アイドルがテレビで告白した「複雑な生い立ち」
8月30・31日に放送された『24時間テレビ』(日本テレビ系)。そのチャリティーマラソンのランナーを務め7億円もの寄付を集め賞賛されたSUPER EIGHT・横山裕。しかし、選ばれた当初は「なぜ今、横山裕?」と思った視聴者も多かっただろう、業界にいる僕ですらそう思ったからだ。でも、そんなことは横山裕さんの壮絶な過去を事前番組で観てすぐに納得した。
両親は3歳の時に離婚。横山裕さんが5歳の時、母親が再婚して6歳、8歳と年の離れた兄弟3人で暮らしていた。しかし母親ががんになり、闘病中に再び離婚、家計が苦しくなり弟2人はやむなく児童養護施設に預けられることになった。横山は家計を支えるため中学卒業後に建設会社に就職しながらアイドル活動で弟たちの生活費や学費を支援、しかしその間に母親は他界してしまうと壮絶な生い立ちを告白したのだ。
「テレビでOKを出した」ことへの驚き
この衝撃的すぎる内容は、24時間テレビを担当していない日本テレビの社員たちもみな驚いていたほど業界内で話題になった。今年の24時間テレビの総合演出を務めたのは『上田と女が吠える夜』、『上田と女がDEEPに吠える夜』(演出)、『世界の果てまでイッテQ!』(ディレクター)を担当する前川瞳美さん、一緒にお仕事をした経験はないが若くして日本テレビのゴールデンレギュラー番組の演出を務める優秀なディレクターだそうだ。この表現が少しでもズレたら炎上しかねない複雑な生い立ちを構成が練られたVTRでうまく視聴者に届けたことがそれを証明している。
それにしても前例がない、売れているアイドルによる複雑な家庭環境の告白。前川さんの説得もあったのかもしれないが、これをテレビで出すOKを出したSTARTO ENTERTAINMENTの覚悟を感じた。
あの事件以来、すべてが変わった事務所
今から2年前、2023年10月2日に廃業をした(株)ジャニーズ事務所。当時、バラエティの制作現場では所属タレントの扱いをどうするかよく会議で上がっていた。実際にテレビ局によっては「あの事務所のタレントはまだ出せない」と言われることもあったぐらいだ。だが、その後Snow Manが確固たる地位を築きSixTONESの勢いが増し、Travis Japanの新スターも誕生。廃業から1年が過ぎた2024年には所属アイドルたちがテレビを席巻するようになった。これまでの旧事務所の時は、他事務所のイケメンとは共演NGなど“暗黙の禁止事項”が存在した。
旧ジャニーズ事務所の元社長・藤島ジュリー景子があの会見後に答えたインタビュー本『The Last Interview 藤島ジュリー景子との47時間』(早見和真著)でも、旧事務所について、創業者である母メリーがすべての実権を握る会社であったことを明らかにしており、ネット動画やSNSなどは禁止されるほど旧体制的な事務所だった。
それがSTARTO ENTERTAINMENTになってからは一切なくなったのを現場で仕事をしていて感じる。むしろバラエティに協力的で、過激なドッキリやおバカがわかるクイズ番組、自分の身を削るようなトーク番組にも積極的に出演するようなった。旧体制から脱却する覚悟が2年経ち所属タレントたちの仕事ぶりに反映され、結果が出始めている。
<文/デーブ八坂>
【デーブ八坂】
1983年⽣まれ。⼤分県出⾝。