年齢を聞き「加護ちゃんより年下」と衝撃
――19歳差でご結婚。まずどうやってお付き合いに至ったのか気になります。鶴岡:僕はこんなに年の差があるって知らなかったんですよ。付き合うまで年齢を聞いていなかったんで。女性に年齢を聞くのもアレだし、今より服装が地味だったので、もっと年いってると思い込んでいたんです。
野崎:付き合ったとき、私は24歳だったのですが、32歳くらいだと思っていたみたいで。
鶴岡:年齢を聞いて「え! 加護ちゃんより年下なの!?」と衝撃を受けて。19歳差って、親子でもおかしくないなと……。僕が、母親が19歳の時に生まれた子だったので。それに彼女よりお義母さんの方が年が近いんですよ。
――鶴岡さんは作家活動をされていて、野崎さんは当時は港区OLだったそうで。知り合ったきっかけは?
鶴岡:2016年にトークライブに行ったときのことでした。アダルト系のイベントで、たまたま客席が近かった彼女に声をかけられて。
野崎:私は彼の活動をSNSで見ていて、作品の動向が気になっていたので「大変そうですね」と話しかけたんです。恋愛感情はなく、普通に挨拶として。
鶴岡:僕は「この手のイベントで近づいてくる女性ってのは、ものすごい面倒くさい人なんだろうな」って思ってました。「こじらしちゃってるんだろうな」って。そのあと、Xでたまに連絡をとるようになってそんな人じゃないってわかったんですが。
距離が縮まった「3回目の日」
――それからどうやって距離が縮まっていくんですか。野崎:私のXの投稿を見て、金銭トラブルになりそうなのを助言してくれたり、転職とか上京の相談に乗ってくれて。連絡がマメじゃないので、Xの投稿見てDMをくれるくらいの距離感がちょうどよかったです。
鶴岡:それから付き合うことになったのは、出会って半年後かな。会うのは3回目でした。
野崎:その日、宿を取ってなかったので、「付き合うなら家に泊まりなよ」という流れになり、彼の家に行きました。
鶴岡:付き合うまでデートらしいデートはしてなかったんですけどね。2回目のときにちょっと頼みごとがあってバスタ新宿で会って立ち話をしたとき、一緒にいて楽しい人だなとは思ったな。
野崎:私もこのときにわざわざ頼み事をするなんて特別な感情があるのかなって意識し始めました。
いきなり同棲はまずいと思ったが…

野崎:私は、年齢を知っていたので気にしていませんでした。それまで年の近い男性としか付き合ってこなかったんですが、本当は年上と付き合いたかったんです。だから拒否感とか不安より、むしろドキドキするみたいな。
鶴岡:ただ、いきなり同棲はまずいと思って、彼女には近所で一人暮らしをしてもらうことにしました。でも、その家にはほぼいなくて、実際はほぼ同棲状態だったよね。
野崎:そうなんです。1年後に家を引き払って、完全に同棲生活になり、2019年に結婚しました。
鶴岡:いまもその1DKの物件に二人で住んでいるんですが、そろそろ引っ越したいよね。
「昼間のフーターズ」でプロポーズ
――結婚願望はどれくらいあったんですか?鶴岡:僕はいい年だし、もう結婚はできない人生だと思っていました。だからか、妻と付き合っていたときは、ずっと緊張していた記憶があります。別に嫌なことではないのに、異常なストレスというか、プレッシャーがありました。
野崎:結婚願望は強くなかったです。結婚したいタイミングとか相手がいたらと思ってました。彼と付き合ったのは結婚前提でもなかったので、とりあえずと思って。
鶴岡:本格的に結婚しようとなったのは、なんだったっけな……。そうだ、君が港区の会社を辞めたがってたからだよね?
