不登校の生徒が増える中、学びの多様化は自然。小中にも通信制が必要だ
通信制高校に通う生徒が増えている──そう聞いて「当たり前じゃないか」という感想しか浮かんでこない。全国の小中学生で、不登校の子どもが35万人もいるのだ。彼らの多くは「学びたくない」のではない。「学校に居場所を見つけられない」だけなのだ。そんな彼らが進学先として通信制高校を選ぶことは、ごく自然なことと言えるはずだ。この“通信制ブーム”を牽引しているのは、間違いなくN高だろう。学校法人「角川ドワンゴ学園」の運営する“インターネット上の高校”は、’16年4月の開校からぐんぐん評価を上げ、今やN高グループ(N高等学校・S高等学校・R高等学校)の生徒数は3万人超。日本一の生徒数を誇る高校となった。
じつは私自身も教員免許を取得するために通信制の大学に通っていた時期がある。
最も懸念される他者との関わりも
当時の通信制は、時間の融通が利くという利便性はあるものの、数日間のスクーリング(通学)期間を除けばやはり孤独を感じざるを得なかった。その点、インターネットを活用するN高は、「時間の融通が利く」と「仲間とともに学ぶ」をうまく組み合わせているところに強みがある。最近では、いわゆる高偏差値の高校を蹴ってN高に進学する子も少なくないという。通信制高校に通う生徒は今や全体の1割を占めるというが、これだけ不登校が増えれば、“学びの多様化”が進むのは当然の流れだろう。
日本はあまりに教育に予算を割かない国として知られている。そのせいで現場は疲弊しきっており、子どもたちの個性を受け止められる余裕をすっかり失っているのだ。
ならば、不本意ながら学習する場を失っている不登校の子どもたちのためにも、現在は新設が認められない小中学校にも通信制を設置することを検討すべきではないか。これまでは「発達段階に見合わない」といった理由から認められてこなかったが、そもそも不登校になってしまえば教師ともクラスメートとも接点が失われてしまう。最も懸念される他者との関わりも、インターネットを活用することである程度は担保できる。ITが普及する遥か以前に定められたルールで、現代に生きる子どもたちの学ぶ場が制限されてしまうのは、あまりに愚かだと言わざるを得ない。

【乙武洋匡】
1976年、東京都生まれ。