元セクシー女優でフリーライターの「たかなし亜妖」が、自身の経験や周囲の業界人から聞いた話をもとにお届けする連載コラム。2016年に「ほかにやることがなかったから」という理由でセクシー女優デビュー。
女優生活2年半で引退を決意し、ライターへ転向。現在はメディア出演も積極的に行っている。

批判よりも“過度な擁護”が女優を苦しめる理由

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 セクシー女優のメディア進出が活発となり、公の場に現れる女優たちが増えた。日陰の商売が脚光を浴びるようになったが、もともと私たちは難しいポジションに立つ人間だ。

 トラブルが起きればSNSはすぐに炎上し、「セクシー女優だから」という理由により、さらなるガソリンを注がれてしまう。批判や文句なんて日常茶飯事だけれども、商売の内容が内容なので、多くの演者が誹謗中傷を承知のうえで露出を続ける。

 筆者の個人的な意見にはなるが、セクシー女優を批判する人たちよりも、気になるのは過度に擁護する人たち。「セクシー女優は素晴らしいお仕事!叩く意味がわかりませんぞ!」と鼻息荒く対抗する人が、私はどうも受け入れられない。

 実際に「叩くヤツより過度な擁護に走るヤツの方が怖い」とボヤく女優さえいる。度の過ぎた擁護はもはや味方ではなく、下手すると敵よりも厄介な存在になり得るのだ。

「セクシー女優は素晴らしい仕事」と主張する人の心理

 SNSが炎上する度に「セクシー女優や夜職は素晴らしい仕事なのだから、叩くのは違う」と、“お気持ち表明”を始める男性をネット上で数多く見かける。

 この手の発言をする人のごく一部は、我々の仕事を本気で素晴らしいと思っており、何らかの形で日陰の商売をしている女性の世話になっている確率が高い。「世話になってるから文句をつけられない」だったり、「本当に救われた経験があるからリスペクト」なので、上記のような意見を持つ。

擁護発言の多くは“自分に酔う男性”によるもの

 ただ、本気で“素晴らしい”といった感情を持つ男性などごく僅か。擁護する多くが、弱い立場の女性を守る自分に酔っていたり、「自分よりも下の人間だから、優しくしないと」と、無意識に見下しているから過度な擁護に走るのだ。


 しかし、SNSで“お気持ち表明”をしてもあまり意味はなく、最悪の場合はこれが火に油を注ぐ原因にもなる。彼らはわざわざ声に出さなくていいようなことを大々的に宣言するからこそ、当事者にとって“厄介な存在”として見られてしまうのだ。

本当のファンは過度な擁護をしない

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元セクシー女優で現在はフリーライターの「たかなし亜妖」
 面白いことに過度な擁護をする人こそ、炎上した女優の熱心なファンではなかったりする。「ビデオや夜のお店で時々世話になるレベル」か、あるいは「お金がなくて直接応援できないけど、ネットに張りつく人」の方が、話を大きくしたがる傾向が強い。

 実は本当のファンは、あまり過度な擁護をしない。職業に対する偏見がないor薄いと、声を大にして主張する人々のような考えがまず浮かばないようだ。「へー、そんなことを言う人たちがいるのか」といった感じで、良くも悪くも推しの職業が何だろうと、こだわらないのである。

 また「セクシー女優を推してる自分も、世間から色々言われるのだろうなぁ」と、女優と“同志”のような気持ちを抱えるファンもいる。たしかに相当仲が良い友人でもない限り、セクシー女優のリリースイベントやオフ会に通う話はしづらい。だからこそ炎上騒ぎの際には参加せず、偏見の目があることを理解したうえで応援を続けると言えようか。

静かに支えるのが“真のファン”

 もちろんファンの中にも女優をほんのり見下す男性もいるし、ガチオタク全員が良いヤツではない。でも、愛あるエールを送る人は擁護の言葉よりも温かいものを心の中に秘めている。真のファンは「あなたの味方ですよ」なんてムーブをわざとらしくかますことなく、演者に迷惑をかけないように支えるものなのだ。


 高収入でリスクの高い仕事だからこそ「素晴らしい仕事ではない現実」は、演者が一番わかっている。やたら持ち上げられると、不信感が芽生えるのは紛れもない事実。

 私個人としては、SNSの炎上したことにより、「セクシー女優のくせに」VS「セクシー女優は素晴らしい仕事」というバトルを見るたびに複雑な気持ちを抱く。誹謗中傷する人々がもっともいけないことは言うまでもないが、過度な“擁護勢”は、場合によっては叩く人たちと同じくらい厄介な存在になり得るということを知ってほしい。

文/たかなし亜妖

―[元セクシー女優のよもやま話]―

【たかなし亜妖】
元セクシー女優のフリーライター。2016年に女優デビュー後、2018年半ばに引退。ソーシャルゲームのシナリオライターを経て、フリーランスへと独立。WEBコラムから作品レビュー、同人作品やセクシービデオの脚本などあらゆる方面で活躍中。
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