野崎:うん。会社辞めるなら税金とか考えると結婚したほうがいいんじゃないかって。
鶴岡:ドラマチックな雰囲気は一切なくて日常会話の延長だったから、プロポーズの場所がたまたま入った昼間のフーターズになっちゃった(笑)。
――鶴岡さんが45歳、野崎さんが26歳のときにご結婚。親御さんへの結婚の挨拶も、年の差があると余計緊張しそうです。
鶴岡:そうですね。まずお義母さんの方が妻より年が近いんですよ。
野崎:私の家は母子家庭なのですが、挨拶した時は母は58歳でした。
鶴岡:お義母さんに結婚を反対されなかったのでホッとしました。ただ、すごく覚えているのが「初婚ですよね?」って確認されたこと。「そうです」とは言ったんだけど、40代初婚ってそれはそれで危ない男では?とは思いましたね。
野崎:たぶん養育費とか払わないといけないんじゃないかとかを気にしてたんだと思います。
「若いコが好き」と言ってるうちは…

鶴岡:聞かれましたね。周りの人には「たまたま」「なるようにしかならない」とは言ってきました。謙遜とかではなく、本当にそうなんで。別に僕、若いからって女性に惹かれるタイプではないんですよ。若いコと付き合ったことなんて過去になかったし。
野崎:もし若いからって近づいてきてたら、引いていたと思う。そんなに興味がないテンションだったのがよかったのかもしれないです。
鶴岡:そうだよね。若いからって狙っていたら、こうはならなかった。若いコ好きの40~50代の男性って、若いコが好きすぎてテンションが変なじゃないですか? それで引かれるんじゃないかと……。それに「あの男は若い女が好き」って周囲にバレるしね。職場にベテランバイトの高齢の男性がいたんですが、仕事はとてもできるんですけど、女性のパートさんから評判がとにかく悪い。「35歳を過ぎたら素っ気なくなった。優しいのは若いときだけ」って嫌がられてます。
野崎:「若いコが好き」と言ってるうちは、若いコと付き合えないです。
鶴岡:でも、結婚後に妻がAV監督になったら、あまり年の差のことは聞かれなくなりました。AV監督の方がインパクトがあるみたいで(笑)。
恋愛的な盛り上がりより、安心感が決め手に
――それもそうですね(笑)。現在のお仕事は鶴岡さんが主に書店員で、野崎さんがAV監督。ちなみに野崎さんがAV監督になったきっかけは?鶴岡:彼女が会社を辞めたあと、僕が付き合いのあるAVメーカーが軽作業のアルバイトを募集していると聞いて紹介したんです。
野崎:でもいざ面接に行ったら軽作業のバイトは枠が埋まっていて。私がエロに興味があることを話したら「監督にならない?」と提案され、企画書を提出していきなり監督になりました。
鶴岡:びっくりしましたよ。結婚を決めた数か月後に妻がAV監督になって、慌ただしかったですね。
――結婚の決め手や、惹かれたところは何ですか。
野崎:性的な趣味の一致は大きいです。付き合った人はあまり多くないですが、その点でうまくいかないなぁと悩んでいたので。お互いの性癖を知っているから、2人で秋葉原のラムタラとかメロンブックスに行くと「あなたの好きな〇〇さんの新作あったよ」って言ったり。こういうことができる関係はあんまりないと思うんですよ。
鶴岡:そうそう。性への理解があってラクだった。音楽の趣味が合うカップルが、一緒に住んだら同じCDが2枚になったって話、あるじゃないですか。僕たちの場合、アダルトDVDがダブったのがいくつもあって(笑)。
野崎:私と趣味が合う人なんているわけないと思っていたのが、彼と出会って気がすごく楽になったんです。だから恋愛的な盛り上がりより、安心感が決め手の結婚かもしれないです。もう頑張らなくていいんだ、みたいな。
SNSを見て傷ついてしまうことも

鶴岡:「何歳差なんだろう」とかやっぱり気になります。ハライチの岩井さんの結婚は、うちより1個少ないだけだった。SNSの感想で「おじさんに若い女性が興味を持つわけがない」「変に夢を持たないで」とか見かけるたびに、僕はそんなつもりはなかったけどなんとなく傷付きますね。そこまでありえないことなのかなって。
野崎:女性側は「年上すぎる男を選ぶ女はヤバい」「なにか女性に欠陥がある」と言われたりして、ちょっと引っかかります。年の差があるから好きってわけじゃないのに。
――日常生活で年の差を感じることはありますか。
野崎:一緒にいると、やっぱり疲れやすいなって思っちゃいます。
鶴岡:そうなんだよね。あと年をとると、便意や尿意、空腹も予兆なく急に襲うようになるんで。突然「あ、トイレ行きたい」って。
野崎:二人で散歩に行くのが好きなんですけど「あそこにトイレあるかな」「座れる場所あるかな」とか、常に気にしています。年の差婚に憧れる人はいると思うんですが、若い人と行動をともにするのは実際大変だと思います。
鶴岡:あとは、傍から夫婦に見えないのもありますね。妻と妻と同世代の女性と3人でタクシーに乗ったら、運転手さんに「ご家族でお食事ですか? いいもんですね~家族って」と言われて。あぁ、二人娘のお父さんだと思われたなと。ちょっと悲しかった。
野崎:パパ活に思われるんじゃないかって気にしてた時もあったよね?
