがやさしい言動をたくさんしてくれていた彼氏が、突然、やさしさの欠片もない冷たい態度を取るようになる“構造”なのです。
最終的には「別れる」という結末だとしても
念のため解説しておくと、真の意味でやさしい人の行動原理は“他者のため”なので、仮にもう恋愛感情がなくなってしまった恋人に対しても、最後まで誠意を尽くしてくれるはず。好きではなくなってしまって別れることになるとしても、恋人を無視するなんてことはしないし、恋人が納得するまで話し合ってくれるでしょう。
最終的にはどちらも「別れる」という結末を迎えるにしても、行動原理が“自分のため”という人は途端に非情になって冷たくなるのに対し、“他者のため”という人は誠実に向き合い続けてくれるという、結末までのプロセスが大きく異なるわけです。
菜々子さんはここまで説明すると、「いろいろとやさしくしてくれた悠馬君は、けっきょくは自分が大好きなだけで、自分の利益のためだけに動いている人だったってことですね」と腑に落ちた様子でした。
――菜々子さんが次の恋愛では、行動原理が“他者のため”という真の意味でやさしい男性と出会えるよう、応援しています。
<文/堺屋大地>
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【堺屋大地】
恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。