鶴岡:そうそう。でも実際にパパ活してる人を見たら、うちらとは全然違ってなんだかホッとした。
野崎:誕生日にうなぎを食べに行ったら、隣のテーブルが見るからにパパ活の男女だったんです。男性が話しかけても女子はずっとつまんなそうで。それを見たら、わたしたちはパパ活とは思われないだろうねって。
「喧嘩らしい喧嘩はない」なぜ円満なのか
――年の差夫婦円満の秘訣を教えてください。鶴岡:年の差があって共通項や感覚が違うから、だからこそちゃんと言葉にしないとわからないだろうって思いますね。普段から丁寧に会話をしようと意識してます。
野崎:「なんで知らないの?」ってびっくりして聞くことがないし。テレビを見ていて、お互い知らない芸能人を説明し合ったりしてます。
鶴岡:僕が知らないことは積極的に教えてもらいたいんです。年上だからって、僕がモノを教えるような態度のイタいおじさんにはなりたくないから。年上だとただでさえ権力勾配が起きやすいし、それで変に圧力をかけるのは違うと思うので。
野崎:お互い知らなくて当然と思えるんでしょうね。
鶴岡:だからか、喧嘩らしい喧嘩はないんだよね。「わかるでしょう」「なんで気づいてくれないの」という争いが起きない。それは喧嘩になる前に、何が嫌なのかちゃんと説明しようって思うから。
日常生活を一緒に過ごせるのが、楽しくて仕方がない

鶴岡:そういうのはないですね。結婚してしばらくしたら、変なドキドキがなくなったんですよ。きっと緊張が解けて安心したんだなって。最近は、安心の先の感情が出てきた。それが、とにかく楽しいということ。近所の定食屋に行って普通にご飯を食べたりとか、それだけで楽しくて。
野崎:「すごい楽しい、すごい楽しい」って言ってたよね(笑)。
鶴岡:知り合ってもうすぐ10年ですが、まだ一緒にいたいと思える感覚があるんだなって自分でも驚いています。中野のバーで毎週二人で店番をしているのですが、それも本当に楽しいんです。夫婦の大事な時間ですね。
――将来的に、年を重ねたときの不安はありますか。
野崎:多分順調に行けば先に死ぬのは……。
鶴岡:まぁ僕だよね。改めて言うけど、もし僕が死んで君に他にいい人がいるなら、ちゃんとくっついてくださいと。これはよく言ってるよね。
野崎:うん、よく聞いてます。その時はその時で、ぐらいに受け取ってますが。
鶴岡:彼女の最期まで添い遂げるのは難しいとわかっているから、僕が死んでも離れないでとは言えない。目標は、二人で老人になること。19歳差だから、お互いが60過ぎてからでも一緒にいられると思ってるんで。
野崎:そうだよね。私もあなたよりも早く死なないように、頑張りますね。
<取材・文/ツマミ具依>
【ツマミ具依】
企画や体験レポートを好むフリーライター。週1で歌舞伎町のバーに在籍。Twitter:@tsumami_gui_